第134話 ウィローズの力

 王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーのひとり、ウィローズが束ねるパーティー・テンペストのメンバーと鉢合わせ寸前まで距離が縮んだが、近場にあった大岩の陰に隠れることでなんとか回避に成功した。


 彼女たちも探索に難儀していることだろう――と、思いきや、


「ウィローズ様! ありました!」


 パーティーのひとりであろう女性が、雪に埋もれたスノー・フェアリーを探しだしてウィローズのもとへと持っていく。


「でかしましたわ!」

「はい! ――ああっ! 枯れてしまいました!」

「なんですって!?」


 枯れてはしまったものの、彼女たちはいともあっさりとスノー・フェアリーを見つけだした。雪の下に埋もれていることも分かっていたようだ。


「!? ど、どうして見つけられたのでしょうか……?」


 ジェシカが聞こえないほどのボリュームで驚きの声をあげる。

 このダンジョンにあることを知っている者は多いが、スノー・フェアリーを追い続けて情報を集めていたゴルディンさんさえ知らなかった「雪の下に埋もれている」という条件も、ウィローズたちはなぜか知っていた。

 ここまで詳しい情報を手にしつつ、俺たちのように使い魔を従えていないところを見ると、残された可能性としては――


「どうやら、ダイムリミット間近だったようですわね。まあ、いいですわ。このアイテムがある限り、スノー・フェアリーを探すのは簡単ですもの」


 やはり、アイテムの恩恵か。


「あの嫌味な女が持っている虫眼鏡で探し当てたってこと?」


 イルナの言葉でハッとなった俺は、ウィローズの手元へと視線を送る。すると、確かに小さな虫眼鏡を手にしていた。


「ジェシカ、あのアイテムは?」

「ちょっと待ってください。――あっ! 前回の更新で新しく追加されたアイテムのようです」

「新しく追加されたアイテム?」


 日々ダンジョンで宝箱から出るアイテムを探していると、稀にこれまで誰も入手したことのないアイテムがドロップしたり、隠されていることがある。

 ウィローズの持つあのアイテムはそうした新アイテムのひとつらしい。

 ジェシカは更新された情報を読み上げていく。


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アイテム名 【導きの魔鏡】

希少度   【★★★★★★★★☆☆】

解錠レベル 【702】

平均相場価格【2000万ドール】

詳細    【ドロップを除く入手難易度A以上のアイテムの場所を教えてくれる】


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「ドロップを除くアイテムの場所を探し当てるのか……」

「もしかしたら、彼女たちはダンジョン内に咲いているスノー・フェアリーを狩りつくそうとしているとか?」


 ミルフィの懸念は、決して無視できるものではない。

 相手は王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーだ。

 それくらいのことはやってくるかもしれない。


「行こう。ウィローズたちが進んだ方向とは逆へ移動し、そこを中心に探索する。――マシロ」

「は、はい!」

「テリーと一緒に俺たちを先導してくれ」

「わ、分かりました!」


 マシロは抱きかかえていたテリーを解き放つと、匂いをたどって移動を開始したテリーのあとを追う。その後ろから、俺たちもついていくことに。


 俺たちもまだ知らない、新アイテムを手にしているウィローズ……他にも何か手を打ってくる可能性があるから、慎重に進んでいかないとな。


 気持ちを新たに、俺たちは氷雪のダンジョンをさらに奥へと進んでいった。

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