第27話 依頼

 ジェシカと別れた後、俺たちは町を散策。

 ダンジョンへ行くには中途半端な時間になったため、今日はお休みしてイルナとぶらぶらあちこちを見て回った。


「楽しかったわね」

「ああ。いいリフレッシュになったよ」

「……なんだかデートしているみたいだったし」

「えっ? 何?」

「な、なんでもないわよ!」


 そっぽを向いたイルナ――が、すぐにまたこちらを振り返り、


「ね、ねぇ、あそこにいる人……私たちを見てない?」

「へっ?」


 イルナが言う場所は、俺たちが宿泊している宿屋。

 その宿屋の前に、こちらを見つめるひとりの大柄の男がいた。その髪型は見事なまでのモヒカン。なんというインパクト……絵に描いたような悪人面だ。


 どうしようかと思っていると、ついに男の方がこちらへ向かってくる。

 何事かと身構えていると、


「すみません、あなたたちは……霧の旅団のメンバーですか?」


 物凄い低姿勢でそんなことを聞かれた。



 モヒカン男性はガルトンという名前で、例の水道工事の責任者だという。

 リーダーは不在と伝えたが、とても大事な用件らしく、店主の厚意で宿屋の食堂を貸し切りにしてもらい、俺とイルナが代わりにじっくりと話を聞くことに。

 

「あなたたちに依頼したいことがありまして」

「依頼? 内容は?」

「はい……実は、私は町の水道を管理している業者なのですが、ここ数日、水道の調子が悪いのはモンスターの仕業らしいというのが分かったんです」

「モンスターの?」


 そういえば、公共浴場に行った時、イルナが言っていたな。


「本当に、モンスターの仕業なんですか?」

「探知系魔法を使える者に調べさせたので、間違いないかと」


 モンスターがいないはずの地下にモンスターを探知――いや、待てよ。

 

「まさか……この町の下にダンジョンが?」

「フラン婆さんはそう睨んでいるようです」


 この町のトップ――町長といって過言ではないフランさんのお墨付きってわけか。


「フラン婆さんの呼びかけで、名うての冒険者パーティーに声をかけ、いろいろと調べてもらっているのですが……未だに誰ひとりとして、この町の地下にあると思われるダンジョンへつながるルートを見つけることができていません」

「じゃあ、依頼というのは……」

「あなた方にもモンスター討伐に協力をしてもらいたいのです!」


 フランさん絡みとなると、素通りするわけにもいかないか。


「とにかく、モンスターを倒さないと水道工事が再開できないんです。このままでは共同浴場なども閉鎖しなければいけなくなりますし……お願いします。地下にいるモンスターを倒してください。成功の暁にはきちんと報酬もお支払いしますので」


 頭を下げるガルトンさんの必死さ……こりゃよっぽど切羽詰まっているようだ。

 町のインフラ整備に貢献したいという気持ちはもちろんある。

 だから協力はするつもりだ。

 そして、その気持ちはイルナも同じらしく、


「やりましょう、フォルト」

「そうだね。このあとは特に予定もなかったし……そういうわけで、その件、引き受けますよ」

「おおっ! 感謝します!」


 交渉成立。

 俺とガルトンさんは固い握手を交わした。

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