第15話 その夜


『ゆーきやさん、構ってくーださい』

『早速か。受験勉強の休憩時間ってことでいいんだな?』

『勿論です。陽嶺高校行けなかったら何の意味もないですからね』

『それならいいが。そうは言っても長々と時間は取らんぞ』

『分かってますってば、雪矢さんはウチの家族より過保護ですね。もしかして愛、芽生えちゃってますか!?』

『おやすみなさい(クマの鼻提灯スタンプ)』

『早いです! 夜はまだまだこれからですから!』

『はいはい。前は何の話してたっけ?』

『勇者って本来の意味よりいろいろ抱えすぎじゃない?、って話でした』

『それか。実際そうだしな、勇気ある者ってのが本来の意味だし。物語だと飛躍しすぎなんだよ、なんで魔王を倒しに行かなきゃならないんだか』

『だからこそ誰でもなることができるという締めが良かったですね、寝心地もよかったです』

『綺麗事だと言われたらそれまでだがな』

『むう、雪矢さんがそう言ったくせに』

『起承転結として落としただけだ。現実なんて修学旅行で教師の目をかいくぐって女子部屋行った奴が勇者扱いされるんだぞ?』

『それは、確かに勇気ある者なのかもしれませんが』

『勇気がどのポイントにかかってくるか、それ次第で偉大にも陳腐にも変わるってことだ』

『なんだかんだ深い話にしますよね、雪矢さんって』

『うるさい、ただ話を締めただけだ。いちいち僕を上げようとしなくていい』

『うーん、本気でそう思ってるんだけどなぁ』

『で、今日はしたい話でもあるのか?』

『そうそう。二人三脚の件、明日お兄ちゃんに戦いを申し込むって言ってましたけど、具体的にはどうするんですか? 普通にお願いするだけ?』

『お馬鹿さんめ、そんなことしたら抹茶を強請られてしまうだろ』

『抹茶……?』

『今回は女子生徒も巻き込む案件。ただ頼めば雨竜側でややこしいことになるのは目に見えてる、それを理由に断られたんじゃ意味なし。だからこそ、ある程度のエンタメ性が必要になるわけだ』

『つまるところ、雪矢さんは何をされると?』

『――――――――』

『……えっ、本気ですか?』

『僕はいつ何時でも本気だ』

『いや、でもそれすごく怒られるんじゃ?』

『まあ前回似たようなことしてしこたま怒られたな』

『ええ……』

『だが、雨竜は乗らざるを得ないだろ?』

『間違いなく乗りますね、それなら女の人にも声を掛けやすいでしょうし。何より楽しそう』

『よし、明日決行だ。雨竜への喝はそれ以降で頼むぞ』

『ふふ、雪矢さんのおかげでますます陽嶺高校に行きたくなりました』

『はっ? 今のやり取りのどの辺が?』

『全部です。そういう面白いこと、わたしが入学してもやってくださいね?』

『僕にメリットがあればな』

『はい。明日のお兄ちゃんの反応楽しみにしておきます!』

『くく、これでまたおっぱいへ一歩近付く』

『それは完全に阻止します』

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