第14話 ダンジョン修行2日目

明日も投稿は19:00頃!

この時間で固定にしていきたいと思います。

※今週末だけ複数話投稿予定なので、ちょっとズレますが。




 翌日。

 再びやって来たグリーン・ガーデン。

 

 本日もリカルドさんたちは他の冒険者パーティー共々何やら打ち合わせのために領主の屋敷へ朝から出かけていった。

 なので、昨日同様、俺とイルナのふたりだけのパーティーで挑む。


「うぅ……さすがにまだ緊張するな」

「それだけの装備しておいてよく言うわよ」


 確かに、装備だけは超S級の代物ばかりだけど……中身が伴っていない感が凄い。

 まあ、それは今後の俺の頑張り次第ってことで。


 今回は前回よりもより深部へ進もうと打ち合わせていたため、序盤のなんでもないゾーンを早々に潜り抜けて草原へと向かっていった――その道中、


「うん? あれは……」

 

 眼前にモンスターを発見する。

 

滑らかなタマネギ型のボディ。

全身は惚れ惚れするような澄んだ青。

 子どもでも倒せそうな、圧倒的弱者オーラ。


 その名も「スライム」である。


「こうして見ると、スライムって可愛いんだな。ほらほら~」

「油断しちゃダメよ!」


 会敵というより愛嬌溢れる小動物との触れ合いって感覚で手を伸ばしたら、


 ボゴッ!

 

「…………」 


 スライムの全身だと思っていたのは頭部で、そこから下は地面の中に埋まっていた。その埋まっていたボディっていうのが人間そっくりのボディで――これがまたビックリするくらいマッチョだった。


「出たわね! マッスルスライム!」


冷静に敵の正体を分析するイルナ。

そのマッスルスライムさんだが、例えるなら――

 

「キモッ!?」


 あ、これ例えになっていない。

 ただの罵倒だ。


「っ!」


 そんな俺の偽らざる感想を耳にしたマッスルスライムは激怒。拳を握り、両手を大きく振り上げた。

自慢の筋肉を駆使した攻撃か――と、身構えていたが、マッスルスライムはポージングを繰り返すばかりで何もしてこない。

……まさか。


「あれが攻撃のつもりなのか?」

「ええ。マッスルスライムは基本アレしかしてこないわ」


 そ、そうだったのか。

なら、こちらから仕掛けることに。


「魔法の特訓に付き合ってもらうとするか!」


 昨日のロックラビットは雷属性の魔法で仕留めた。

なら、今日は水属性にしよう。

 俺は龍声剣を強く握り、意識を集中して魔力を練った。やがて、魔力によって生み出された水は矢となった。


「よし。これなら――」


 俺は作り出した水の矢をマッスルスライム目がけて解き放ち、全弾命中。あまりにも水の威力が強くて、吹っ飛ばされたマッスルスライムは背中から岩肌がむき出しの壁に激突し、ポン、と音を立てて宝箱になった。


「なかなかの威力だな」

「な、なかなかどころじゃないわよ! 基礎魔法のアクアダムで耐久値の高いマッスルスライムを瞬殺なんて……」


 イルナは呆然となっているが……そんなに凄いのか。

 確かに、マッスルスライムって頑丈そうだったけど。


 で、肝心の宝箱はというと、


「む?」


 マッスルスライムからドロップしたのは、ロックラビットと同じ小さな木製の木箱だった。正直、見た目だけならもっと凄い宝箱がドロップしてもよさそうなんだが。


「マッスルスライムは強そうな見た目と違って臆病なモンスターだから、ドロップする宝箱のレア度も低いのよね。耐久力以外はからっきしだから、ダンジョン最弱モンスターって呼ぶ人もいるくらいよ」

「…………」

 ちなみに、その宝箱の解錠レベルは【1】で、中には数枚の葉っぱが入っていた。

こんなの、何に使うんだ?

 俺が葉っぱの用途について考察していると、一枚の葉っぱを手にしてクンクンと匂いを嗅ぎだした。


「これ……香草ね」

「香草? 料理で使うアレか?」

「そのアレです」

「価値としては?」

「一枚四ドールくらいでしょうね」


 安っ!

 倒しやすい敵らしいから、それだけ報酬も安いんだろう。

 じゃあ、俺はその最弱モンスターに対して、あんなに格好つけた魔法攻撃をぶちかましたのか。そう思ったら、なんだか急に恥ずかしくなってきたぞ。偉そうに「なかなかの威力だな」とか言っちゃった数秒前の自分を殴り倒したい……。


 精神的ダメージを負った俺はその場にへたり込む。と、


「あれ?」 


一応、中に入っていた香草を回収したイルナが何かを発見したようだ。どうやらマッスルスライムが激突した壁の一部が崩れて、その奥に何かあるらしい。


「どうかしたか?」

「ここに扉があるよ!」


 崩れた壁の向こうには――重厚な鉄製の扉があった。

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