第76話 塔のダンジョン、攻略完了!
ついに俺たちは成し遂げた。
これまで誰も攻略できなかった塔のダンジョンに眠る、解錠レベル四桁の超お宝をゲットしたのだ。
そのお宝である使い魔の卵は、俺たちのパーティーで管理することとなった。
リカルドさんの話では、孵化するまでの時間は、生まれてくる使い魔によってまちまちなのだという。最短で一日、最長だと十年という年季の入ったヤツもいたらしい。
「さすがに十年だとなぁ……」
「えぇ。十年も経ちますと、私たちも結婚して子どもがいてもおかしくはありませんからね」
「うん。……うん?」
ジェシカの言葉に流れで相槌を打ったが……なんかおかしくなかった?
「フォルト……その結婚というのは」
「どういう意味かしら?」
振り返ると、勇ましく腕を組み、眩い眼光をこちらへ飛ばすイルナとミルフィの姿があった。
「ごめんなさい、フォルトさん。とうとうバレてしまいましたね」
「何が!?」
舌をペロッと出しながら、ジェシカは冗談っぽく言う。
……だけど、後ろのふたりは冗談として受け止めてくれそうになかった。
◇◇◇
イルナとミルフィのふたりをなだめつつ、俺たちは拠点に戻って来た。
リカルドさんたちは、明日フローレンス伯爵に改めて調査報告をしにいくという。
事前の取り決めで、お宝に関しては俺たちがいただくことになっていたので、使い魔の卵を欲しがることはないだろうとリカルドさんは言っていた。
また、伯爵からすれば、塔の謎が解けても、周囲に生息するアイアンビートルなどのモンスターを討伐して得られる宝も、一般的な冒険者を惹きつけるには十分な魅力があると考えているため、町をより大きくしようと乗り出してくるとも分析していた。
「町が今よりも賑やかになるのは喜ばしいことだけど……どうせなら、もうちょっとお店の数とか増やして欲しいわね」
「分かります」
ミルフィの意見に同意するマシロ。
その後ろではジェシカもうんうんと頷いている。
「ちなみに、例えばどんなお店が欲しい?」
「「「可愛い洋服屋」」」
三人の声が見事に重なる。
……うん?
三人?
「えっ? 洋服なんてどれも大して変わらないでしょう? それよりも武器屋よ! この前の戦闘で、やっぱり私も拳以外に勝負できる武器が欲しいなって思うようになっていたから、今ある店以上に品揃いが豊富な店が欲しいわね!」
「「「…………」」」
「な、何? なんでみんなそんな目で私を見るのよ!」
……冒険者としては満点の回答だが、女子としては落第点ってことか。
ちなみに、バラクさんにも塔のお宝について話をしておいた。
バラクさんは涙を流しながら俺たちにお礼を言った。
「ありがとう……本当にありがとう……」
よほど嬉しかったのだろう。
それからしばらく、バラクさんは泣き続けていた。
その後、バラクさんはこれからもこのダンジョンで食堂を切り盛りしていき、若い冒険者たちをサポートしていくという新たな目標を掲げた。
さらに、塔の謎が解明されたことで、塔自体をいろいろと改装していきたいという考えを明らかにした。古い民族楽器のある二階は展示室にし、何もなくなった三階部分は展望台にするという構想まで出来上がっているらしい。
俺たちもまたこのダンジョンに厄介となるだろうし、その時の楽しみが増えたってわけだ。
こうして、俺たちの塔のダンジョン攻略は幕を閉じた。
さて、次はどこのダンジョンへ行こうか。
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