死に戻りを与えられた俺は7日間、死ぬ運命から逃げる。

スリーユウ

第1話

「貴方にチャンスを与えましょう」


そう言って目の前に現れたのは羽の生えた不思議な女性だった


女性の言葉より、まず自分がいる場所がおかしいことに気付いた。周りには何もなくただただ真っ白な空間が広がっていた


俺は何故こんな不思議な空間にいるんだ。目の前にいる女性にも見覚えがないし、この女性が天使のコスプレをしているのも全然わからない


「ここは?どこだ」


「おめでとうございます、貴方は見事に神様に選ばれました」

「はぁ、何言ってんだ」


綺麗な女性だがいきなり神とか言われたら、まずは目の前の女性の頭がおかしいと思うのは当然なことだろう


「私は天使のセシルと言います。貴方様は本当ならさっき死んだのですが、神様のご厚意により、やり直す機会が与えられました」

「意味が分からないんだが」

「信じられないのも無理はないかもしれませんが、貴方は一回死にました」

「だから、こんな真っ白な空間にいると」


以外にも俺は冷静だった。確かにこんなどこまでも続く真っ白な空間は人生で一度も見たことがなかった。恐らく、地球のどこにもこんな空間はないのだろう


「はい、その通りです」

「そしてあなたの言葉通りなら、俺は生き返ることが出来るんだな」


そうさっきこの天使って自分で名乗った女性は確かにやり直す機会が与えられたと言ったのだ。今はそれにすがる他はない


「条件付きではありますが」

「条件?」

「貴方には腕に刻まれる数字がある限り、死んでも生き返る能力が与えられます。そして、1日1回、貴方が死ぬような現象が起こります。1週間後、貴方を過ぎても生きていたら、貴方は晴れて自分の人生をやり直すことが出来るのです」


セシルが手をかざすと真の手の甲に数字が刻まれる


「つまり、生き返る能力を使って、一週間後に生きていればいいんですね」

「その認識で間違っていません、それでは頑張ってください」

「ちょっ、まだ、聞きたいことが―」


そういうが俺は不思議な眠気に襲われ、瞼が重くなってきた


「ですが、そのままだと貴方は必ず死ぬことになるでしょう」


真が薄れいく意識の中でセシルは残念そうに呟いたが小さすぎて真には聞こえなかった



いつもの光景、ボロアパートの天井を見つめて、俺こと結城真は目覚めた。手の甲に数字の7が刺青の様に描かれていなかったら、さっきまでの天使の会話が嘘のようだ。しかし、この手の甲にこの数字があるってことは、現実なのだろう


「しかし、腹減ったな」


腹が減っては戦は出来ぬと言うことで、とりあえず、真は朝食の準備を始めた


卵を割り、かき混ぜ、フライパンに油を敷いて、要領よく卵を巻いて卵焼きを作っていく。それが終わると昨日の残りのご飯を出し簡易的な朝食を作り終わった


朝食を取り食器の片づけも終わった真は自分の予定を確認した。今日は午前中大学で講義を受けることになっていた。それを思い出した俺は身支度をしてとりあえず、大学に向かうことにした。たとえ死ぬようなことがあると言っても大学の単位は取らねばなるまい。将来、ひもじい生活はしたくないからな


しかし、一日一回死ぬような現象が起こるか、そんなことを考えながらアパート出て、道路に出た瞬間、プーっという音が聞こえ、そっちの方を見ると猛烈な勢いでトラックが迫って来て俺の意識は途絶えた


そして、俺はさっきのボロアパートの天井をまた見つめていた


「そういうことかよ」


手の甲を見ると数字が7から6に変わっていた。つまり、俺はさっきトラックに挽かれて死んだのだ。逆に考えれば、あのトラックさえ、避けてしまえば今日は死なないということか


時間は戻っても、俺の腹は満たされておらず、空腹の状態に戻ってしまっていた。これではまたも朝食をつくらなければならない。めんどくさい事この上ない


「ここだけはどうにかならないものかね」


そんな文句を言いながらもお腹は減ったままなので俺は同じように朝食を作って食べた


そんな軽いループも通り過ぎ去り、さっきの自分が死んだ場所にやってきた。しかし、今度はすぐに道路に出ず、少し待つ。すると猛スピードでトラックがアパート前の道路を通り過ぎて行った


