第40話 再会

「ミ、ミルフィ……」


 もう二度と会うことはないと思っていたミルフィが目の前にいる。 

 一瞬、あの時の――ダンジョンで置き去りにされる直前にしていたレックスたちの会話が脳裏をよぎる。


 だが、そんなものは一瞬で消し飛んだ。

 俺は思わず駆け寄る。

 今はただ、もっと近くでミルフィを見たい。

 その純粋な衝動のままに体を動かしていた。

 そして、


「ミルフィ! どうしてここに!」


 胸に込み上がって来た疑問をそのままぶつける。

 これに対してミルフィは、


「フォルトがいなくなったんだもの……捜すに決まっているじゃない」


 さも当然であるかのように答えた。

 

「で、でも、ミルフィはレックスと……」

「レックス? ――ああっ、レックスのパーティーなら抜けてきたわ」

「えっ!? で、でも、レックスとは恋人同士なんじゃ……」

「こ、恋人!? レックスがそう言ったの!?」

「あ、う、うん」


 俺が言うと、ミルフィは大きくため息をついた。


「そんなのデタラメよ。あっ! もしかして、その話を鵜呑みにしたからパーティーを抜けたの!?」

「パ、パーティーを抜けたのは……ダンジョンでいろいろあって」

「いろいろって?」

 

 とりあえず、お互いに話したいことは山ほどあるということで、近くにある公園のベンチに座りながら報告会を行うこととなった。



 まず、俺はレックスたちにおとりとしてダンジョンに置き去りとされたことを話す。

 これにミルフィは激怒。

 自分たちだけが助かろうと俺を利用したことが許せないと言ってくれた。

 それから、俺はダンジョンの地底湖で不思議な鍵と三つの宝箱を発見し、そこから大きく人生が変わったことも告げる。

 一方、ミルフィは俺を捜して旅をしていたらしい。

 幸運にも、俺が今お世話になっている霧の旅団の幹部であるアンヌさんと出会い、俺が無事でいることを確認。そのアンヌさんと共に、このゾルダン地方へやってきたのだという。


 そのアンヌさんはリカルドさん重傷の一報を聞きつけ、身を預けている診療所を探してあちこち聞き回っていたらしい。その途中ではぐれてしまい、今はひとりなんだとか。

 ……しかし、アンヌさんとリカルドさんが実は付き合っていたなんて。

 イルナはふたりの関係について何も言っていなかったから、まだ知らないんだろうな。


 しかし、まあ、


「会えてよかったよ、ミルフィ」

「私も……」


 よかった。

 ミルフィも同じ気持ちだったのか。


 それが聞けただけで十分だ。


 それなら、あの約束――一緒に冒険者をするという約束も叶えられる。

 俺はミルフィをリカルドさんへ紹介するつもりだった。

 その優れた回復士ヒーラーとしての資質は、霧の旅団でもきっと役立つ。


 ――ただ、もし断れたら、その時は……俺は霧の旅団を抜ける。

 それくらいの強い気持ちだった。


「……ミルフィ」

「ん? 何?」

「紹介したい人がいるんだ」


 そう言って、ベンチから立ち上がった時だった。


「その紹介したい人っていうのは、もしかして俺のことかい?」

「!? リカルドさん!?」

 

 まさにその通りの人物が俺たちの前に現れる。

 報告を終えた直後のようで、エリオットさんをはじめ他のメンバーも揃っていた。さらには、


「アンヌさん!」

「ごめんなさいね、ミルフィ。でも、お目当ての人には会えたようね」


 アンヌさんも無事合流できたようだ。


「リカルドさん! 俺は――」

「皆まで言うな、フォルト。大体のことはアンヌから聞いて事情を把握している。だからおまえが言いたいことも、この場にいる全員が分かっているつもりだ」

「じゃ、じゃあ……」

「うちにもあとひとりくらい回復士ヒーラーが欲しいと思っていたところだ。むしろミルフィが加入してくれるなら願ったりな展開なんだがな」


 リカルドさんの読みは的中。

 そして、同時にミルフィの霧の旅団入りが決定した瞬間でもあった。

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