第21話 奇跡、再び

※明日からは19:00投稿予定!



 今日も修行に勤しむこととなった俺とイルナ。

 ……昨夜は変に意識してなかなか寝付けなかったな。

 それは向こうも同じようで、明らかに寝不足のテンションだった。


 気を取り直して、今日のダンジョン探索へ精を出すことに


 灼熱のダンジョンことバーニング・バレーは女子的にNGだとイルナからの強い訴えで候補から除外。

 とりあえず今日はグリーン・ガーデンへ向かうこととなった。

 


ダンジョンに入ってしばらく歩いていると、広大な草原が俺たちを出迎える。

 と、


「あれ? あんなところに木なんてあったかな?」


 不自然に生えた一本の木。さらに不自然なのは、


「あの木……なんかこっちへ近づいてきてないか?」

「言われてみれば」

 

 イルナも気づいたようですぐに戦闘態勢に移る。

続いて俺も龍声剣を構える。


 その木はやはりモンスターだった。

 幹の部分に目と口がくっついている木人――ウッドマンだ。


 ウッドマンは大口を開けて突進してくるが、俺たちはまったく動じない。だって、相手は木がそのままモンスター化したヤツだ。火の玉スライムに比べたら、あまり脅威に感じなかった。


「イルナ、あいつはレアモンスターか?」

「全然。ただの雑魚モンスターよ」


 即答された。

 まあ、デザイン的にもそうじゃないかとは思っていたが。

 ともかく、向かってくるなら相手になる。

ここはひとつ、新魔法の試し打ちといこうか。


「今日は炎属性だ」


まあ、絶対弱点はこれだろう。

案の定、俺の魔法を食らい、火だるまとなったウッドマン。しばらくのたうち回った挙句に事切れて、その姿を宝箱へと変えた。

 出現したのは緑色の小さな木製の宝箱。


 すぐさま、イルナがモノクルを使って解錠レベルを確認する。……これまた良く似合っているな。


「解錠レベルは【11】よ」


【11】か。

 まあ、ロックラビットとか、バーニングスライムよりは弱そうだし、無理もないな。早速鍵を使って中身を確認すると、


「うわっ……やっぱりハズレだったよ」


 俺は落胆の声を漏らす。

 入っていたのは木の根っこ。

 誰がどう見てもハズレだ。

 と、その時、


「いえ……ちょっと待って!」


 イルナが何かに気づき、カタログを用意しだした。そして、ドロップした宝箱に入っていたアイテムの詳細を調べると、


「あ、や、やっぱり! ほら!」

「へっ? ――っ!」


 そこに載せられていた説明文を読んで、俺は驚きに声を失った。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


アイテム名 【聖樹の根】

希少度   【★★★★★★☆☆☆☆】

解錠レベル 【472】

平均相場価格【300万~400万ドール】

詳細    【樹齢千年以上の聖樹と呼ばれる木の根。これを口にするとあらゆる       呪いを無効化にできる】


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 その相場価格と詳細を見たら震えてきた。

 それから、ドロップした宝箱に目を移し、


「解錠レベル【11】……また低い解錠レベルの宝箱から、高解錠レベルのとんでもないお宝が……」

「やっぱり、あなたはパパの言う通り、お宝に愛された存在なのかもね。もしくはそうしたスキルを持っているのかも」


 リカルドさんは冗談っぽく言っていたけど……まさか本当に?

 とにもかくにも、幸先のいいスタートを切った俺たちは、さらにその芝生地帯でモンスター狩りを行った。

しかし、その後はどうにもさっぱりな結果ばかり。結局、夕暮れ前まで粘ったその日の稼ぎは、聖樹の根をのぞくとトータルで四万三千ドールになった。

 ちなみに、聖樹の根は売らずに取っておくことにした。

宝箱からは、魔法よりもずっと確率は低いが、《呪術の素》なるものもあるらしく、この先、呪術使いと戦闘に発展することも考慮しての判断だった。


「レアモンスターには会えなかったな」

「いいじゃない。超レアな聖樹の根をゲットできたんだから。それ以上はいくらなんでも高望みよ」

「それもそうだね」


 俺たちはそんな話をしながらダンジョンを出た――その直後、


「おふたりとも、お若いのにいい腕をお持ちのようですな」


 声をかけられた。

 振り返ると、そこには身なりのいい初老の男性がパチパチと手を叩きながら俺たちを見つめている。


「えっと……知り合い?」

「……いいえ、違うわ」


 初めて見る人に警戒する俺たち。


「警戒されるのはごもっとも。――ですが、ご安心ください。私はこの地方のギルドの支配人であるフランベール・マードリー様の執事をしているコットーというものです」

「は、はあ……」


 俺はチラリとイルナへ視線を送る。

 イルナは驚いているようだけど……


「知っているのか、イルナ」

「え、えぇ……フランベール・マードリー……町ではフラン婆さんの名前で通っている人で、町を牛耳っているという話よ。前に、パパはもう挨拶は済ませてあるって言っていたけど……」


 リカルドさんほどの冒険者が直接顔を見せに行く。

 その行動だけで、フラン婆さんの立ち位置が分かるな。


「そ、そんな凄い人の執事さんが何の用ですか?」

「単刀直入に言いましょう。あなたたちのリーダーであるリカルド様からの依頼により、そちらの少年――フォルト様のスキル診断を行うため、フランベール奥様のお屋敷に来ていただきたいのです」

「「えっ?」」


 あまりにも予想外すぎる話に、俺とイルナの口から間の抜けた声が漏れるのだった。


 ……ていうか、すっかり忘れていたよ。


「……まあ、今さら感があるけど、確かにハッキリさせておくべきね。何も分からないままでいるよりはいいでしょ?」

「それは確かに……」


 俺の持つあの鍵の解錠可能レベルがどれほどか知っておきたいしな。

 たぶん、リカルドさんもそれを把握しておきたいのだろう。


 詳しいスキルの情報……早く知りたいな。

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