これで今日一日の安全は保障されたはずなので、俺はとりあえず、大学へと向かった


講義も無事に午前中で終わり、俺は大学で昼食を取っていた。そこに友人がやってきた


「よう、真、今日は寂しく一人で食事か、彼女の本田さんはどうした?」


こいつは小学校からの親友、挟間 翔、よくも悪くも俺のことをよく知っている男だ


「今日は俺が午前中だけの講義だから、楓はいないんだよ」

「本当にそうか~、愛想つかされたんじゃないのか~」

「本当にそうだ、そんなこと言うなら、お前こそ早く彼女作ればいいじゃないか」

「簡単に出来たら苦労しないんだよ――」

「ははは」


こいつと会うたびにこんなくだらないやり取りを毎回行っている


「あ、真君、見―つーけーた」


食堂の入り口から、聞きなれた女性の声が聞こえた


「噂をすれば、姫様の登場だ」

「姫ってお前、おとぎ話じゃないんだから」

「姫ってなんのこと」


2人の前に現れたのはこの大学でも1、2番を争う美人、本田楓、幼馴染と言うことがなければ、付き合うことなど、叶わなかっただろう


「何でもないよ」

「そうそうなんでもない、なんでもない」

「何よ、その反応私だけ、のけ者ってわけ?」

「ちがうちがう、所で今日は何で大学に来たんだ?楓は確か、今日、講義はなかったはずだよな」

「それはね、真君に借りてた本を返そうと思って」

「それで、わざわざ大学まで来たのか」

「うん、真君を一目見たくて」

「ヒュー、熱々だね」

「茶化すな、翔、俺に会いに来てくれたことは嬉しいけど、他にも用事あるんだろ、そっちに遅れないようにな」

「うん、気を使ってくれてありがと、真君、じゃあ、もう行くね」


手を振りながら、可憐に楓は食堂を去っていった。男子の数人はその姿に目を奪われていた


「あれで性格まで完璧ななんだぜ、信じられないぜ。この前なんて、見知らぬ人に助けるためでも人工呼吸したなんて信じられないぜ」

「だから、皆に人気なんだろ、俺と違って」

「自分に人気がないからってそんなに悲観的になるなよ」

「余計なお世話だ」

「すねんなよ~真、さてと、俺は、もうそろそろ行くわ」

「おう、またな」


課題の為、遅くまでの大学に残っていた俺は、明日からどうやって過ごそうか考えながら帰路に着いた。しかし、途中、唐突にアイスが食べたくなった俺はコンビニに寄った。ついでに今日は疲れたと思い夕食もコンビニで買う。家に着き、それらを馬鹿食いすると俺は今日の疲れがドッと襲って来た。そのまま睡魔に身を任せるとばたっと俺は眠ってしまった


そうして俺の生存を賭けた1日目は終わった


むくっと起きた俺は眠気覚ましにテレビをつけた


「昨日の午前9時過ぎ、東京都〇〇区の国道〇号線で東京都〇〇区にすむ50歳の男性がトラックでコンクリートの壁に突っ込む事故がありました―――」

「うん?この家の近くか」


眠いのであまりニュースが頭に入ってこない。特に今日は用事があるわけではないが、死ぬような現象が家で起こっても困る。こっちは賃貸なのだ。せっかく、見つけた激安のアパートなのだ。燃えたりしたら、堪ったものではない。そうなると家にいるのはあまり得策とは考えづらい。ので、俺は朝食も食べずに、すぐに出かけることにした


またも食事をコンビニに頼ることになったが、仕方がないだろう。アパートの家賃の金額には代えられない。買ったサンドイッチを口に押し込みながらも適当にぶらつくことにした。季節は夏なのであまり外をぶらつくと熱中症をなる可能性があるのでどこか冷房のある場所にしたい。そして、お金もない俺は結局、大学の図書館に来ていた


本を読んでいる内にあっという間に時間が過ぎ、図書室の閉館時間になってしまった。ここでは何も起こらなかったなとちょっと肩透かしを受けたが、このフラグは直ぐに回収されることになる


大学の帰り道、道路に掛かっている歩道橋の階段を降りようとしたら、足に違和感を覚え、俺は足を滑らせていた。何でそんな所に石が置いてあんだよ。普段なら絶対に石なんて置いてないだろ。足を滑らした俺はそのまま意識を失った


