*5話 3ユニオン合同のチャレンジ③ 現在の実力確認、そして行動開始!


 休憩スペースには、いつの間にか装備を整えた「3ユニオン合同」の面々が集結している。今は各自がお互いの装備を確認したり、台車の上の搬入物資を確認したりしている。ちなみに、チーム岡本の台車は俺の座っていたところにある。ただ、中身は1泊2日分の食料と水のみ。どこぞの不良中年CMBユニオンのように、5Lのペットボトル焼酎を6本も積んだりしていない。


「全員揃ったみたいだし」

「そろそろ行きますか?」

「よくってよ!」

「じゃぁ」


 と、ここで、加賀野さんや岡本さん、月成凛つきなりりん、春奈ちゃん等の声が上がる。「さぁ出発」といった感じだ。ただ、


「あ、ちょっと待って」


 と、制止するのは俺。というのも、ほんの10分ほど前に[GLクラン]が中に入って行ったからだ。流石に10分の間隔で後追いをすると、メイズの中で渋滞してしまう。要らぬプレッシャーはトラブルの元だから「時間調整しませんか?」という訳である。


 結果として、


「ああ、じゃぁ、奥の認証ゲートまで移動して……30分ほど?」と加賀野さん。

「そうだな、30分ほど待機してから入ろう」とCMBのおっちゃん(リーダー)。

「フッ、仕方ないわね」と月成凛。

「了解で~す」と春奈ちゃん達。


 そんな感じで、しばらく待機となった。


 待機中は各自が装備の点検をしたり、雑談をしたりになる。そんな中、俺はハム太がやった【鑑定(省)】の最新状況を頭の中で反芻するように思い出す。今の「チーム岡本」の状況はこんな感じだ。


**********************

遠藤公太(26歳)

種族  人間(男性)

耐久値 232/232

魔素力 220/220

力   11 (x1.43) 

敏捷  12 (x1.42)

技巧  12 (x1.47)

理力  11 (x1.45)

抵抗  14 (x1.46)

修練値 171/871

習得スキル(常時有効型)

・戦技(刀剣)Lv4

・気配察知Lv2

習得スキル(使用型)

・能力値変換Lv4

・隠形行Lv4

・水属性魔法:下級Lv3

武器:[魔刀:幻光Lv3]【切断】

   カタナソード[陽炎]・木太刀

防具:試作乙式5型四肢防護具

   試作丙式3型体幹追加防具

**********************


**********************

岡本忠司(33歳)

種族  人間(男性)

耐久値 315/315

魔素力 177/177

力   12 (x1.49)

敏捷  11 (x1.41)

技巧  11 (x1.42)

理力  10 (x1.30)

抵抗  13 (x1.46)

修練値 67/867

習得スキル(常時有効型)

・戦技(最前衛)Lv4

習得スキル(使用型)

・挑発Lv4

・威圧Lv2

・防御姿勢Lv3

武器:飯田式フランジメイス3号

   (属性石封入型)

防具:試作甲式3型四肢防具

試作甲式3型体幹装甲

飯田式方形ポリカ盾(特)

**********************


**********************

嶋川朱音(23歳)

種族  人間(女性)

耐久値 197/197

魔素力 241/241

力   9 (x1.40)

敏捷  11 (x1.43)

技巧  13 (x1.49)

理力  11 (x1.43)

抵抗  10 (x1.39)

修練値 168/868

習得スキル(常時有効型)

・戦技(弓)Lv4

習得スキル(使用型)

・強化魔法:中級Lv4

・手当Lv3

・看破Lv3

武器:リカーブボウ(38lb)

防具:試作乙式5型四肢防護具

その他:矢筒(属性付与:風属性)

**********************


**********************

飯田翔(26歳)

種族  人間(男性)

耐久値 195/195

魔素力 318/318

力   10 (x1.38)

敏捷  10 (x1.38)

技巧  9 (x1.40)

理力  11 (x1.50)

抵抗  10 (x1.39)

