第115話 思わぬ再会
Sランクパーティーである霧の旅団でさえ攻略に手こずっている大迷宮のダンジョン。
そこへ、俺たちも同行することとなった。
ただ、今回俺たちは探索へ本格的に挑戦するというわけではなく、霧のダンジョンと同Zランクがつけられている大迷宮のダンジョンとはどんなところなのか――その様子を肌で感じるのが目的であった。
「大迷宮のダンジョンは、以前挑んだ霧のダンジョンと同じZランクダンジョンなわけだけど……その中身はまるで違うわね」
ダンジョンへ向かう道中、分かっている限りのダンジョンに関する情報が載せられたガイドブックに目を通しながらイルナが言う。
一応、馬車の中で読書をすると酔うかもしれないぞと忠告はしたが、イルナは聞く耳を持たず、読みふけっている。
Zランクとは、未だに攻略方法が確立されていないダンジョンを指す。
すでに多くの冒険者が出入りしているダンジョンでは、どこにどんなモンスターが出現し、全体の規模としてはこれくらいだという目安が数値化され、それがランク分けされている。
しかし、一口にZランクと言っても、その内容はだいぶ異なる。
例えば、俺たちが攻略した霧のダンジョンも同じZランクだった。
だが、あれは俺の鍵の力で霧を封じ込めなければ突破困難な場所というくらいで、ダンジョン自体の攻略難易度が高いか低いかはまだハッキリとは分からない。
――ところが、今日これから潜ることになる大迷宮のダンジョンは違う。
攻略方法が確立していない一番の理由は、その巨大すぎる規模にあった。
「これまで見つかったどのダンジョンのよりも広範囲なんて……」
「おまけにルート分岐は現在発覚しているだけでも百以上という話ですからね……」
「そ、それを全部調べるんでしょうか……」
マシロの不安そうな声が聞こえてきた。
確かに、ダンジョンの規模としては他に類を見ない広さだ。
……でも、必ずどこかに突破口があるはず。
俺もイルナの持っている本で大迷宮のダンジョンに関する情報を読んだが、あれだけの規模やトラップ、ハイレベルのモンスターが潜んでいるダンジョンで何も発見されないってことはないと思う。
――いや、その意見自体が偏見というか、「お宝がある」という前提で話を進めてしまうのは危険かもしれない。
しばらく荒れた道を進むと、問題のダンジョンが見えてきた――が、
「えっ!? 何あれ!?」
思わずミルフィが叫ぶ。
俺もこの光景はまったく予想していなかった。
「な、なんて数のテント……」
「みんな、このダンジョンに挑む冒険者たちですね」
「す、凄い……」
イルナ、ジェシカ、マシロもその数に圧倒されていた。
というか、ここからリカルドさんたちのテントを探すのは骨だな。一応、目立つ緑色のテントが円を描くように八つあるところっていうのは聞いているけど……それでも見つけるのには結構時間がかかりそうだ。
「みんな、霧の旅団のメンバーがいたら教えてくれ」
馬車のスピードを緩めつつ、俺がそう呼びかけると、四人は荷台の窓から顔を出して辺りを窺う。
すると、そこへ、
「やあ、久しぶりじゃないか」
気さくな感じで話しかけてきた女性がひとり。
その女性とは――
「!? グレイスさん!?」
《月影》という冒険者パーティーのリーダーであり、砂漠のダンジョンではとてもお世話になったグレイスさんだった。
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