そして、大学で意識を取り戻した。どうやら、生き返るのは少し前の時間のようだ。それだけが分かっただけでもいいとしよう。大学に戻ってきたと言いうことは、大体30分ぐらいまえだろうか。当たり前だが手の甲の数字は6から5になっていた


歩道橋まで戻ってきた俺は、石をどけた。スルーして石を避ける選択肢もあったが、もし、俺以外の人間が足を滑らして死んでも目覚めが悪いので、石をどけることにしたのだ


石をどけてほっとしたが、俺はどうしてこんな所に石が置いてあったのか、わからなかった。この道は俺がいつも帰り道として使用しているが、他の人も当然通る。いつもはこんなもの置いてないけどな。これも神さまのいたずらなのか


俺はそんなことを考えつつ、帰宅し、2日目を終えた


朝に起きるここまではもう普通になってしまった。携帯を見ると楓から一つのメッセージが送られていた


『今日、動物園でデートしようよ』


昨日と同様家にいるのは得策ではないので、二つ返事でメッセージを楓に返した


「あ、真君~、こっちこっち」


動物園に着くと楓が入口でおしゃれをして待っていた


「ごめん、遅くなった」

「ううん、時間通りだよ、私がはしゃぎすぎて、早く来ただけだよ」

「それでも待たせたことには変わりないよ」

「そんなの気にしなくていいよ、私の好きでやったんだから、もうこの話し合いは終わりね、早く入ろう」

「そうだな」


そうして、2人のデートは始まった


「真君、どうしたの、なんか、いつものと違うよ」

その言葉に俺はぎくりとした。

「なんでもないよ、楓」

「そう?なんか、私との会話もぼっとしてる感じがするよ」

「ちょっと寝不足かもな、気を付けるよ」


楓に何かを悟らせるのはまずいので、今日はもう割りきって考えよう。いつまでもびくびくしててもしょうがない。ここは割り切って行こう。出なければ、いたずらに楓を心配させるだけだ


「あ、真君、あそこで馬に乗せてらえるみたいだよ、行ってみようよ」


早速と言うか、すぐに心配していた瞬間はやってきた。どんどん楓は俺と共に馬に近づいていく


当たり前のように嫌な予感がしたのでそこで俺は馬の手綱を握っていた飼育員に一つの質問をした


「馬って暴れたりしますか」

「人慣れしていない馬ならそういう事がありますが、この馬は毎日人の相手をしていますから、大丈夫ですよ」


しかし、俺が近づくと突然馬が暴れだし、後ろ脚が俺の頭にヒットするのであった。暴れないって言ったじゃん


そして、俺は動物園の入館の時に戻っていた。勿論、手の甲の数字は5から4に変わっている


飼育員さんが悪いのか、はたまた神さまのいたずらなのか、馬は暴れた。よーし、馬には近づかないけど、動物園を楽しむぞ。馬に乗ること断った為、楓は頬を膨らませたが、その後は普通のデートを楽しんだ


しかし、何故だろう、その後、チラチラと馬の方を見ていたが、暴れる様子などなかった。何故俺の時だけ暴れたのか、何かあの馬に嫌われるようなことをしたわけでもないのに


何故か、そのことが頭のから離れなかった


そして、3日目が終わる


4日目

友達との約束があり、電車で移動しようと、駅のホームの最前列で待っていたら、電車が来るタイミングで俺は電車の前に飛び出した。いや、押されて飛び出た


「え」


目の前に電車が迫りくるのがすごくスローモーションに感じるがこれが走馬灯と言うやつだろう


そして、30分前に戻された。俺は戸惑いを隠せなかった。さっきは誰かに押されたのだ。誰かに殺されたことになる。手の甲の数字は4から3に変わっていた


今度は駅のホームの最前列ではなく、最後尾に並ぶ。とりあえず、これで殺されることはないはずだ


友達と遊ぶ予定だったが、友達に連絡を入れ、遊ぶ約束をキャンセルした


家に帰った俺は震えていた。誰かに殺されたという事実を俺はまだ信じられなかった。正直な話、自分は平凡な人生を歩んできたつもりである。間違っても誰かに殺されるような恨みを買った覚えはない


