第113話 リカルドへの報告

 一躍パーティーのマスコット的存在となった青い瞳の白ワンコ。

だが、この見た目でもれっきとした使い魔だ。

 今はまだ生まれたてでその能力がどれほどのものか不透明だけど、リカルドさんたちへの紹介が終わり、ダンジョンに入って練度を積めば、その実力が一体どれほどのものか分かるはずだ。


 胸を躍らせつつ、俺たちはリカルドさんたちの本拠地を訪ねた。

 ゾルダン地方最大都市であるアルメンタの外れ。

 大きな木造の一軒家が、リカルドさんたちの新しい拠点地だった。


「お久しぶりです」

「フォルトじゃないか! フローレンス伯爵から話は聞いているぞ!」


 そこを訪ねるやいなや、パーティーのメンバーから一斉に質問攻めを食らった。アンヌさんやエリオットさんがなだめてくれたが、凄い興奮ぶりだ。


「な、何があったんですか?」

「それはこっちのセリフよ」


 アンヌさんが苦笑いを浮かべながら言う。

 続いて、エリオットさんが口を開いた。


「先ほど、フローレンス家の使いと名乗る者が来てね。君のおかげで娘が元に戻ったと教えられたんだ。目覚ましい活躍ぶりじゃないか、フォルト。」

「い、いや、そんな……」


 エリオットさんに褒められて、俺はうまく話せなくなってしまった。まさかそこまで大事になっているとは……思いもしなかった。


「今日はその件の報告できたのか?」

「それもあるんですけど……塔のダンジョンで入手した使い魔の卵がかえったので、それを伝えに来ました」

「! 使い魔が生まれたのか!」


 いつもクールで物静かなエリオットさんらしくない大声。その後ろではアンヌさんも驚きの表情を浮かべている。

 それだけ、使い魔の存在が大きいってことだ。

 すると、そこへ、


「なんだぁ? 随分と騒がしいじゃないか」


 部屋の奥からリカルドさんがやってくる。

 寝起きのようで、髪はボサボサ。おまけに凄くラフな格好……あれは完全にパジャマだな。


「うおっ!? フォルトじゃないか!」


 半開きの寝ぼけ眼が一瞬にして全開となる。

 

「伯爵の娘さんの件なら聞いたぞ。それからちょっと眠っていたが……」


「ふわぁ」と大きなあくびをするリカルドさん。使い魔の報告をしている時もどこか上の空に映った。よく見ると、目の下にクマもある。


「パ、パパ、大丈夫……?」

「おう……ちょいと厄介なダンジョンに挑んでいてな」

「厄介なダンジョン?」


 リカルドさんが手こずるほどのダンジョン……興味があるな。


「一体どんなダンジョンですか?」

「その名もズバリ――『大迷宮のダンジョン』だ」

「「「「「大迷宮?」」」」」


 俺たち五人の声が綺麗に重なった。

 確かに……名前からして攻略が難しそうなダンジョンだ。

 さらに、エリオットさんから追加情報がもたらされた。


「世界最大規模のダンジョンと呼ばれているところでな。その異名に相応しく、今は百を超える冒険者パーティーが探索に汗を流している」

「そ、それは凄いですね……」


 普通、ダンジョンに挑むパーティーの平均的な数は多くても二十組くらいだ。

 俺たちが驚いて顔を見合わせていると、リカルドさんはニヤッと笑った。


「君たちも挑戦してみるか……?」

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