第131話 探索開始
「わんわん♪」
「可愛い……」
テリーとトーネがたわむれている様子を眺めつつ、俺たちパーティーとゴルディンさんを加えたメンツで氷雪のダンジョンを進んでいく。
「本当に……見渡す限り雪と氷しかないですね」
「この中から一輪の花を探すなんて無茶よ」
「しかも、いつどこで咲くか分かりませんし、仮に咲いたとしてもその時間はわずか……マッスルスライムに変えられた呪術を解くのは、並大抵のことではありませんね」
ジェシカの分析通り、一輪の花――スノー・フェアリーを探し出すのは口にするよりもずっと難しいことだった。
というのも、氷雪のダンジョンは思ったよりも広く、さらに迷路のように入り組んだ構造となっている。考えただけでも滅入ってしまいそうだ。
でも……このダンジョンで、ゴルディンさんはずっとスノー・フェアリーを探し続けているんだ。
俺たちはこのダンジョンに長くとどまるつもりはないが……少しでも力になりたいという気持ちから、こうして一緒にダンジョンを見て回っている。
時折、モンスターとも遭遇したが、三種の神器を持った俺と仲間たち、さらに高い戦闘力を誇るトーネの活躍もあり、難なく倒していった。
その間、ゲットした宝箱はゴルディンさんの厚意で俺たちの物ということになった。
「じゃが、解錠には
「
そう言って、ミルフィが俺を指さす。
最初はよく分かっていなかったゴルディンさんだが、やがてその意味を理解した時、声が上ずり始めた。
「ま、まさか……君は
「えぇ、まあ」
「!? も、もしや……君の持つ装備の数々は――」
どうやら、さっきまでの戦闘で俺が使った武器やら防具を見て気づいていたようだ。
「おぉ……こ、こんなことが……龍声剣に天使の息吹に破邪の盾――ワシは夢でも見ておるのか?」
ムキムキのボディを震わせながら、ゴルディンさんは興奮していた。
装備している俺が言うのもなんだけど……この三つのアイテムは存在自体も疑わしいレベルの代物――正直、俺なんかにはもったいないくらいの上物である。
「まさか、あの伝説的なアイテムを装備しておる若者に出会えるとは……」
「ほとんど偶然入手したようなものですが……」
「しかし、それらを宝箱から解き放ったのは紛れもなく君なのだろう?」
「え、えぇ」
「それは凄いことだぞ! どのアイテムも解錠レベルはとんでもなく高い――それを開けたとなれば、
早口で捲し立てるゴルディンさん。
冒険者としての血が騒ぐのだろう。
「パパ……フォルトの持っている武器ってそんなにいいものなの?」
「もちろんじゃ。冒険者で憧れない者はいないと断言してもいい」
そ、そこまで言われるとなんだかプレッシャーを感じるな。
「……じゃが、気をつけるんじゃぞ」
「えっ?」
さっきまでの浮かれた調子から、ゴルディンさんは急に冷静な声色へと変わる。それが意味することを、俺は察した。
「狙われるということですね」
「その通りじゃ。……腕の立つ
「…………」
ゴクッと唾を飲んだ。
そうだ。
俺は改めてその事実を理解する。
――と、その時、
「わんわん!」
何やらテリーが吠えている。
もしかして……何かを見つけたのか?
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