第14話 おかしな友

 外に出ると、すでに陽は落ち、あたりは暗くなっていた。

 建物の前にエンニオが立っていた。キートンの姿を確認すると、よおと手を挙げた。


「そこでずっと待っていたのか?」とキートンは言った。

「いや、そういうわけじゃないが、そろそろだと思ってな」

「そうか」


 キートンが歩き出すと、エンニオも横について歩き出した。ちらちらとキートンの表情を窺っていた。エンニオらしくなかった。いつもなら、言いたいことや訊きたいことがあれば、ずけずけと言ってくるのに。


「どうしんだ」とキートンは耐えかねて訊いた。

「あ、いや。特に意味はないんだ」エンニオはそう言うと、「彼女とは楽しく話せたか?」


 キートン笑うだけでなにも答えなかった。エンニオは言った。


「彼女は、お前のことを怨んだりしているわけじゃないんだよな?」

「なんだいきなり。そんなこと俺には解らないよ」

「それもそうか。お前も、あの娘(こ)に含むところは何もないんだよな」

「俺はなにもない」

「そうか。安心できたよ」

「安心?」

「ああ。じゃあな」


 エンニオは手を挙げると、足早に去っていった。あの蜘蛛と同じく、目的を持った足取りだった。

 変な奴だ。キートンは心の中でそう呟いた。

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