第63話 調査再開
駆けつけた自警団に身柄を拘束されたレックスたち。
余罪も相当ありそうだということで、しばらくは外に出られないだろうとグレイスさんが教えてくれた。
そのグレイスさんは、「食事も終わったことだし、今日はこれで失礼するよ」と言って帰っていった。本当にご飯を食べに来ただけだったのか。
レックスは去り際に何やら喚き散らしていたけど、俺にはもうあいつらに対する関心なんてこれっぽっちも存在していない。
それよりも気になるのは――塔の二階へ進む方法。
俺はミルフィたちと一緒に改めて考え直すため、店へと戻った。すると、
「おっ! 遅かったじゃねぇか!」
「!? リ、リカルドさん!?」
そこにはなぜかリカルドさんをはじめ、エリオットさんやアンヌさんなど、霧の旅団のメンバーが集結し、ドンチャン騒ぎをしていた。
「い、いつの間に……」
「おまえが過去の因縁と対峙しているようだったから、その勝利の前祝として祝勝会場を温めておいたんじゃないか」
「えっ?」
祝勝って……リカルドさんは最初から俺が勝つって信じてくれていたのか?
「それにしてもバラクよ! おまえ相当料理の腕を上げたな! 冒険者を引退して料理人に転職したのはいい判断だったってことだ!」
「うるせえよ!」
……本当にそうなのかなぁ。
って、ちょっと待て。
「あ、あの、リカルドさん」
「あん?」
「そちらの店主とお知り合いなんですか?」
「あれ? 言ってなかったのか、バラク」
「言うも何も……まさかこの子たちが霧の旅団のメンバーなんて知らなかったよ」
小太りの店主は驚いたように呟く。
――が、リカルドの口からさらに驚く情報がもたらされた。
「こいつの名前はバラクといってな。元霧の旅団のメンバーなんだ」
「「「「「えぇっ!?」」」」
俺たちは揃って驚く。
「わ、私は覚えていないわよ!」
「そりゃそうだろうな。何せ、霧の旅団と名乗る前の、創設メンバーのひとりだからな。あの頃、おまえはまだおしめしてたし」
「……イルナのおしめ」
「! どこに食いつてんのよ!」
いかん。
一瞬想像して、それが口から漏れてしまった。
イルナに思いっきり頬っぺたを引っ張られながらも、続きを語ろうとするリカルドさんの話に集中する。
「それにしても、『しばらく世界を見てくる』なんてパーティーを抜けていったのに、まさかダンジョンで飯屋を開いているとは思わなかったぞ」
「俺もあれからいろいろあってな……今じゃすっかり、このダンジョンに魅了されているよ」
目を細めてそう語るバラクさん。
「魅了っていっても、もう攻略諦めて飯屋を始めたんじゃないのか?」
「た、確かに、もう何年もここを調査してきたが……結局、俺は二階にすら到達できなかった。そりゃ自信もなくすってもんだ」
項垂れるバラクさん。
しかし、そんな時でも料理を作る手は止めず、気がつけば俺たちの席にも料理が並んでいた。
「わあ♪」
「おいしそうね!」
「どれから食べようか迷ってしまいます♪」
「彩も……凄く綺麗です」
ミルフィ、イルナ、ジェシカ、マシロの四人は運ばれてきた料理に夢中となっていた。まあ、俺も戦闘のあとだから腹ペコではあるので、とても魅力的に映る。
「でも、本当にこの塔の二階へはどうやって上がったらいいのかしら」
運ばれてきたチキンを頬張りながら、イルナが言う。
当たり前の話だけど、一階に二階へ上がれる階段は存在しない。
それに、周辺はバラクさんや他の冒険者たちが散々調べたはず……それでも見つからないってことは、もしかして――そもそも二階なんて存在しないのでは?
と、その時、
「そもそも、この塔に二階なんてあるのでしょうか」
俺が抱いていた疑問をそのまま口にしたのはジェシカだった。
「確かに……これだけ探してないってことは……」
「上の階は存在しない?」
ミルフィとマシロも、その考えに至ったらしい。
「……俺も、それを考えたんだ」
バラクさんは力なく語る。
もしかしたら……それを確信してしまったから、冒険者を辞めたのか?
それでも未練があって、ここから離れられずにいるのか?
……ないならないで、それを証明する必要がある。
この塔に隠された、すべての秘密を引っ張り出して見せるぞ。
まずはさっき見つけた隠し扉からだ。
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