第44話 砂のダンジョン、再び

 改めて砂のダンジョンを見渡してみると、これまで入ったどのダンジョンよりも、

 

「広いな……」


 それに、なんとなく蒸し暑さを感じる。

 前に行ったマグマ地帯ほどではないけれど、立っているだけでジワリと汗が滴るほどには気温が高い。それと、


「他の冒険者たちはどこまで行ったのかしら」


 今まさに俺が投げかけようとした疑問をミルフィが代弁してくれた。

 そうなのである。

 俺たちよりも何組かは先にこのダンジョンへと足を踏み入れているはずなのに、まだどの組とも顔を合わせていない。


「もっと深くまで潜っているのではないでしょうか」

「中継地点も作られていない今の状況だと、あまり奥深くまで潜るのは迷子になる可能性が高いから得策とは言えないんだけど……」


 イルナの言う通り。

 それが定石というもの。

 一歩一歩が新開拓になる状況で、選抜された優秀な冒険者たちがそんな初歩的なミスを、それも複数組が侵すとは思えない。


 だったら、他に何か原因があるということか?


 その時だった。


「あっ! あそこに誰か倒れているわよ!」


 叫んだのはイルナだった。

 慌てて駆け寄った俺たちが見た光景とは、


「ぐおぉ……」


 仰向けに寝転がり、なんとも気持ちよさげにいびきをする冒険者の姿であった。よく見ると、この人と同じように、数人の冒険者が砂の地面に体を横たえて眠っている。


「この方たちは……確か、四番目にダンジョンへ入って行ったパーティーですね」

「なんでこんなとこで寝てるんだ?」

「魔法のせいでしょうか――わっ!」


 突然、ジェシカが頭を伏せてしゃがみ込んだ。

直後、俺たちのすぐ近くを拘束で何かが通過していく。正体がつかめず、辺りを見回す――そいつの居場所はすぐに判明した。


 頭上だ。


 咄嗟にそう判断し、ゆっくりと目線だけを上げると、


「うおっ! なんだありゃ!」


 俺たちの頭上を旋回する不気味な青色の生命体。どうも鳥のようだが、そいつは、


「~~♪」


 歌っている。

 めちゃくちゃ綺麗な声で。

 それにしても、この歌……なんだか……いい気分に……


「はっ! い、いかんいかん!」


 猛烈な睡魔に襲われて眠りそうになったが、両方の頬をバチンと力強く引っ叩いてなんとか堪える。


「気をつけてください! あれは催眠術を使うヒバーリという鳥です!」

「催眠術!? みんな! あいつの声を聞くな! 眠らされるぞ!」


 ジェシカからの忠告を受け、俺は耳を塞ぎ、他のふたりへ注意勧告をする。

 すでにミルフィは俺と同じように耳を塞いだが、イルナは遅れてしまったせいで目がすでにトロンとしている。


 このままじゃまずい。


「ジェシカ!」

「お任せを!」


 アサルトスコーピオンを撃破した際に手に入れたふたつの宝箱。

 その中身が、今回の戦闘で大きく役立つ。

 まずひとつ目は、状態異常攻撃を仕掛けてくる相手に打ってつけのことアイテム。


「いきますよ! マジックバブル!」


 ノリノリのジェシカはブレスレットを掲げる。

 そこから大きな泡が四つ出て、俺たちを包みむとパンと弾けた。

 これで準備は完了。


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アイテム名 【魔泡のブレスレット】

希少度   【★★★★★★★☆☆☆】

解錠レベル 【561】

平均相場価格【400万~500万ギール】

詳細    【状態異常攻撃を無効化にできる特殊な泡を生み出せる。効果は一時間】


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 さらに、もうひとつの宝箱から出てきたのは武器で、現在ジェシカが装備している《炎神の弓》である。


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アイテム名 【炎神の弓】

希少度   【★★★★★★★★☆☆】

解錠レベル 【687】

平均相場価格【600万~700万ギール】

詳細    【魔法で生み出した炎の矢を放てる。命中補正つき】


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「一気に決めてやれ!」

「はい!」


 遠距離攻撃用の炎神の弓ならば、空にいる敵も射抜ける。


「仕留めます!」


 ジェシカが炎神の矢を放つ。

 弓の扱いは幼い頃から習っていたらしいが、それにプラスして命中補正がかかっているのだ。外すはずがない。


「まずはひとつ目ですね」


 俺たちは潜って早々に宝箱を回収。

ドロップしたのは緑色をした小さな木製の宝箱だった。


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