第73話 夢の中で
俺はリカルドさんに頼み、塔のダンジョンへの滞在を伸ばしてもらうことにした。もちろん、他のメンバーにも了解を取ってある。
「いいぞ! 男ならトコトンやれ!」
リカルドさんは俺の姿勢を認めてくれた。
結局、その日は何度もトライするがダメ。
みんなは俺を励ましてくれたが……お宝を前に何もできないことへ歯がゆさを感じつつ、その日は塔の一階で寝ることにした。
――その日の夜……俺は夢を見た。
〈割と早めの再会になりましたね〉
砂漠のダンジョンで聞いた、あの声だ。
前回同様、俺はひと言も発することができない。
されるがままだ。
〈まさかこんなに早い段階でレベル四桁越えの宝箱を発見するとは思っていませんでした〉
〈今回の鍵を使うに相応しいか――少し試させてもらいます〉
試す?
試すって、俺の何を試すっていうんだ?
〈安心してください。試すと言っても、あなたは何もしなくていいです。私が勝手にのぞいて確認するだけですから〉
のぞく?
さっきより不穏さが増したんですけど!?
〈見させてもらいます――あなたのこれまでを〉
次の瞬間。
頭の中に何かが入り込んでくる感覚。それが具体的になんであるかは説明できない。実体がなく、まるで煙のようだけど、しかと頭の中に存在していると感じ取れる――まさに未知の感覚であった。
苦しくも痛くもない。不快感もない。
声の主により、のぞき込まれている俺の記憶――俺自身も、それを見ることができた。こちらの意思とは関係なく、勝手に垂れ流される俺の過去。
〈ふぅむ……順風満帆というわけではないようですね〉
改めて言われなくてもわかっているよ。
ついこの前まで、ある意味どん底にいたんだから。
やがて、イルナと出会った記憶に代わり、ジェシカと出会い、マシロと出会い……他にもたくさんの人たちと出会った俺の記憶。
〈……いい冒険をしているようですね〉
それは俺自身も感じている。
あの鍵を手に入れてよかったって、心から思っている。
だからこそ、あの塔に隠された宝箱は絶対に開けたい。
そのためには――あんたの力が必要なんだよ、声の主さん!
〈……なんという強い念。まさに宝箱に対するあなたの執念を感じます〉
俺の意思が、初めて声の主へと届いた。
〈いいでしょう。あなたには信頼できる仲間もいるようですし……第二の鍵――
それが、新しく使えるようになった鍵の能力か。
〈これからも仲間を大切にしてください〉
その言葉で、俺はハッとなる。
バッシュさんの屋敷であの絵本を読んだ時から聞きたかったんだ。
あなたは――女神リスティーヌなのか?
しかし、声が出せないので何も聞き出せない。
さっきみたく伝えられないかと強く念じるも、効果はないようだ。それでも、俺が何かを必死に呼びかけているのはわかったようで、
〈あと一つ……三つ目の力を解放したら、あなたの話を聞きましょう〉
あと一つ。
もう一つクリアしたら、俺の疑問は解消される。
……やってやるさ。
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