第157話 聖女ルナリア

【お知らせ】


第6回カクヨムコン特別賞&ComicWalker漫画賞受賞

「絶対無敵の解錠士」


《レーベル》スニーカー文庫

《イラスト》UGUME先生

《発売日》11月


 書籍版でしか読めないオリジナルエピソードもあります!


 現在予約受付中!

 よろしくお願いいたします。


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「あの方は大陸の果てにある聖都市にいらっしゃる」

「聖都市……」


 大陸の果て。

 名前だけは聞いたことがある――が、具体的にそこがどこであるのかは知らない。

 そういえば、と俺が思い出したのが、かつて所属していたパーティーのリーダーであるレックスの顔だった。彼はよく「最終目的地は聖都市だな」と口にしていた。なぜそこを目指していたのかは不明だけど、冒険者たちの中にはそこを目指して旅をするものも多いと聞く。

 

「もしかして……聖女ルナリア様がいるから、冒険者たちは聖都市を目指すのか……?」

「そうかもしれないね。あそこはまさに理想郷――世界中の町が、聖都市のようならいいと僕もバッシュもよく話しているよ」


 ますます気になってきたな。

 その気持ちは、一緒に話を聞いていたイルナも同じようだった。


「……ねぇ、フォルト」


 何かを訴えるように、こちらを見つめながら俺の名前を呼ぶイルナ。

 それに対し、俺は目を合わせて静かに頷く。


「聖都市……俺たちの目的地が決まったな」

「! そうね! 聖都市を目指しましょう!」


 パッと花が咲いたように、イルナは満面の笑顔を見せた。

 もちろん、道中でさまざまなダンジョンに潜り、経験値を貯めつつ聖都市を目指す。

 冒険者としても解錠士アンロッカーとしても、大きく、何より強く成長して聖女ルナリア様に会う。

 俺たちも、彼女の目指す世界の実現に協力をしたいと思ったからこその決断だった。


「これはまた……若くて頼りになる仲間が増えましたね」


 俺とイルナの決意を目の当たりにしたマルクスさんは満足げに頷いていた。


 

 ――さて、旅の目的を新たに定めたところで、もうひとつ気になった点をマルクスさんにぶつけてみよう。


「あの、マルクスさん」

「今度は何かな?」

「このダンジョンについて教えてもらいたいんです」

「あっ! それ私も気になってた! このダンジョンって、他の場所と違って、目に見えて分かる特徴がないから、ずっと不思議だったのよね!」

「ふむ」


 マルクスさんは腕を組み、何やら考えている。


「このダンジョンについては……口で説明するよりも直接見てもらった方が早いでしょうね」

「えっ?」


 直接見るって……じゃあ、やっぱり、砂漠のダンジョンや塔のダンジョンのように、分かりやすい特徴があるってことなのか?


「外にいる他の子たちも連れて案内しますよ」


 ゆっくりと腰を上げたマルクスさんは、これまたゆっくりとした足取りで外へと出ていった。


「一体、どんな秘密なのかしらね」

「さあ……とりあえず、行ってみたら分かるはずだ」


 このダンジョンの秘密を知るため、俺とイルナもマルクスさんの後を追った。




 マルクスさんの家(という名の岩陰)を出て歩くことおよそ五分。

 細い一本道を歩いた先に出現した開けた空間。

 ダンジョンの天井に穴が開いたそこに広がる光景を視界に捉えた俺たちは、思わず声を失った。


「な、なんだ、これは……」


 そこにあったのは――おびただしい数の宝箱だった。

 軽く見積もっても千以上はあるだろうか。

 まさに宝の山って感じだ。


「これだけの数が集まると、迫力があるわね……」

「凄い」

「このような場所があったとは……」

「お、驚きですぅ……」


 ミルフィ、トーネ、ジェシカ、マシロの四人も、規格外の空間を前に口が半開きとなっていた。

 

 しかし、これだけの宝箱を前にしても、誰ひとりとして喜ぶ者はいない――それはそうだろう。だって、


「でも、この宝箱……全部開けられている?」


 宝箱は宝箱でも、中身のない空っぽのものばかりが捨てられていたのだ。

 一体、このダンジョンはどうなっているんだ?

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