第151話 新しい可能性?

 イルナと合流し、詳しい経緯を聞くと、大体は俺の見立てと一緒だった。


 あの日――アメリーの父親に関する情報を何ひとつとして入手できなかったイルナは、その悔しさを晴らすように、愛用している聖女の拳でダンジョンの壁を殴った。

 すると、俺と同じように、無数の光る触手に自由を奪われ、この場所へと強制転移させられたという。


「あれもまた、転移魔法の一種だったんだな」

「それにしたって……趣味が悪いわね」


 眉根を寄せながらそう語るイルナは明らかに不機嫌だった。

 たぶん……以前、新たな拠点候補としていた廃宿屋の地下で、違法栽培された聖樹にやられた時のことを思い出しているんじゃないかな。なんとなく、あの光る触手と似た感じだったし。


「…………」

「フォルト……何か、変なことを思い出してない?」

「!? な、何も思い出していないよ!」


 嘘だ。

 俺はバッチリ思い出していた。

 聖樹の根で服が溶かされたイルナの姿を。


 ……猛省しなくては。


「と、ところで、出口は分かるのか?」

「それがまったく見当もつかないのよ。一応、携帯用の非常食があったから、昨日一日は過ごせたけど……」


 そこで、俺は今置かれている状況がかなり危ういものであると認識する。

 脱出口が見つからない。

 たったそれだけだが、これ以上に絶望的な状況もなかなかないだろう。

 ダンジョンからの脱出アイテムである竜の瞳を使おうにも、このダンジョンのスタート地点を登録してなければいけない。


 あてもなくさまよい続けてもたどり着けるのか……いや、それより、他の仲間がここへ来たとしたら――


「……まだそっちの方がいいかな」


 それだけ脱出へのアイディアが浮かぶかもしれないし。

 そう思っていると、


「フォルト! イルナ!」


 遠くから、俺たちの名を呼ぶ声――あれは、ミルフィの声だ。


「ミルフィ! こっちだ!」

「っ! フォルト!」


 俺の呼びかけに答えたミルフィ。

 どうやら、思ったほど離れてはいないようだ。

 しかし、正確にどこにいるのかまでは把握できない。このダンジョンは割と入り組んでいるからなぁ……イルナとは偶然合流できたけど、ミルフィたちともうまく出会えるかどうか――


「……あれ?」


 ミルフィたちの声が、着実にこちらへ近づいてきている。

 まるで、こちらの位置を正確に把握しているような感じさえあった。


「ど、どういうことかしら」

「さ、さあ……でも、近づいてきているなら出会える可能性があるぞ!」


 俺はイルナとともに走りだす。

 それに合わせて、あっちも方向を変えた。

 なんだ……こちらの行動を完全に把握しているような動きだぞ。

 そのうち、


「あっ! いた!」


 イルナがミルフィを発見。

 ミルフィも俺たちを視界に捉え、元気よく手を振る。その後ろにはジェシカ、マシロ、トーネの姿もあった。結局、みんなこちら側に来たってわけか。まあ、その方が頼もしいのだけど。


 こうして、パーティーメンバーは全員集結したわけが――俺はさっきのミルフィたちの動きが気になって尋ねてみた。


「よく俺たちの居場所が分かったな」

「それは――マシロのおかげよ」


 そう言って、ミルフィはマシロへと視線を向ける。


「マシロが?」

「は、はい! 頑張りました!」


 胸を張るマシロだが……もしかして、得意の歌唱魔法か?

 だとしたら――このダンジョンから脱出できるヒントになるかもしれないぞ。

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