今まで神さまのいたずらと思っていたが、今日の事で俺はずっと殺されていたのかと疑問が生まれた


結局、その日、答えは出ず、4日目が終わった


5日目、俺は物理的に離れれば、俺を殺すことはできないと思って、タクシーに乗って逃げることにした。もし、一連の出来事が俺を殺す為であれば、逃げれば何とかなるはずだ。コンビニで貯金を軽く下ろして俺は近くのタクシー乗り場に行った。もし、俺の事を殺そうとするなら、俺を追いかけて来なきゃいけないはずだ


「すみません、都外って大丈夫ですか」

「別に大丈夫ですよ」

「なら、とりあえず、出してもらっていいですか」

「はい、わかりました」


少し走った所でタクシー運転手は申し訳なさそうに話しかけてきた


「県外に行くならすみませんが、コンビニで食事を取っていいでしょうか、ちゃんと料金は止めておくんで」

「わかりました」


適当なコンビニにタクシーが止まると運転手は出て行ったが、考えると俺も食べ物を買いたくなってきて、俺もコンビニ行くことにした。5分程度で戻ってくると2人で談笑しながら、食事を取った


そして、タクシーは走り出した。少しして、タクシー運転手の様子が変になった


「あれ、あれ」

「どうかしました?」

「ブレーキが効かないんですよ」

「え」


まさか、さっきのコンビニでと思ったが、もう止められない、そのままタクシーのブレーキが効かず、赤の信号の道路に突っ込み、横から大きな衝撃が来る。そこで俺の意識は途切れた


家の前に戻る。手の甲の数字は3から2に変わっていた。もう俺にとっては恐怖の数字だった。そして、俺は確信してトラックで挽かれたのが偶然だと思ったが、人為的に引き起こしたと


殺人犯は俺のことをついてきていたことになる。これでは俺がどこに移動しようが無駄と言うことになる。そう思うと俺はもう家から移動しようという気が起こらなくなってしまった


それから、一日中俺は家にいた。5日目が終わる


次の日も俺はずっと家にいた。昨日の事から、移動はダメだと思ってからは家から出るのをやめた


「なんだ、この匂いは」


なにか、嗅いだことがあるような匂いがしてきた。でも何処で嗅いだかわからない。

そして自分の中の警報がやばいと言っている何がやばいのかはわからない。とりあえず、電気をつけようとして、爆発が起こった。爆発は起ったが、即死ではなかったのか、少しだけ意識があった。そして、俺は匂いの正体を思い出した。調理場で使っているプロパンガスの匂いだと言うことに。すぐに煙を吸い意識が朦朧として俺は気を失った


30分前に戻った俺は思わず、家を飛び出していた


もう俺は家にも入れないのか。そんな気持ちを持ちながら、とりあえず、トボトボと歩いていた。俺はまた殺されてしまう不安と果たしてこの殺しに終わりが来るのか不安で胸が押しつぶされそうになっていた


「あれ、真君、どうしたの?」


そこで聞こえた声は俺にとってはある意味あの天使より天使の声に聞こえた


「かえで―」

「そんな声だして、本当にどうしたの?」

「こ―、いや、家に入れなくなってな」


一瞬、殺されそうなんだと言いそうになったが本当のことを言おうか迷ったが言わない方がいいと思ってとっさに嘘をしまった


「それなら、今日は私の内に泊まる?」


その言葉にどうするか、迷う、果たして犯人は楓が居て、俺を殺しに来るかという所になる。楓が巻き込まれるのは避けたい事態だ。しかし、1日1回、死ぬ現象と言う制限を逆に考えるとこれ以上は何も起こらないとも解釈できる


半分は賭けだったが、俺は楓の家に泊まることにした。2から1に変わった数字を眺めて明日どうなるのか不安で一杯なになった


俺は楓の家で寝ている中、俺が殺される理由を考えていた。俺に全く理由を見つけられなかったが、一つ思いついた。楓だ。楓と付き合っている俺を殺したいのだ。それしか今の所思いつく理由がなかった。しかし、いったい誰が、俺を殺したいと思っているのだろう。正直、楓を好きな人と言う括りだけならば、ごまんと容疑者が居る事になる。しかも俺を殺すのに俺が偶然死んだような方法を選んでいる。姑息な奴だ。次こそは、正体を掴み何とか逃げ切らなければ、俺の人生が掛かっている


そして6日目が終わる


7日目、朝早く目覚めた俺は、お礼の置き手紙を書き、楓を巻き込まない為にも早めに楓の家を出た。犯人が偶然な死を装うつもりなら、そのチャンスが無ければ、相手は何もしてこないということになる


