第137話 共闘

「気をつけろ! あのドラゴン――生きてるぞ!」


 俺は力いっぱいに叫んだ。

 直後、氷漬けの骨ドラゴンの顔が大きく動き、氷を突き破って外へと出た。骨ということでドラゴンらしい咆哮はないが、その巨体や強靭な顎、さらにそこにつく鋭い牙などは普通のドラゴンとなんら変わりはない。


「こいつがこのダンジョンの主か……」


 もし倒すことができたなら――とんでもない宝箱をドロップしそうだ。


「ボーン・ドラゴン……こんなのがいるなんて初耳ですわ!」


 これにはさすがのウィローズも驚いているようだ。

 その時、


「あっ!」


 そのボーン・ドラゴンとやらの足元には、トーネがいた。突然の事態にまだ頭がついていっていない様子で、このままでは踏みつぶされてしまうかもしれない。


「トーネ!」


 一番距離が近かった俺は、救出するため駆けだすと同時に大声で名を呼び、トーネの意識を取り戻させる。

 だが、ちょうどその時、ボーン・ドラゴンの足が大きく上げられた。


「まずい!」


 俺は龍声剣に魔力を込める。

 属性は風。

 突風を巻き起こして、足を上げたボーン・ドラゴンのバランスを崩す作戦を実行する。


「みんな気をつけろ! ボーン・ドラゴンが倒れるぞ!」


 周りに注意喚起してから、俺は風魔法を発動。ボーン・ドラゴンの足元へ向かって放った。

 

「!?」


 突風にあおられたボーン・ドラゴンの体は大きくバランスを崩し、その巨体を雪原に横たえようと倒れる――と、その先にはウィローズの姿が。


「! 危ない!」


 思わず、叫んでしまった。

 だが、当のウィローズは動く気配を見せない。

 このままでは押し潰されるぞ。


 ――だが、次の瞬間、


 ヒュン。


 風を切るような音がしたかと思ったら、ボーン・ドラゴンの右足が吹っ飛んだ。あれだけの巨体を相手に一瞬で……ダンジョンの壁をぶっ壊したのも、彼女の持つ目には見えない力のおかげか。

 その力の正体は――恐らくアイテム。

 一体どんなアイテムなんだ……非常に気になる。


 けど、それよりもまずはあのボーン・ドラゴンとやらをなんとかしなければ。

 俺は再び龍声剣へ魔力を込める。


「!? あれは龍声剣!?」


 ウィローズは俺の武器に気づいたようだ。

 こちらは向こうの武器を見ていないというのに……でも、どうしてかな。彼女とは戦う展開になる気がしない。そのせいか、手の内を披露するようなマネになっても、一切の抵抗がなかった。


「うおおおっ!」


 俺はボーン・ドラゴンが迷わず天に召されるよう、渾身の炎魔法を放つ。

 全身を炎の渦に巻かれたボーン・ドラゴンは、バラバラに解体されてその姿を大きな銀色の宝箱へと変えた。


「やったわ!」

「さすがはフォルトね」

「フォルトさーん! トーネさんは無事ですよ!」

「テリーも元気ですよー」

「ワシも元気じゃ!」


 イルナとミルフィは勝利を喜び、ジェシカとマシロがトーネとテリーの無事を伝えてくれた。あと、ゴルディンさんも。


 さて、とりあえずの脅威は去ったが……


「素晴らしいですわね」

 

 目の前にいるウィローズ・リナルディ――ある意味、ボーン・ドラゴンより厄介な存在が、俺の方へと歩み寄ってくる。

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