第75話 虹色宝箱の中身

 虹色に輝く宝箱の中身。

 俺たちはいよいよそれを確認するため、すでに半開きとなっている宝箱を開けてみた。すると、


「こ、これって――」


 現れたのは大きな赤い卵だった。


「た、卵? これが解錠レベル四桁のお宝なの?」


 脱力した声で言うイルナ。

 まあ、気持ちは分からないでもないが……どう考えても、こいつはただの卵じゃない。他の三人はその気配というか、雰囲気に気づいたようだ。


「ね、ねぇ、ジェシカ……」

「えぇ……間違いありません」

「やっぱり……」

「ちょ、ちょっと! 何? 何なのよ!」


 未だにイルナだけ分かっていないようだ。


「イルナ……こいつはきっと、使い魔の卵だ」

「使い魔? ――あっ!」


 ようやくイルナにも伝わったか。

 そう。

 こいつは使い魔の卵だ。


 それを証明するため、俺は卵に手を添える。

 ――って、その前に、


「あの……いいかな?」


 使い魔の卵は、最初に魔力を注いだ者を主人として認める。

 それをやろうと思ったが……みんなに確認を取っておかなくてはと振り返る。


「もちろん、フォルトさんがやってください」

「うちのリーダーだしね」

「そうです! フォルトさんしかありえませんよ!」

「まあ、いいんじゃない? きちんと世話するのよ」


 とりあえず了承はされた。

 改めて、俺は卵に魔力を注いでいく。


 直後、卵が光って、表面に文字が浮かび上がる。

 これで主人としての認定作業終了。

 生まれてきた使い魔は俺を主人と認識するはずだ。


「それにしても……随分と見晴らしがよくなったわね」

「三階部分が丸々なくなったからな」

「というか、これどうやって持って帰る?」

「うーん……私の歌唱魔法ではお役に立てそうにありませんね……」

「リカルドさんたちにお願いしましょうか」


 みんなでそんなことを話し合っていると、ずっと下の方から声が。


「な、何が起きた!?」

「うおっ!? なんだ、この瓦礫は!?」

「あっ! 塔の上部分がなくなっているぞ!」


 なんだか凄い騒ぎになってきたな。

 

「おーい! フォルト! 無事かー?」


 この声……リカルドさんか。


「リカルドさん!」

「おっ! そこにいたか! どうやらお目当ての物は発見できたようだな!」

「はい!」

「よし、今応援を連れてそっちへ行く!」


 リカルドさんたちが応援に来てくれたら、この卵を下へ運ぶこともできる。

 それに……いろいろと報告したいことがあるしな。




 合流したリカルドさんたちと一緒に卵の運搬について相談。

 卵を見たリカルドさんは「使い魔の卵だな」と教えてくれた。

それから、俺は新たな鍵――絶対解錠アブソリュトリー・アンロックについて話をする。


「ほぅ……四桁の宝箱を解錠したか」


 話し終えると、リカルドさんの表情が一変した。

 

「なあ、フォルト」

「はい?」

「その鍵の話……よそでは一切するなよ?」

「えっ!?」


 最初は驚いたが……言われてみれば当然か。

 王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーでも存在しない。


「もし、これが世間に知れ渡ったら……今偉ぶっている王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーたちはいい顔をしないだろう。――いや、それだけならまだいい。おまえの存在を疎ましがり、強硬手段に打って出る可能性だってある」

「強硬手段……」


 つまり――暗殺ってことか。


 俺は手にした鍵へ視線を送る。

 どうやら、こいつはとんでもない進化を遂げたようだ。

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