それを元に考えて行動すれば、何も起こらないはずだ


移動を最大限、警戒した。基本的に歩いて移動し角を出る際は必ず、カーブミラーを使い、車が来ないことを見て道に出た。そうして到着したのは、大学だった


大学ならば、大勢の人が居て、研究の為、人が夜遅くまで残っているのでずっとここにいても怪しまれない


ある意味、根気との勝負だ。幸い、食事やトイレの心配はない。しかし、ある意味歩いている全員が容疑者となると気が滅入ってしまいそうだ


食堂で食事をしている途中、夜は大雨になる予報だと言っていた。不安要素はどんどんと増えていく


昼を過ぎて少して、一人の人物が俺を訪ねてきた


「見つけた、真君、何で朝は急にいなくなっちゃうの」

「それは事情があってだな」

「何その事情って?」

「後で説明するから、今日の所は帰ってくれ、楓」

「なによ、それ」

「この通りだ、頼む」

「む――、後でホントに事情を聞くからね」


楓は心配して来てくれたようだが、逆に俺が心配になってしまうので帰ってもらった。俺が犯人に狙われているとなると楓には近くにはいてほしくなかった。


夜も深まってきて普通の生徒が居なくなってきた。残っているのは何かの研究とかで遅くなっている生徒ぐらいだろう


後ろから突然、俺は襲われた。電気ショック系の何かで襲われたのか、体の自由が効かない。そのまま殴られて俺は気を失った。何か電気ショックを受けて、何かを俺は感じた、しかし、それがないかわ駆らない


体の自由が効かない。どうやら、俺は椅子に縛れているようだ。そしてさらに口にも猿轡がつけられ、声が出なかった


場所は多分、周りの様子から誰にも使われてない空き教室だと分かった


そして、目の前には俺を気絶させた本人が居た


「ふ――ふ――」

「おっ起きたね、何か、言いたいようだけど、今から死ぬ人間から何も聞くつもりはないよ」


誰かわからないが顔は覚えた。これで何とか逃げ切ればいいはずだ


「でも何だろうね、ここ数日、僕が君を殺そうとしたら、ことごとく君は避けていくんだよね、ま、今から殺すから、どうでもいいか」


その発言からこいつは狂っていると思った。そんな中、俺は首に犯人が持っていたナイフを突き立てられた


そして、いつもの通り30分前に戻った。しかし、そこは先ほど縛れていた椅子の上だった。これは気絶させられている間に30分以上俺を放置したと言う事だろうか。冷静に判断をしているが今、物凄く不味い。今ここに犯人がいないがもし戻って来たら、俺は直ぐに殺されてしまうだろう。なんとか、今すぐここを抜け出さないといけない


手の数字は0となっていたもう後はない。腕時計を見ると今は23時後、何で犯人がこの時間まで俺を殺さなかったのが少し気になるが、今はそれどころではない


とりあえず、できることをしてみようと腕や足を動かしてみる。がしかし、しっかりと椅子にガムテープで縛れている。だめだ。腕と足は外せなさそうだ。唯一の希望と思えるのはさっき刺されたナイフが目の前にテーブルに置いてあることだろう。椅子は動くのでそのまま椅子ごと移動した


後は体でぶつかってテーブルを揺らして、ナイフをキャッチすればいい。簡単に言ったが結構むずい


何でこんなスパイ映画みたいにことをしなければ、いけないんだと嘆きつつ、何とかナイフをつかみ取った


これで犯人が来るまでとの時間勝負だ。何とか片手でガムテープを外すことに成功する。そして、他のガムテープもすぐに外す。自由になってすぐにここから出て行こうと思ったが次の日まで後、一時間なので閉じこもるのもありだと思った。下手に逃げて、捕まったらシャレにならん


