生涯

@PIRORONIA

飛び降り自殺

私は、もう何度とこの屋上に立っている。

フェンスを乗り越え、あと一歩足を前に出せば生涯の幕を下ろすことが出来るはずの、わずか1mあるかないかの場所で、ただ1人恐怖していた。

言っておくが私は自殺志願者ではない、ここに来たのも、私の意思ではない。


時間もあまりないだろう。先にやることをやっておくとするか。

気になることは多いと思うが簡単な自己紹介から。

名前は鈴木克也、今年で37になる。

妻と2人の子供を持つどこにでもいるようなサラリーマンだ。

本来なら、通行人の中の見向きもされないような、取り立てていい所も悪い所もない人間だ。

それ故に、辛いことはあれど、=の幸せが家に帰れば確かにあった。

自殺する理由などあろうはずもない。

ただ、なぜ私がこの状況に置かれているのかは知っている。


この世界には、私が知っている以上の世界は存在しない、いわば箱庭。

そしてここにいる理由もわかる。


それはあなたがこの物語を読んだからだ。


私は作者に作られたキャラクター。その行動や人生は全て作者に創作されたもの。

それに抗うすべは私には無い。

そして創作された私が行動を始めるのは誰かがこの物語を読んだ時。

あなたを恨んでいるわけじゃない。ただ1つ、願いを聞いていただけるのだとしたら

もうこの先を読まないで欲しい。

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この日、1人の男がビルから身を投げた。


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