第136話 VSウィローズ(?)
「くそっ……なんてタイミングで……」
「あら? あなたたちは……」
正規ルートを通ってこず、まさかの「壁をぶっ壊す」という破天荒すぎるルートを通ってきたということもあって、俺たちは身を隠す暇さえなかった。お嬢様っぽい口調のくせに、やっていることは本家の冒険者より荒っぽいぞ。
「くっ!」
俺は龍声剣に手をかけ、いつでも破邪の盾を発動させ、仲間を守る体勢を整える。
彼女は
――もしかしたら、俺の龍声剣でも太刀打ちできないかもしれない。
そんな嫌な予感が脳裏をよぎった。
「驚きましたわね。この場所は地元の冒険者でも滅多に立ち入ることができないこの場所にたった一日でたどり着くなんて……見かけによらず、なかなかの腕前をお持ちのようですわね」
こちらの緊張感をあざ笑っているのか、まるで戦う素振りを見せず、むしろこちらの健闘を讃えているようにも聞こえる。
……なんか、調子が狂うな。
こちらの気が抜けかける直前だった。
「あっ! ウィローズ様! あいつらスノー・フェアリーを持っていますよ!」
仲間のひとりが、ゴルディンさんの持っているスノー・フェアリーに気づいた。
まずい。
緩みかけていた緊張の糸が、再びピンと強く張り詰める。
スノー・フェアリーは向こうも欲しがっていたはず……それを、格下と思っている俺たちが持っているとなったら――次に連中が行う手段は間違いなく「強奪」だ。
――ところが、
「あら……どうやら、あなたたちに先を越されてしまったようね」
それだけ言うと、ウィローズは俺たちに背を向けた。
襲ってこないのかと再び気が抜ける俺たち。だが、意外だったのは向こう側も同じようで、なんだかざわついている。
「い、いいんですか、ウィローズ様!?」
「何がですの?」
「だ、だって、スノー・フェアリーは目の前に――」
「あなたの目は節穴でして? あれは彼らが先に見つけた物ですわ」
「ですが!」
「お黙りなさい。他者の物を奪う……そのような姑息で薄汚いマネを、リナルディ家の令嬢であるこのわたくしがするとでも?」
「うぅ……」
ウィローズに一括されたパーティーメンバーの女性はシュンとして頭を垂れた。
……ていうか、リナルディ家?
あの子って、貴族なのか?
それに確か……リナルディ家って、どこかで聞いたことがあるような気がするぞ。
そんなことを考えているうちと、
「わんわん!」
突然、テリーが吠え始めた。
まさか、この空間には他にもスノー・フェアリーが?
しかし、よく見るとテリーは地面を見て吠えているわけではない。その視線の先にあったのは――氷漬けの骨ドラゴンだった。
「なんだ……?」
異変があったのかとその骨ドラゴンへ視線を送ると――わずかだが首が動いた。
こいつ……生きているのか!?
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