第41話 ミルフィ、合流
「ミ、ミルフィといいます。よろしくお願いします」
自己紹介を終えた途端、大歓声が沸き上がった。
思っていたよりもずっとあっさり決まったミルフィの霧の旅団入り。
冒険者パーティーには「優秀な
さらに、もうひとつ驚きの出来事が起きた。
「ジェシカといいます。よろしくお願いします」
ミルフィのすぐ横に立ち、深々と頭を下げたのはフランさんの孫娘であるジェシカであった。
鑑定スキルを持つ彼女もまた、冒険者パーティーには欠かせない存在だ。さらに、祖母がこの街の実質的な支配者であるフランさんということもあり、パーティー入りを認めたのだろう。
そういった事情もあり、途中まで一緒に旅をしてきたアンヌさんはもちろん、エリオットさんをはじめ、パーティーの面々は歓迎ムード一色であった。
「さあて、君たちふたりの所属する隊だが……年も近くてダンジョン慣れをしているイルナとフォルトのところがいいだろう」
リカルドさんはそう提案し、ふたりもこれを了承。
ミルフィとジェシカは俺やイルナと同じ隊に所属となった。
「仲間が増えたな。これでもう少し難易度の高いダンジョンへ挑戦できるぞ。――なあ、イルナ」
「…………」
「イルナ?」
沈黙。
イルナはひと言も発せず、ジッとミルフィ&ジェシカを見つめていた。
それから、俺の復帰と、それを待って延期されていた祝勝会が、街にある食堂一軒を貸し切って行われた。
「よくやってくれたなぁ、フォルト!」
開始直後、リカルドさんがやってきてこれまでのお礼を言われた。
ひとつは天使の息吹でリカルドさんを助けたこと。天使の息吹には入手した本人だけでなく、その人が助けてほしいと願った人物の傷も癒すことができるという効果がある。俺はそれを利用したのだ。
それともうひとつはあの廃宿屋について。
すでにイルナの紹介でメンバーには知れ渡っており、近々荷物をまとめて移住するとのこと。
「あの子は君と一緒に紹介をしたいと言っていたが……パーティーのことを考えて早めに報告をくれたんだ」
リカルドさんが珍しくしんみりとした感じで言う。
「だいぶ葛藤したみたいだよ」
「そ、そうなんですか……」
「あの子がすっかり君に懐いて、俺としては嬉しい限りだ。ほら、あの子はちょっと気難しいところがあるし、何より俺の仕事柄、同年代の子たちと過ごすって機会があまりなかったからね。あの子自身もそれを楽しんでいるようで嬉しいよ」
そう語るリカルドさんの顔は、Sランクパーティーのリーダーではなく、年頃の娘を持つ父親のそれだった。
「イルナが今の調子でいってくれたなら、俺とアンヌの仲をもう一歩前進させてもいいかな?」
そうだった。
リカルドさんとアンヌさんって恋仲だったんだ。
いずれ再婚することを視野に入れているなら、その辺も父親としては気になるところなんだろうな。
「まあ、ともかく、これからも君の活躍には大いに期待しているからな、フォルト」
「はい! それに応えられるよう頑張ります!」
……霧の旅団に入って、本当によかった。
――そうだ。俺はもうひとつ聞きたいことがあったんだ。
「あの、どうして俺はあの場で倒れたんですか? 原因がよく分からなくて……」
「単純に魔力の限界値を超えたからじゃないか?」
魔力限界値。
聞いたことはあるな。
魔力限界値っていうのは言葉のままの意味で、その人が持つ魔力の限界値のこと。これを超えてまで魔法を使おうとすると、生命力を奪われ、最悪死に至る。
ってことは、今回は運が良かったってだけか。
そう考えると、ゾゾっと背中が冷たくなる。
あの時は無我夢中で使ったけど……。
――ただ、そうなるとこれから先、あの【封印の鍵】は極力控えた方がいいな。
しかし、あの威力は魅力的でもある。
このまま永久に使用しないというのは勿体なくも感じた。
「その魔力限界値って上げることは可能なんですか?」
「もちろん可能だ。モンスターからドロップする宝箱の中にある」
リカルドさんがそう教えてくれた。
それなら問題ない。
魔力の限界値を上げまくって、あの大技を連発できるようにすればいいだからな。
「ただ、希少なアイテムだから、そうポンポンと手に入れることは難しいけどな」
……まあ、それはそうか。
あの大技を通常戦闘で使えるようになる道のりは長いな。
その後、酔ったアンヌさんが「私も構ってください!」とリカルドさんをさらっていったので、俺はミルフィたちと合流することに。
イルナとジェシカのふたりを交えて自己紹介をしているはずだが……
「っ!」
三人が座るテーブルの雰囲気は――
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