第25話 拠点候補

「きょ、拠点って……」

「うふふ、実は――」


 詳しい話を聞くと、フランさんは冒険者や商人を相手に、この町で不動産関連の仕事をしているそうだ。

その中に、一軒だけ買い手のつかない家があるらしい。


「いい物件だと思うんだけどねぇ……なぜか、人が長く居着かないのよ。住んでも、すぐに出ていってしまうことが多くて」

「な、なるほど……」

「原因は分からないんだけどねぇ。住んでいた者たちの話では、夜な夜なおかしな音や人の声が聞こえるって言うの。中には子どもの泣き声だという人もいたくらいで」

「完全にそれが原因ですよ!?」


 やはりというか、なんというか、いわゆる心霊現象ってヤツが頻繁に起きているようだった。

 霊現象を一切信じていない俺としては、特になんとも思わない。


「だ、大丈夫か、イルナ」

「りゃ、りゃいじょうぶにょ」


 もはや何を言っているのか分からない。

 ダンジョンでは見た目がおっかないモンスターへ果敢に立ち向かっていくのだが……以外にもオバケとかの類は苦手なタイプだったのか。


 しかし、これは朗報だ。


 問題は幽霊についてだけど……その不安が払しょくされない限り、フランさんの言う家に住むのは叶わないだろう。

 リカルドさんや霧の旅団の面々は、あまりそう言ったことを気にしそうにないが、イルナがもうすでに死にそうな顔しているいし。


「フランさん、その家ですが……俺たちで調べてみてもいいですか?」

「おや? やってくれるのかい?」

「ええ」

「なら、鍵を渡しておくよ」

「あ、それには及びません。この鍵があれば大丈夫ですよ」


 ダンジョンにある隠し部屋でも開けてしまう俺の鍵があれば、問題なく開けられるだろう。むしろ、なくしてしまうと困るので、本来の鍵はフランさんにこのまま預かってもらおう。


「それはなんとも頼もしいねぇ」


 相変わらず、ニコニコしながらそう言ってくれた。


「そういうことなら、あの家の件については全面的にお任せするよ。もしよければ、そのまま住んでもらっても構わないよ」

「い、いいんですか?」

「どうせ他に住みたがっている者はいないしね。好きにしてもらっていいよ」


 俺はイルナへ目配せをする。

 青ざめた表情のままだったが、その反応を見る限り、どうやら俺と同じ考えのようだ。


 幽霊騒動の真相を暴き、件の家を俺たちの生活の拠点としたい。


 そのためにも、明日は念入りな調査を行わなくてはならないな。


「じゃ、じゃあ、その家には私が案内しますね」


 そう申し出てくれたのはジェシカだった。


「いいのか?」

「もちろん! あなたには私の心を救ってもらった恩だけじゃなく、素晴らしいお宝の数々を見せてもらいましたし、それに……」

「それに?」

「い、いえ、それはこちらのことで……と、とにかく! 明日の朝、宿屋まで迎えに行きますね!」

「あ、ああ」


 な、なんだかえらく興奮しているが……まあ、案内をしてくれると言うならその厚意に甘えさせてもらおう。



 こうして、俺のスキル判定は終わり、このゾルダン地方における有力者ことフランさんとお近づきになれた。

 あと、その孫娘であるジェシカにだいぶ気に入られたみたいだけど……なんか、あれからイルナが怒っているような気がする。何かあったのかな?

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