第11話 初めての戦闘、初めてのドロップ
「まずはあたしが行くわ!」
イルナがダッシュして、あっという間にロックラビットとの距離を詰めた。そのスピードに驚いたロックラビットは、前足を振り上げる。あれで叩き潰すつもりなんだろうけど、遅過ぎだ。
前足を振り下ろす前に、イルナは拳を振り抜く。眉間に直撃を受けて吹っ飛んだロックラビットは、物凄い勢いで草原を転げ回った。
「す、凄いな……」
想像以上に、イルナは強かった。
その武器は――己の拳。
魔力をまとったナックル・ダスターを装着することで、威力は数十倍。硬いはずのロックラビットのボディがゆがむはずだよ。
「フォルト!」
「っ! お、おおっ!」
イルナが俺の名を呼ぶ。
今がチャンスって教えてくれたのだ。
「あとは任せてくれ」
今度は俺の番だ。
「属性――《雷》」
龍声剣はあらゆる属性の魔法を使用できる。
今回はその中で雷をチョイス。
「くらえっ!」
放たれた雷魔法は真っ直ぐにロックラビットへと飛んでいき、
「っっっ!!!」
雷魔法の直撃を受けたロックラビットは黒焦げとなってピクリとも動かなくなる。
「す、凄い……」
イルナは呆然としていた。
俺も呆然としていた。
実はちょっと魔力をセーブしたはずなんだけど……それであの威力かよ。
しばらくすると、ロックラビットの全身が光に包まれた。と、
ポン。
軽妙な音と共に、ロックラビットはその姿を小さな木製の宝箱に変えた。
「や、やった!」
パーティーを組んで初めてのモンスター討伐に、俺は思わず声をあげた。
自分が体を動かし、実際に剣で攻撃を叩き込んで倒した……なんていうか、凄い達成感だ。
「やったわね! 早速宝箱を開けましょう!」
感慨にふけっていた俺は、その無邪気な声でハッと我に返る。
「さて、解錠レベルはいくつかしら」
そう言って、イルナはアイテム袋から何かを取り出す。それを、左目に装着して準備は完了。って、
「……似合うな」
「え? あ、ありがとう……」
思わず漏れた俺の本音を耳にしたイルナは顔を赤くしていた。
……な、なんだか気まずい空気が。
「それで、そのアイテムってどう使うんだ?」
誤魔化すように、さもさっきまでの流れがなかったかのように振る舞う俺に、イルナもしっかりと合わせて、
「こ、これは宝箱のレベルをチェックできるアイテムなの! 冒険者の必須アイテムなんだから覚えておいて!」
「な、なるほどね! それで宝箱の査定をしているわけか!」
「そうなの!」
俺たちは恥ずかしさを打ち消すように声を張って喋った。お互い、そういう空気に慣れていないようだ。
特にイルナの方はそんな空気が気恥しいのかさっさとレベル計測を開始。
「それで、宝箱のレベルはいくつだった?」
「解錠レベルは【2】ね」
そう言うと、イルナは左手の掌に宝箱を乗せ、それを俺に差し出す。俺はすぐに例の鍵を取り出すと、そこへ魔力を込めていく。鍵は徐々に淡い光を生み出し、宝箱を包み込んでいき、そして――「カチャッ」という音を立てて小さな宝箱は開いた。
気になるその中身は……指輪?
あまり高価じゃなさそうだが、念のためカタログで確認してみると、
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アイテム名 【竜の瞳】
希少度 【★★★★☆☆☆☆☆☆】
平均相場価格【10万~12万ドール】
詳細 【この指輪をつけ、場所を登録しておけば、念じるだけでその場所へ戻ることができる】
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「嘘っ!?」
「えっ!? 何!? どうしたの!?」
「竜の瞳って、これパパが欲しがっていたヤツよ!」
なんと!
「で、でも、解錠レベル【2】って低い宝箱からこんな凄いアイテムが出るなんて……」
「解錠レベルが低いからって、必ずしもダメなアイテムってわけじゃないのよ。まあ、かなり低確率ではあるけど、今日は当たり日らしいし、その影響かもね。でも、大成功には違いないわ!」
俺とイルナは「イエーイ」とハイタッチを交わす。
いろいろとあったけど、こうして俺たちたったふたりの新生パーティーは、初勝利と初報酬をダブルゲットしたのであった。
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