第8話 新パーティー結成?

 あの超有名なSランク冒険者パーティーである霧の旅団にスカウトされて一夜が明けた。


 まず、今日は他のメンバーとの顔合わせを行う。

霧の旅団は本日から本拠地の移転を行うらしく、この顔合わせが終わったらすぐに西へ向けて出立する。どうやら、そっちで大きな出来事があったようで、国から直接リカルドさんへ要請があったのだという。


 国から依頼が来るなんて……さすがはSランクパーティーだな。


「集まったな」


 アジトの広間に、霧の旅団メンバー総勢二十人が集まった。

 ひとりひとりからオーラが漂っているというか、雰囲気のある人たちばかりだった。

 中でも俺が注目したのは、隊長クラスの三人。


 霧の旅団は一番隊、二番隊、三番隊の三つのグループで構成されている。

 一番隊の隊長はリーダーであるリカルドさんが務めているが、他のふたつの隊をまとめる隊長も相当な手練れと評判だ。


 ひとり目は、やっぱりなんと言ってもリーダーのリカルドさん。

 元某大国魔法兵団の副団長をしていた経験があるらしく、知識も豊富で判断力があるというまとめ役に打ってつけの人物だ。……しかし、安定職を捨ててなんでまた冒険者になったんだろう。

 続いては、


「随分と若いのだな」


 二番隊隊長のエリオットさんだ。

 一見すると冒険者稼業とは無縁そうに見える小柄で優しげな金髪のおじさんだが、剣術の腕は超一級品らしい。


「実力があればなんでもいいわ」


 三番隊隊長を務めるのは女性のアンヌさん。

 黒髪に犬耳。

 そう――アンヌさんは狼の獣人族だった。

 高い身体能力を駆使した打撃技が得意という近接戦闘タイプだ。

 ちなみに、イルナも格闘戦が得意らしく、こちらのアンヌさんに技を教わっているらしい。父親が元魔法兵団副団長なのに、魔法の才はなかったのか。


 以上、この三人がパーティーの中心となっている。


「は、初めまして! フォルト・ガードナーです!」


 最初に好印象を与えようと元気よく挨拶をしたが効果は薄そう。

 なので、俺は地底湖で手に入れた三種の神器を出してみる。


「あ、えっと、実績になるかどうか分かりませんが……俺が解錠して入手したアイテムです」


 そして並べた三つのアイテム。

【龍声剣】

【天使の息吹】

【破邪の盾】


 すると、


「「「「「うおおおおおおおおおおおお!?」」」」」


 全員の目の色が一瞬で変わった。


「むぅ……リカルドが言っていたのは冗談かと思ったが……」

「まさか本当だったなんて……」


 これにはエリオットさんもアンヌさんも驚いているようだ。


「凄いだろ? 前所属していたところは、こんな凄いヤツに囮をやらせて助かろうっていうんだから笑えてくる」

 

 レックスたちの行動に、パーティーメンバーは騒然となる。


「……仲間のスキルを把握していないとは、素人以下だな」

「まったくだわ」


 隊長ふたりもあきれ顔だ。


「でも、三種の神器ともなれば、解錠レベルは間違いなく三桁は越えてくるわ。……そうなると、王宮鍵士ロイヤル・アンロッカーの絡む案件。受け渡す報酬も凄い額になるというのに――」

「その心配がなくなるとはなぁ……」


 言い終えて、アンヌさんとエリオットさんは顔を見合わせた。まあ、普通じゃ考えられないよなぁ。

 

「見ての通り、フォルトは解錠士アンロッカーとして優れた才を有している――とはいえ、まだ正式にスキル判定をしたわけじゃない。向こうの町へ着いたらさせるつもりではいる」


 そうしていただけると大変助かる。


「冒険者としてはまだまだ駆け出しだ。そこで、当面の間はイルナとふたりで組ませて冒険者のイロハを叩き込むのと同時に、うちのルールをしっかりと覚えてもらおうと思う。幸い、次に拠点としようと考えている西方の町の近くにはグリーン・ガーデンがあるからちょうどいい」


 リカルドさんの言葉に、周りのみんなは「そういうことなら」と納得した様子。

 ……ところで、グリーン・ガーデンってなんだろう?

 あとでイルナに聞いてみよう。

 

 ともかく、こうして俺はしばらくイルナと行動を共にすることとなった。

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