第1話 帝都
一年ぶりの帝都であった。キートンは帝都(まち)を歩いていた。
道路は舗装され清潔感があり、ゴミも落ちていなかった。民家のほとんどがオレンジの屋根をして、統一感があり美しかった。色合いも良かった。煙突から出ている煙もまた、空気を汚す代わりに味わいをもたらしていた。見上げれば、帝都の真ん中にある背の高い城も拝めれた。
人々にも活気があった。忙しなく人々は行き交い、馬車も良く通る。子供の元気な声もあちらこちらで聞こえていた。屋台を出している商人は、それらの活気に負けぬよう声を張り、人々の注目を集めていた。
帝国は今、非常に潤っていた。魔国の国土を手に入れ、不法な関税をかけ着実に儲け、ヒルのように魔国の血を啜っていた。奴隷貿易の方も上手くいっていた。
だから、特に帝国の中心である帝都は非常に潤っていた。金が湧き出てくるのだ。建国からこんにち至るまで、今がもっとも帝国は肥えていた。帝国にとっては華の時代といっても良かった。どれもこれも、魔国を下したからである。
だが、裏道を抜けれていけば帝都にもスラムはある。ストリートチルドレンもいる。幼くして犯罪に手を染めているものも少なくはないだろう。綺麗なところはとても綺麗だが、汚いところは汚い。狼もいれば食われるだけの豚もまたいるのだ。
けれど誰もが言うであろう。ここはいい帝都(まち)であると。
キートンはどうも帝都を好きそうになれそうになかった。何故だろう? うるさいのが、駄目なのだろうか。元々、帝都出身ではあるが、子供の時からその気持ちは変わらなかった。田舎暮しというのが、似合っているのだろうかと思った。人々の活気というのも、言い換えれば雑音である。
キートンは屋台でリンゴを一つ買った。
だが唯一、リンゴの味だけは好きだった。他の果物は特出するところはなかったが、リンゴだけは違った。だからリンゴ酒(シードル)は格別だった。帝都に来れば、キートンは必ずシードルを飲んでいた。
シードルに酔う前にまず、キートンは城に向かった。
近づいていくと、ますます城の威圧感が増した。色は白銀で金の装飾も見られた。背の高い城は背の高い城壁に囲まれ、その力を誇示していた。屋根までも鋭くとんがっている。この城は、帝国の力の象徴でもあった。
キートンは城門に近づいて行った。城門の前には鋼鉄の鎧をつけた男が立っていた。あれは騎士団の鎧だった。一般の兵よりも金がかかっているのだ。
男が手を挙げ、こちらに近づいてきた。キートンも右手を挙げた。
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