第15話 隠し扉の謎
※感想欄で指摘されて見直したら、本来の15話が抜け落ちていました……
申し訳ございません<(_ _)>
明らかに人工的な手段を用いて隠されていた扉。
俺が魔法でマッスルスライムをふっ飛ばさなければ、きっと誰にも見つかることはなかっただろう。それくらい、わかりづらく設置された扉だ。
「聞いたことがあるわ」
唐突に、イルナが口を開いた。
「ダンジョンの中には、《隠し部屋》がいくつか存在していて、そこにはなかなか手に入らないレアアイテムが眠っていると」
その隠し部屋とやらの入り口が、この扉ってわけか。
「どうする?」
イルナがそう尋ねてくる。
「そんな話を聞かされたんじゃ、入るしかないだろ」
レアアイテムっていうくらいだから、これひとつで一万ドール越え――いや、下手をしたら竜の瞳と同じくらいの額に届くかもしれないな。
俺はそう祈りながら扉のノブに手をかけた。が、
「あれ? 回らない?」
どうやら鍵がかかっているようだ。なんてこった。せっかく見つけたっていうのに鍵がかかっているのではどうにも――うん? 鍵?
「まさか……」
俺は自分の持っているあの鍵へ視線を移す。
これも、鍵といえば鍵だ。
宝箱を開けるだけが鍵じゃない。扉を開けるのだって立派な鍵の役目だ。
俺はダメもとで、ドアに付けられた鍵穴へ自分の鍵を近づけていく。すると、鍵穴のサイズに合わせて縮小し、またしてもピッタリと当てはまった。
「……これも開けられるのか」
たまらず、そんな声が漏れた。
こいつは宝箱の鍵を開けるだけじゃなく、扉の鍵に対しても自らサイズ調整をして開けてくれる超万能アイテムだったのだ。
「その鍵……本当に便利ね」
「俺もそう思う」
短いやりとりを挟んで、俺はもう一度扉のノブに手をかけて回す。今度は抵抗なくすんなりと開けられた。
扉の向こう側はダンジョン内とは思えない綺麗な白塗りの壁で、広さはそれほど大きくはない。宿屋でも一番安い部屋くらいか。思ったより小さくて拍子抜けしていると、目の前にある机の上に置かれた宝箱の存在に気がついた。なぜ、部屋に入ってすぐに気づかなかったかというと、
「ち、小さいな……」
その宝箱は掌に収まるサイズだった。
偶然とはいえ、見つけにくい扉だったのにとんだ期待外れだ。
救いがあるとすれば、宝箱の色が金色と、これまでに比べて豪華ということだが……こんなに小さいのではなぁ……。
「凄いわ、フォルト! 金色の宝箱よ!」
落ち込む俺とは正反対で大興奮のイルナ。
「でも、こんなに小さいんじゃ期待できなくないか?」
「そんなことないわよ! 金の宝箱であれば、中身は最低でも二十万ドール以上のアイテムが入っているはず!」
「そ、そうなのか?」
こんな掌サイズの宝箱でも、中身は最低二十万ドールの代物が入っているのか。言われてみれば、宝石なんかは小さくても高価な物があるし、サイズで金額が決まるわけじゃないか。
「ちなみに解錠レベルはいくつなんだ?」
「あ、ちょっと待って――えぇっと……」
モノクルを装着したイルナは解錠レベルを調べる。
「解錠レベルは【55】よ!」
「なっ!? 【55】!?」
これまた凄い数字だ。
……地底湖で見つけた三桁連発で感覚がマヒしかけていたけど、普通はこれくらいでも十分大物なんだよな。
まあ、ともかく、さすがは小さくても金の宝箱というわけか。
では、早速開けてみるとしよう。
俺はいつも通り、鍵穴に鍵をセット。自動でサイズ調整をし、くるりと回して解錠。ふたを開けると、そこには、
「? これ……なんだ?」
小さな金の宝箱に入っていたのは四角く加工された石のようだ。
「何に使うアイテムなんだ?」
俺が使い方を問うと、イルナはカクンと首を傾げた。
「私も初めて見るアイテムね。ちょっとカタログで調べてみるわ」
そう言って、イルナが荷物の中から取り出したのはカタログだった――けど、あれ?
「初めて見るカタログとは違うな」
「パパがこれを持っていけって、今朝渡してくれたのよ。ちょっと高いけど、一般的なヤツより情報量が多いの」
そうだったのか。
リカルドさんには頭が上がらないな。
「そのアイテムを貸して」
言われるがまま、俺はアイテムをイルナに手渡す。受け取ったイルナは、カタログへそのアイテムをかざした。やがて、カタログは薄紫色に発光し始めたかと思うと、白紙のページに何やら文字が浮かび上がる。
「これは……」
それによると、
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
アイテム名 【黄金神の祝福】
希少度 【★★★★★★★☆☆☆】
解錠レベル 【672】
平均相場価格【不明】
詳細 【富を司る神のお守り。ドロップしたアイテムがお金の場合、獲得額 が三倍になる】
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「獲得額が三倍!?」
「ていうか、【★7】ってとんでもない超レアアイテムじゃない!?」
俺たちは揃って大声をあげた。
「この性能なら……こいつを売るよりも、お金をドロップするモンスターを中心に狩っていった方がより儲けられるんじゃないか?」
「相場価格はすぐにでも大金が欲しい人用なのよね。うちの経済状況は逼迫しているわけじゃないから、純粋にアイテムの恩恵を受ける方が長期的に見るといいと思うわ」
「そ、そうだな」
「お金をドロップするモンスターといったらゴールド系の敵だけど――あっ」
隠し部屋から出て、元の道に戻って来た途端、イルナの動きが止まった。何やら一点を見つめて動かない。その視線の先には、
「あれって……」
さっき倒したマッスルスライムだ。
だが、その前身は眩いくらいの金色だった。
「……ゴールド系って、あんなヤツ?」
「う、うん。あれはゴールドマッスルスライムね」
早速、俺たちはポージングしている金色の全身筋肉質スライムを発見。早速ボコボコにし、宝箱をドロップさせる。こいつらはポージングしかしないから狩るのは楽だな。
さて、肝心の宝箱ドロップだが、前と同じく小さな木製の宝箱だった。しかし、中身は銅貨三枚と五十ドール硬貨が一枚。合わせて三百五十ドール――だが、俺が黄金神の祝福をズボンのポケットにしまい、宝箱から取り出そうとした瞬間、突如宝箱の中の硬貨が輝きはじめた。
「うっ!」
その輝きに驚いて、目を伏せる。
光が弱まるのを待ってから目を開けてみると、
「おおっ! 千五十ドールになってる!」
銅貨七枚が宝箱の底で転がっていた。
「これが黄金神の祝福の効果か……」
「ちなみに、サイズが中になると五倍。大になると十倍になるのよ」
「十倍!? まさに一攫千金だな」
鍵士がなぜ強い権力を持っているのか、改めて分かった気がするよ。
「この調子でどんどん宝箱をゲットしていきましょう!」
「ああ。俄然ヤル気が出てきたぞ」
俺たちは興奮気味にダンジョンのさらに奥へと突撃していった。
結果――この日は最終的に二万五千ドールも稼ぐことができたのである。
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