第114話 大迷宮のダンジョン
「大迷宮のダンジョン……」
名前からして攻略難度が高いのは間違いない。
俺たちは以前、攻略法が定かになっておらず、Zランクに指定されていた霧のダンジョンを攻略した――が、それとはまた違った難しさがあるのだろう。
そもそもリカルドさんたちでさえ苦戦するほどのダンジョンだもんなぁ。
「世界最大規模って言っていたけど……そんなに広いの?」
関心を持ったイルナがリカルドさんへ尋ねた。
「広いなんてモンじゃないよ、あそこは。何せ、ダンジョンの中に町があるくらいだからな」
「ま、町が!?」
それは確かに凄い。
塔のダンジョンに潜った時は、その塔の一階部分を食堂にしてしまった冒険者がいたけど……町ひとつとなると規模が段違いだ。
「どうだ? ――ワクワクしてこないか?」
リカルドさんは俺の目を見てそう言った。
……正直言って、めちゃくちゃワクワクする。
「リカルドさん……そのダンジョンってどこにあるんですか?」
「! ははは、そう来なくちゃな」
すでにリカルドさんは俺たちが潜る気でいると思っている。……まあ、潜る気満々なんですけどね。
他の四人も、俺と考えが同じのようだ。
新たなダンジョンへの挑戦――そう考えるだけで、胸が高鳴ってくる。
◇◇◇
報告を終えた俺たちは拠点地である我が家へと戻ってきた。
明日、リカルドさんたちと共にその大迷宮のダンジョンに潜ることとなり、うちの使い魔もそこでデビューすることになる。
「ねぇねぇ、この子の名前を決めましょうよ!」
夕食を終えると、イルナが使い魔の子犬を抱っこしながらそう提案する。
「いいわね」
「賛成です!」
「確かに、『使い魔』のままではよそよそしい感じがしますからね」
ミルフィ、マシロ、ジェシカの三人もイルナの提案に乗っかった。
しかし、名前、か……うん。ジェシカが言ったように、使い魔ってだけじゃ仲間という感じがしないし、いいんじゃないかな。
問題はその名前だけど――
「ウルトラスペリオルトマホークっていう名前は――」
「「「却下」」」
イルナの考えた名前は食い気味に却下となった。
まあ……長すぎるよな。
そこからいろいろな名前が出ては消えていき、最終的に残ったのは、
「ミルフィさんの提案である『テリー』で決まりですかね」
どこから引っ張り出してきたのか、黒板にズラリと並んだ名前の候補から、ジェシカがミルフィ発案の「テリー」という名でどうかと呼びかける。
「いいんじゃないかしら」
「異議はありません」
「俺もだ」
イルナとマシロ、そして俺自身もこれに賛成。
こうして、約一時間におよぶ長い話し合いの結果、使い魔の名前はテリーに決定したのだった。
「じゃあ、テリーは今日私と一緒に寝ましょうね」
「ズルいですよ、ミルフィさん!」
「わ、私も一緒に寝てみたいです……」
今度は誰が一緒に寝るかでもめだしたな……さすがにテリーも困り顔だ。
「ははは、大人気だな、テリーは」
「そうね。――じゃ、じゃあ、フォルトは私と一緒に寝る?」
「えっ?」
「――って、冗談に決まっているでしょ! 何ちょっと本気にしてんの!?」
「いや、まだ何も言ってないけど……」
結局、俺とイルナが一緒に寝るという案は他の女子陣からの猛反対を受けて中止となったのだった。
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