第43話 決意新たに

 次の日。

 

 今日は二手に分かれるらしい。

 一組は前に見つけた廃宿屋の改修工事を手伝う。

 すでにフランさんとリカルドさんの間で話し合いの場がもたれたらしく、その際に出たアイディアをもとにして改装するのだという。


 もう一組は砂のダンジョンへ潜る。

 その潜る組に、俺とイルナ、そしてジェシカとミルフィを加えた四人が挑むこととなったのだ。


「大抜擢じゃないか、フォルト」


 にこやかに話しかけてきたのはエリオットさんだった。


「お、俺にやれるかどうか……」

「あのアサルトスコーピオンを封じ込めたんだろう?」

「そ、それは……」

「頼れる仲間もいることだし」


 頼れる仲間、か。

 俺はチラッとパーティーメンバーである三人へ視線を送る。


「「「…………」」」


 な、なんだ、この空気は。

 

「まあ、なんだ……リカルドも考えがあってあの編制にしたと思うし」

「…………」


 半分くらい面白がっているんじゃないか?

 エリオットさんもそれを分かっているのか、目を合わせてくれない。


 果たして、どうなることやら……


 ◇◇◇


 再び訪れた町外れの荒野。

 参加するのは俺たち新生パーティーとエリオットさん率いる一番隊。

 リカルドさんは行きたがっていたが、さすがにエリオットさんとアンヌさんのふたりからNGが出たため、拠点地の改装へ回ったのだ。

 

 参加パーティーは全部で十二組いて、俺たちは八番目にダンジョンへ潜ることになっている。すでに四組目までがダンジョンへ潜っており、準備を整え終えた俺たちはダンジョンの入口前で自分たちの順番を待っていた。

 ちなみに、エリオットさんたちは三番目だったので、すでに潜っている。


今回は一斉に潜るのではなく、くじ引きによって順番が決められる。

 俺たちより先に砂のダンジョンへ入って行く冒険者たちを目の当たりにした感想は、


「……みんな強そうだな」


 当たり前の話だが、ほとんどのパーティーは俺たちよりずっと経験豊富。こっちは平均年齢十代半ばの若輩パーティー。

そのため、


「おい見ろよ。あのパーティー、若造ばっかりじゃねぇか」

「しかも男はたったひとりであとはみんな女ばかり」

「けっ、お手てつないで仲良くピクニックデートに行くんじゃねぇんだっての」

「まったくだ」


 思いっきりバカにされている。

 それは昨日の一件を知らないパーティーのようだ。

 

 言い返してやりたいが、ここで小競り合いになったらリカルドさんに迷惑をかけてしまう。

しかし、このまま言われっぱなしというのも……


「気にする必要はないぞ、若者よ」


 背後から聞こえた威厳溢れる声に、俺は思わず振り返った。

 そこには、白髪に白鬚の老兵が立っていた。

 年齢はもう六十を越えていると思われるが、その肉体は若々しく、まったくの衰えを見せていない。それでいて、紳士的な落ち着きをのぞかせる態度――強者が醸し出す独特のオーラをまとわせていた。


「君の活躍は聞いている。地下水道の件を経て、一躍注目の的となった新星だとな。今日はお手柔らかに頼むよ」


 老紳士冒険者は終始にこやかな表情で語り、自分の仲間のもとへと帰って行った。もしかして、俺たちをフォローしてくれるためにわざわざ話しかけてくれたのか? ……だとしたら、なんていい人なんだろう。


「さっきの人の言う通りよ。誰に何を言われても、リーダーであるあなたは堂々としていなさい」


 気おくれしていた俺の肩を、イルナが優しく叩く。


「これまでの功績は、ここにいるどのパーティーよりも立派なものよ。だから胸を張っていなさい」

「イルナの言う通りよ」

「私もそう思います」


 そこへミルフィとジェシカが加わる。


「リーダーがそんな不安げにしていると、他のメンバーにも悪影響が出るわ」

「フォルトさんはドーンと構えていてくれればいいんです。あのアサルトスコーピオンをひとりで倒した凄い人なんですから」

「……ありがとう、みんな」

  

 ……気を遣わせてしまったな。

 せっかくリカルドさんがリーダーに指名してくれたというのに……もっともっと頼れる存在にならないといけないな。

 

 ――ていうか、なんか君ら仲良くなってない?


「あ、私たちの番が回ってきたみたいよ」

「では、張り切って参りましょうか」

「行きましょう、フォルト」

「おう!」


 俺たちは再び砂のダンジョン攻略のため、足を踏み入れた。

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