第13話 祝勝会

【お知らせ】


 明日から1話ずつの投稿を予定しています。

 投稿時間は19:00頃です。

 ただ、今週末のみ複数話投稿していくつもりです。


 そして、こちらもカクヨム6参加作品!

 ドラゴン×エルフというハーフ幼女の両親を捜すまったり冒険!


「マイホーム・ドラゴン ~手乗り霊竜とその孫娘を連れて行く自由気ままな冒険譚~」


 https://kakuyomu.jp/works/1177354055033755686


 よろしくお願いします!<(_ _)>



…………………………………………………………………………………………………





 その日、俺たちは最大の戦果である竜の瞳を手に宿屋へと帰還。

 本来なら、空き家を借りてそこを拠点にするのだが、それは明日以降手配することになっているようだ。


「よお、こっちだ」


 俺とイルナが宿屋に入ると、早速リーダーのリカルドさんに呼ばれる。パーティーのみんなは宿屋一階の食堂で食事の真っ最中だった。


「まだ夕食には早いんじゃないの?」

「飯を食いたくなった時に食う。それがうちのしきたりだ」

「そんなの初めて聞いたんだけど?」


 イルナとリカルドさんによる親子のやり取り。

 それが終わると、ふたりの視線が俺に向けられる。


「で、どうだった? 初めてのダンジョンは?」

「あっ、えっと……」

「お? なんだ? 成果があったのか?」

 

 俺がリュックから本日の収穫を取り出そうとすると、他のメンバーも集まって来た。二番隊隊長を務めるエリオットさんによると、みんな俺のことを気にかけてくれていたらしい。

 ……新入りの俺をそこまで気にかけてくれていたなんて、前のパーティーじゃあり得なかったことだ。


「勿体ぶっていないで早く見せてくれよ」

「あ、は、はい。これです」


 メンバーのひとりにせっつかれる形で、俺は今日最大の戦果である龍の瞳を取り出す。その瞬間、ワッと歓声があがった。


「おまえこれ、竜の瞳じゃないか!」

「え、えぇ、なんとか運よくドロップしました」

「運よくって……運とかのレベルでどうこうなる物じゃねぇぞ?」

「しかし、買おうと思って気軽に手に入る物でもないぞ?」


 なんだか騒然としてきたな。

すると、ひと際大きな笑い声が店内に響き渡った。

リカルドさんの声だ。


「いいヒキを持っているヤツっていうのは、そういうもんさ。自分の意思とは関係なく、お宝の方から出向いてくる。やっぱりおまえを誘って正解だったな!」


 リカルドさんは席を立ち、俺の前に立つとポンと優しく肩を叩いた。


「これからも期待しているぞ、フォルト」

「! は、はい!」


 必要とされている。

 それを強く実感させてくれる言葉と眼差しだった。




 それから、リカルドさんの「今日は俺の奢りだ! 飲んで食って騒げ!」という言葉をきっかけに大宴会へと発展。ついにはパーティーと関係ない一般客まで巻き込んでの大騒ぎになっていた。

 店側に迷惑になると忠告しようとしたイルナだったが、宴会の中心に宿屋の店主もいたため、あきらめて帰って来たのだった。


「ふぅ……」


 俺は外へ出て、夜風に当たっていた。

 ここでこうしていると、まだちょっと信じられないな。

 すると、そこへ、


「ああ、もう! 酔っ払いの相手なんてしていられないわよ!」


 怒りながらイルナも出てきた。


「お疲れ様、イルナ」

「はあ……毎度のことながら疲れるわぁ」

「毎度なんだ……」


 レックスたちはこんな騒がなかったからな。

 初参加の俺はとても新鮮な気持ちだったけど……さすがに毎回だったらちょっと疲れるかもな。前に出てワーワーと騒ぐタイプじゃないし。


「……あ、あのさ」


 ぼんやりとそんなことを考えていたら、イルナが真面目な顔でこちらを見つめていた。


「明日も頑張ろうね、ダンジョン攻略」

「うん。まあ、今日みたいなラッキーはそう続かないと思うけど」

「……どうだろう。ほら、あなたって凄く運が強そうだし」

「そうかなぁ」

「きっとそうよ。――ほら」


 イルナは拳を作って、それを俺に向ける。

 ぶん殴られるのかと思ったけど、どうやら違うようだ。


「ああ、これはうちのチームの決まりごとのひとつで、拳を軽く打ちつけ合うのよ。お互いの健闘を祈るために」

「な、なるほど」


 意図を理解し、俺も拳を作ってコツンと軽くぶつけ合う。

 ……なんだろう。

 不思議と明日もうまくいくかもって気になってきた。


 よぉし、明日も頑張るぞ!

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