第5話 小南美波
俺の家から大幕高校までは徒歩で二〇分程度。当初は自転車で通う予定だったのだが奏乃と一緒に登校することになり、俺も徒歩で通うことにしている。なぜなら、奏乃は自転車に乗れないからだ。
徒歩圏内で通えるというのが、俺が大幕を選んだ志望理由の一つである。
大幕高校を選んだことに後悔はない。なぜなら、そのおかげで初彼女となった浅野由衣香に出会うことができたのだから。また同時に振られることになるのだが。
だけど、出会ったのは何も由衣香ちゃんだけではない。この大幕高校に半年以上通うことで、俺にはそれなりに仲のいい友達ができた。
その中の一人が、小南美波である。
「おっはよ、お二人さん! 今日も仲がいいネ!」
俺達が教室に入ると、それに気づいた女子生徒がてててと駆け寄ってきた。
その女子生徒こそが、小南美波。
女子バスケ部に所属するスポーツ少女。体育会系故か髪はショートカット、笑顔の眩しいみんなの人気者だ。胸は大きいとは言えないが、スポーツをしていることでボディバランスは整っているのでスタイルがいい。
席替えで席が近くなったことで話すようになったのだが、気さくでいいやつだということを知り、今では普通に話すようになった。
「おはよ、美波」
奏乃とも仲がいい。
「奏乃は相変わらず可愛いなあ。抱きつきたくなるぜ」
言いながら、奏乃に抱きついて胸に顔を擦り付ける。なにそれ羨ましい。
「もう抱きついてる……」
「おい、小南」
奏乃に抱きつく小南に俺は声をかける。ぴたっと動きを止めて俺を見上げた小南は不思議そうな顔をしている。
「どったの?」
「俺と」
ごくり、と溜まった生唾を飲み込む。そして、意を決して言葉を発する。
「付き合ってくれ!」
「うーん、むり」
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