第135話 苦労の末に……

 王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーのウィローズたちよりも先にスノー・フェアリーを手に入れるため、俺たちは氷雪のダンジョンの奥へと進み――とうとう最奥部にまで到達する。


「どうやら、ここがこのダンジョンの終着点らしいわね」

「ここまで来たのは初めて」

「あぁ……」

 

 イルナ、トーネのふたりとともに、小高くなっている場所から周囲を見回してみる。

 そこは天井の高い空間で、何よりも目を引いたのは、


「アレのインパクトは凄まじいですねぇ……」

「ホントね……」

「驚きです……」


 ジェシカ、ミルフィ、マシロの三人の視線を釘付けにしているのが――氷漬けにされたドラゴンの骨だった。


「ゴルディンさんは知っていたんですか? ここにドラゴンがいるって」

「いや……ワシも初めて見る……」


 結構入り組んだ道だったし、テリーの存在がなかったら迂闊に踏み込めない場所ではあるからな。

 俺たちがその圧巻の光景に気圧されていると、


「わん! わん!」


 テリーが吠えている。

 その場所は例の氷漬けドラゴンのすぐ近くだった。


「ゴルディンさん!」

「うむ! 今度は発見次第すぐにケースへおさめるぞ!」


 俺とゴルディンさんはダッシュでテリーのもとへと向かう。急がないと、花が枯れてしまうという危険性もあるが、それと同じくらい、ウィローズたちと鉢合わせになることを避けたかった。


 だから、ここは即採取&即撤退。

 これをテーマに行動を開始した。


「わふわふわふわふわふわふわふわふ!」


 一生懸命雪をかいていくテリーのもとへたどり着くと、すでに花弁が見えていた。


「いいぞ、テリー! あとは俺たちに任せろ!」

「わん♪」

 

 お手柄のテリーの頭を撫でながら、ゴルディンさんから受け取ったガラスのケースにスノー・フェアリーを慎重に入れた。


「やった!」

「おぉ……これで元の姿に戻れるぞ!」


 ハイタッチを交わす俺とゴルディンさん。

 遅れて合流したミルフィたちも、ようやくゲットできたスノー・フェアリーを見て喜び合った。

特に、父と一緒に長らくこの花を探し求めていたトーネは大喜びをするというより、これまでの苦労を思い出しながら感慨深げに眺めていた。とはいえ、その口元はしっかりと緩んでいる。


「よし。回収も済んだし、早いところこの場から撤退しよう」

「そうですね。あの王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーがいるパーティーがここにたどり着くかもしれませんし……私、みんなに行ってきますね」

「ああ。頼むよ、ジェシカ」


 ジェシカに全員を集めるよう頼み、脱出ルートを確認。

 ここから別ルートへ進む道は全部で東、西、南方向に全部で三つある。

 俺たちはダンジョンの東側にある入口からここへ来たわけだが……さっきウィローズたちが進んだルートから逆算して――西側から来るはず。


 なら、来た道をそのまま帰ればいい。

 そう思っていた直後、


 ドォン!


 轟音とともに、ダンジョンの壁の一部が激しく吹っ飛んだ。


「な、なんだ!? モンスターか!?」


 ただちに戦闘態勢へと移行する俺たち。

 だが、現れたのはモンスターよりもずっと厄介な連中だった。


「ルート探索なんてまどろっこしいことなんてせず、こうして新しく道を作ればいいのですわ」


 高笑いとともに最奥部へと足を踏み入れたのは――王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーのウィローズだった。

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