第132話 お手柄テリー
氷雪のダンジョンに咲く呪いを解く魔法の花――スノー・フェアリー。
俺たちはそれを求めてダンジョン内を探索したが、まったくもって見つからなかった。あきらめかけたその時、使い魔のテリーが突然吠えだしたのだ。
「ど、どうしたの、テリー」
お世話係筆頭のマシロがなだめようとするが、それでも吠えるのをやめなかった。
「ど、どうしたっていうのよ、テリー」
「……待ってください、イルナさん。テリーは私たちに何かを伝えようとしているみたいですよ」
「わん!」
まるでその通りだ、と言わんばかりに嬉しそうな顔をするテリー。
「伝えたいって……今日の晩御飯に食べたいものとか?」
「わうぅ……」
ダメだ、こりゃ、と言わんばかりに元気をなくすテリー。
なんて分かりやすいリアクションなんだ。
「もしかして……テリーはスノー・フェアリーのありかを俺たちに伝えようとしているのか?」
「わんわん!」
どうやら、正解らしい。
俺はテリーが吠えた場所へと向かう。そこは雪が降り積もっていた場所であったため、手で雪をかき分けていく――すると、
「あっ!?」
その先にあったのは、見たこともない美しい花だった。
「ゴ、ゴルディンさん!」
「む? ――こ、これは!?」
雪の奥に眠っていたその花を見た時、ゴルディンさんは震えていた。
「ま、間違いない! これがスノー・フェアリーだ!」
ゴルディンさんが持っていたカタログに載っているスノー・フェアリーのイラスト。それは、雪の中に埋もれていた花と同じものだった。
「す、凄いわ! お手柄よ、テリー!」
「やりましたね、テリー!」
「わっふっふ!」
ミルフィとマシロに撫で回されてドヤ顔のテリー。
一方、トーネとゴルディンさんの親子は念願が叶って感極まっている様子。
「やったね、パパ」
「ああっ! ……しかし、まさかこの雪の中に埋もれる形で咲いているとは……盲点だったな」
悔しそうに語るゴルディンさんだが、それは仕方のないことだと思う。まさか、花が雪の中にあるなんて……俺が同じ立場でも、テリーがいなかったら想像することすらできなかっただろう。
でも、これで万事解決――と、思いきや、
「た、大変よ! 花が!」
イルナが異変を訴えた。
慌てて花の方へ向かうと、なんとすでに萎れていたのだ。
「そ、そんな……」
わずかな時間しか咲いていないスノー・フェアリー。
どうやら、すでにタイムリミットを迎えてしまったようだ。
「嘘……せっかく見つかったのに……」
「これが……スノー・フェアリーのレア度を上げている要因なのか」
強いモンスターを倒して手に入れるタイプのお宝アイテムとは違った難しさを感じる。こういった難易度をクリアするのもまた、冒険者としての醍醐味。
それに、まだスノー・フェアリーはこのダンジョン内に咲いているかもしれないし、これから咲くかもしれない。
気になるのは、同じくスノー・フェアリーを探しているという
彼女たちと遭遇する前に、なんとか見つけださないとな。
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