第7話 二度あることは……


「えっと、これで何回目だっけ?」


「朝、昼に続いて三回目だな」


「一応話を聞こうか?」


 五時間目が終わった後の休憩時間、六時間目の授業が移動教室なので皆がぞろぞろと教室を出る。そのタイミングを見計らって、俺は本日三度目のアプローチを小南に行おうとしていたが、そろそろあっちも適当になっていた。


「想像通り、付き合って欲しいという話なんだが」


「想像通り過ぎて、もうちょっと捻ってほしかったと思ってしまったよ」


 二人で並んで歩きながら、目的地へと向かう。移動教室の最中に告白とか放課後の帰り道に振ると似たようなことしてるな。


「そもそもどうして急に告白なんてしてきたわけ?」


「え?」


 前の方を見ながら、小南は少々真面目なトーンで聞いてきた。


「あれでしょ、彼女いたじゃない。由衣香ちゃん」


「ああいたね。い・た・ね」


「んんー、含みのある言い方。あ、あれか、さては振られちゃったのか」


「言いづらいことをズバッと言うなお前は」


「まあまあ。それで? 振られちゃったから新しい彼女をすぐに欲しいっていうタイプでもないように思うけど。桜木は意外とそういうタイプだったのか?」


「別にそんなんじゃないけど……」


「じゃあなに?」


「……実は――」


 別に隠すことでもないし、ここまで巻き込んでいるので聞かれれば言うしかないかと、最近あった出来事を俺は簡単に説明した。小南は「バカだなあ」なんてことを言いながらも、最後まで話を聞いてくれた。


「それで私を選ぶとは、中々お目が高いね」


「だろ?」


 でもなあ、と小南が呆れたように言う。


「奏乃が言いたかったのはそういうことじゃないと思うんだよ」


「はあ。じゃあどういうこと?」


「それは私の口からは言えませんよ」


 ふっふっふっと、小南は含み笑いを見せた。


「この秘密が明らかになるときはいつかくるよ」


「いつかって言われてもなあ」


「そのときが、桜木の人生が変わる瞬間かもしれないね」


 ケタケタと笑いながら、小南は思い出したように声を漏らす。


「そうそう、そう言えば一応答えとこうか? 桜木の三度目の愛の告白の返事」


「ああ、頼む」


「だめです」


 両手でバッテンを作りながら、優しい口調で言うのだった。

 ……分かってたけどね。

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