第150話 イルナを捜せ!
イルナとアメリーの父親の共通点から導きだした、隠されたダンジョンへの入り方。
どうやらそれは正解だったようで、俺は光る触手に引っ張り込まれてべつの空間へとたどりついていた。
「ここは……」
周囲を見回してみると、そこはどう見てもダンジョンの中。
そういえば、霧のダンジョンの時にも同じようなことがあったな。
「あの時も大変だったなぁ……」
おかげで新しい力には目覚めたが――って、懐かしさに浸っている場合じゃない。
恐らく、イルナはナックル・ダスターであのダンジョンの壁を殴ったのだろう。……いや、ただ普通に触れただけで反応するという線もあるが、イルナのことだからアメリーの父親を見つけられない悔しさからそういう行動に出てもおかしくはない。
ともかく、この手段でイルナもここへたどり着いたはずだ。
……実は出てくる場所がランダムで全然違う場所にいるという可能性もないわけじゃないが、今はそんなことを考えるよりもその行方を追う方が先決。もしかしたら、アメリーの父親もここに来ているかもしれないしな。
とにかく今は立ち止まっているよりも歩き回る方が正しいはず。
そう思って、俺は発光石を埋め込んである携帯用ランプを片手に、周囲を警戒しつつ歩きだす。
しばらく歩いているうちに、俺の中でこのダンジョンの印象が固まりつつあった。
その印象とは――「面白みのないダンジョン」である。
こう言ってはなんだが……とにかく地味だ。
これまで、草原だったり、砂漠だったり、大きな塔だったり、森だったり、雪と氷に覆われていたりと、バラエティに富んだダンジョンを数々見てきた俺からすると、ここは特に目立ったポイントが見受けられない、ごく一般的なダンジョンだった。
最初に潜り、三種の神器を手に入れた地底湖のダンジョンも、基本的にはこんな感じだったな。霧の旅団のような実力者揃いのパーティーならいざ知らず、一般の冒険者が地底湖までたどり着ける者がほんのひと握りくらいしかいないだろう。なので、実質、何もないダンジョンと変わらないのだ。
もしかしたら、このなんの変哲もないダンジョンだって、探し回っていればとんでもないお宝と巡り合えるかもしれない。
イルナの心配をしつつ、そんなことを考えながら歩いていると、
「おっ?」
ダンジョンの奥から人の気配がする。
もしや……イルナか!
俺はたまらず駆けだし、その気配に迫った。
すると、そこには捜し求めていた人物の姿が。
「イルナ!」
「!? フォ、フォルト!?」
見たところ大きな怪我もなく、元気そうなイルナの姿に安堵する俺。すぐに駆け寄ったのだが、それよりも速く、そして力強いイルナのタックルが見事に決まる。
「ぐふっ!?」
あまりの勢いに思わず悶絶――だが、
「絶対に……絶対に助けに来てくれるって信じてた……」
言葉の端々に嬉しさが込められた喜びの感情。
どうやら、よほど心細かったらしいな。
「もう安心だぞ、イルナ」
「うん……」
俺はイルナが落ち着くまで、しばらくその細い体を抱きしめていた。
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