そういう事で、とりあえず、入り口を椅子や机で塞ぐ。これで後は一時間が過ぎたら、俺の勝ちだ


しばらくして、ガタンと音がした


「あれ?あかないな~」

「残念だったな、お前は俺を殺せないぜ」

「何で僕が殺すことをしってるの?まぁ、君は出て来なきゃいけないんだけどね」

「はぁ、何言ってんだ、出るわけねぇだろ」

「出なくちゃいけないんだよねぇ、君は携帯持ってないでしょ」


犯人にそう言われ、ポケットを探る、確かにそこに携帯はなかった。


「だから、なんだって言うんだよ」

「だからお前は、そのままだと飢え死にする上に、さらにこの僕が持っている携帯で楓ちゃんを呼んだから、君は絶対そこから出なくちゃいけないんだよ」

「なに、お前、楓は関係ないだろ」

「安心しなよ、本当に今呼んだばっかりだから、ここまで30分ぐらいは掛かるだろうさ、それまでに君が出て来なったら、知らないけどさ」

つまり、簡単に言うと自分の命か、楓の命か、選べってことか。

「まぁ、少し時間はあるからさ、じっくり考えなよ」


犯人は余裕そうなに口笛を吹いている。思わず、悪態をつきそうになるが、思いとどまる、怒ってもいいことはない。今こそ、冷静にならなければ、考える時間はある


20分後


外では予報通りの土砂降りの雨が降り出していた。雷鳴も響き始めていた


まずは椅子で窓を思いっきり割る。ここは四階だが壁を伝って降りられないことはない。素早く窓の外に出る。豪雨とも言える雨に体を打たれるが気にしていられない


そのまま排水管を伝い下に降りる。しかし、降りた先には、犯人が居た。あちらもずぶ濡れではあるが、雷鳴で光った瞬間、何かを持った姿が浮かび上がる


「なっ」


さっきまで廊下でお前の鼻歌が聞こえてきたじゃないか。何でそこにいるんだ


「そうくるよね~」


パンっとそこで乾いた音が鳴る。なんの音か、分からなかったが、腹が熱い。手で触ってみるとそこからは血が下たち落ちていた。何をされたか、わからなかったが、やばいと思い、すぐさま、近くの壁に隠れる。銃なのかと思ったが、すこし違う気がした


痛い、その感想しか、出てこなかったが、まだ、走らなければいけない。意を決して校舎の入り口まで走る


何故か、校舎に入る間は撃たれなかったが、そんなのには構っていられない。中に入り、とりあえず階段を上る。恐らく、血の跡がついている為、追ってくるだろう。そのため俺、必死に走るしかなかった


屋上まで駆け上がる。医療には詳しくないが腹から出ている血の量はあまりよろしくないのは自分の体なのでわかる


屋上に着くと置いてあるベンチで入口を塞ぐ。しかし、あまりしっかりと入口を塞ぐことが出来なかった為、入って来られるのも時間の問題だろう。俺も血が足りないのか、なんだか体の力が抜けてきた


最後の力を振り絞って、ゆらゆらと揺れながらも屋上の入口から離れる


離れた所で扉が壊される


もう俺には動く体力は残されていなかった。そこに犯人がゆっくりと歩いてくる

「全くてこずらせるね~」

「殺されると分かって、素直に応じる奴はいないだろ、馬鹿が」

「確かにそうかもね、この3Dプリンターで作った銃もなかったら、君を殺すの、手間取ってたかもね」


だからか、連射しなかったのはそういう事か。今更、そんなネタ晴らしはどうでもいい


「なぁ、一つ聞いていいか、今何時だ」

「殺されると分かって今更何を」

「死ぬ前の最後の願いと思って答えてくれよ」:

「今、丁度、0時を過ぎた所だ」

「なら、この勝負俺の勝ちだよな、神さま―――」

「何をわからないことを言って」


その瞬間、真の言葉に答えるように


「そこは俺が過去に立ってた場所なんだよ」


犯人に雷が落ちた


雷は俺に感電することもなく、犯人だけに落ちた。それを確認すると気が抜け、俺は意識を失った


「ん」

「あ、起きたー、よかったよ―――」


ここは病室のようだ。どうやら助かったようだ


電気ショックで気絶した際、俺は思い出したのだ。一番最初に死んだのがあの犯人に追われた後、屋上で雷に打たれたことだと。今回は逆にそれを利用したってことだ


楓に聞いた所、あの犯人は前に人工呼吸で助けた人だそうだ。俺の身近な人ではなく、ひとまずは安心した


そんなこんなで俺の神との勝負は幕を閉じた


「最初、神さまが間違って雷を落としてしまったのはナイショです」


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死に戻りを与えられた俺は7日間、死ぬ運命から逃げる。 スリーユウ @suri-yuu

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