第86話 攻略の糸口

 ペドロさんの家で夕食をいただいた後、霧の聖窟攻略のため緊急会議を開いた。

 

 が、


「さて……どうしたものか」


 何ひとつとして有力な案は出てこない。

 それもそうか。

 何せ視界はゼロで周囲は敵だらけ。

 あの状況下でどのように行動するのがベストなのか……やっぱり、霧をどうにかしないことには行動ができない。


 だが、あの霧は魔力をまとう特殊な霧らしく、ペドロさん曰く、誰ひとりとして払いのけた者はいないという。


「うーん……」


 ――ダメだ。

 どれだけ頭を捻ろうとも、答えは一向に浮かんでこない。

 もし、俺がリカルドさんだったら、あのダンジョンをどう攻略する?

 あの霧のトラップをどうやってかいくぐる?

 

「……やっぱダメだな」


 それでも妙案浮かばず。

 やっぱり、誰かの真似事じゃなく、俺たちは俺たちのやり方でダンジョンを攻略していく――こうやって、試行錯誤して攻略の糸口を掴むことも経験だ。そのためにも、


「ダメ元でもう一度あのダンジョンに潜ってみるか」


 正直なところ、昨日はモンスターに囲まれているという恐怖感があって周りの様子をじっくりとチェックすることができなかった。

なので、今回は攻略を前提で進むには進むが、もっと落ち着いて周りの様子を調べてみるという点にも重きを置きたいと思う。


「それに、俺たちの周囲にいたモンスターがどんなヤツか、それも同時知ることができれば攻略も――」


 ここで、俺の頭にある閃きがよぎった。


 あの時……囲まれたと思ったが、それにしたってモンスターが一匹も俺たちを襲いに来なかったのは不自然じゃないか?


 ――そんな内容の話を、俺は朝食を食べながらみんなに話した。


「……確かに、妙ね」


 イルナは顎に手を添えて熟考。

 その横では、


「今のままじゃ攻略しようにも、ダンジョン自体の情報が少な過ぎてどうしようもないというのが本音よね。モンスターの件だって、もっとよく調べてみないと」


 ミルフィらしい分析だな。


「少しでも長く潜ってヒントを持ち帰りましょう」

「そ、そうですね。今度はもっと落ち着いて挑みましょう」


 ジェシカとマシロも、再挑戦に前向きなようだ。

 一方、


「いやぁ……若いって、いいなぁ」


 俺たちの作戦会議を眺めながら、ペドロさんはそう漏らす。

 そして、「俺の奢りだ」と人数分のコーヒーを淹れてくれた。


「攻略に時間制限はないからな。落ち着いて挑めば光明が見えるはずだ」

「はい。明日には必ず何かヒントを持ち帰ってきますよ」

「はっはっはっ! 実に頼もしいな!」


 ペドロさんは豪快に笑い飛ばす。

 姿なきモンスター軍団。

 その正体を解き明かすことができれば、攻略に一歩近づける。


 ――そのための切り札もあることだしな。


 期待と不安を胸に抱きつつ、今日はこれで休むことにした。

 明日が待ち遠しいよ。

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