第74話 絶対解錠

 夢の中で聞いた女性の声。


 彼女は鍵の新たな力を解放してくれた。

 その名は絶対解錠アブソリュトリー・アンロック


 解錠レベル四桁を超える規格外の宝箱を解錠するための力。


「……試してみるか」


 次の日。

 俺はみんなを連れて塔の三階へと来ていた。

 

「フォルト……無理はしないでね」

「大丈夫だよ」


 ミルフィは――いや、他の三人も心配しているようだ。

 無理もない。 

 昨日の俺は成す術なく完敗だった。

 一応、夢のことは四人に話しているのだが……やっぱり、絶対解錠アブソリュトリー・アンロックの件は半信半疑って感じだ。

 それは俺自身も――正直、俺の悔しさが見せた幻影なんじゃないかって思っているくらいだ。


「あの夢が真実か幻か……やってやる!」


 俺は鍵に魔力を注ぐ。

 いつもと同じ解錠パターン。

 ――だが、違う。

 いつもなら限界点に到達し、解錠魔法が発動するのだが、今はいつもの限界点を突破してさらに魔力をため込んでいく。


「これは……」


 鍵は金色の輝きを放ち、吸い込んだ魔力によってサイズアップしている。この大きさは……まるで剣だ。


「な、何アレ!?」

「これが……絶対解錠アブソリュトリー・アンロックの力……」

「す、凄い……」

「これなら、天井にある宝箱も開けられそうですね!」


 イルナ、ミルフィ、マシロ、ジェシカの四人は新たな鍵の姿に驚いていた。

 というか、俺自身も驚いている。

 いつも使っている鍵よりも強力だというのは、手にした瞬間に分かった。


 これなら――イケる!


 俺は天井に向かって鍵を掲げる。

 すると、鍵から金色の魔力が放たれ、天井の巨大鍵穴にジャストフィット。


「いいぞ……そのまま開けるんだ!」


 鍵へさらに魔力を注ぐと、鍵はゆっくりと回りだし――「ガチャッ!」という音が響き渡る。


「「「「「おおっ!!」」」」」


 ついに、長らく誰の目にも触れられていなかった塔のお宝が手に入る。

 期待に胸を膨らませていると、突然激しい横揺れが襲う。


「な、なんだ!?」

「みんな! 気をつけて!」


 イルナが注意を呼びかける。

 しかし、立っているのも難しいくらいの横揺れだ。

 なんとか踏ん張っていた俺は、三階に起きたある異変に気づいた。


「部屋の壁が……」


 三階の部屋の壁が徐々に崩れ落ちていく。

 そして、残された天井部分は――宙に浮いた格好となった。


「ど、どういうこと!?」

「大丈夫だ、ミルフィ……あの天井部分が、宝箱なんだ」


 横揺れが収まると、三階部分はほとんどなくなり、天井部分だけが残された。宙に浮かぶあれこそが、宝箱の真の姿なのだ。

 宝箱はゆっくりと俺たちの前に降り立つ。

 眩い虹色の宝箱。

 おまけに特大サイズだ。


「こ、こんなサイズの宝箱……今までに見たことないわ!」

「す、すぐに解錠レベルを調べます!」


 ジェシカが片眼鏡モノクルを装着して解錠レベルをチェック。その結果は、


「す、凄いです! この宝箱の解錠レベルは【1237】です!」

「そ、そんなにか……」


 またとんでもない数字が出てきたな。

 ――でも、俺はその宝箱を開けたんだ。


 これは中身が気になるところ……果たして、何が出てくるやら。


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