修練値 112/862

習得スキル(常時有効型)

・直感

・魔素力向上

習得スキル(使用型)

・2属性元素魔法(火・風):中級Lv3

・生成:障害物Lv3

・念話(未習得)

武器:ピストルクロスボウ

    飯田式ソードスピア壱式

防具:試作乙式5型四肢防護具

   試作丙式3型体幹追加防具

**********************


 やっぱり、最近変化があったのは装備の面だ。装備に関しては先ほどもちょっと気にしてみた・・・・・・通り、最新の試作乙式5型と甲式3型(あとは丙式3型も)が[メイズハウンドの皮]や[大黒蟻の頭殻]を活用した物になっている。


 ちなみに、これは残念ながら「飯田のオリジナルアイデア」という訳ではない。既に海外で防具や武器に活用した事例があるそうだ。その情報をどこからから見つけた飯田と片桐さんのコミュ障コンビ(カップル)が作ったのが今の防具になる。


 利点といえば、外観は通常の革製品や強化プラスチック製品に見えるものの「メイズ内に持ち込んで[魔素]環境に晒すと強度が大幅に増強する」という性質がある。飯田が言うには「防刃性はおろか、防弾性もあります」ということだ。


 まぁ、実際に防弾性をメインに据えるなら、例えば[メイズハウンドの皮]の場合は内側に弾頭の衝撃を受け止めるセラミックプレートや衝撃を和らげるウレタンフォームなんかを仕込む必要があるだろう。ただ、そこまで本格的に防弾性を必要とする状況にはない(実際に銃で撃たれた経験をしているが、あれは可成りイレギュラーな状況のはず)ので、単純にこれまでの化学繊維系素材や天然皮革を「メイズハウンドの皮」に置き換えるだけで十分に効果が得られるということだ。


 これは[大黒蟻の頭殻]も同じで、削り出し加工されたソレは「艶の無いプラスチック」か「粗いセラミック」、又は(岡本さんに言わせれば)「カニの甲羅」のような質感と手触りになる。しかし、メイズ内部の[魔素]環境下では、セラミックプレートと同程度の硬さを持つという。軽い分だけ[大黒蟻の頭殻]の方が優れているかもしれない。


 こういう感じで、装備類は防具関連で結構変化した。


 しかし、その一方で能力数値的な面では……ちょっと変化に乏しい。


(そういう時もあるのだ。腐らずスキルのレベルアップに励むのだ)


 とは、知った風なハム太の【念話】。まぁ、言っている事は正解なんだろう。


 現時点で(少なくとも「DOTユニオン」としては)、15層よりも深い階層を目指すという積極的な思考は無い。今回は16層へ降りてみるつもりだが、それも月成凛に散々せっつかれて・・・・・・「仕方なく行く」という面が強い。このスタンスを「向上心が無い」と批判するのは「月下PT」の一部の面々・・・・・だが、冷静に考えれば、「全く利点が無い」という答えに達するはずだ。


 俺としては、是非冷静に考えて欲しいと思っている。


 というのも、無駄に深い階層に挑みリスクを冒した挙句に[修練値]が伸び、その結果、浅い階層でのドロップが出なくなる。これでは、[受託業者]として生計を立てる俺達にとって何も良いことが無い。今でも11~14層でなければ満足できる量のドロップが出ないのだから、これ以上深い階層での活動を強いられると収入に響くというものだ。


 ただ、そうは言っても、戦力の増強が安全に直結するのも確か。今の「チーム岡本」は修練値に余裕がなく、新しいスキルを習得して戦力を増強する、というのが難しい状況だ。現に飯田なんかは、随分前に取った【念話】スキルが未だに未習得のままだ。


 その点、ハム太は「既存のスキルのレベルアップを」と言うが、目下真剣に取り組んでいる各自の戦技スキルも「飛ぶ」系が可能になるLv5を前に足踏みしている。こうなると、目新しいスキルを取って「目に見える戦力アップを」と考えてしまうのも確かだ。


 そういえば……この[修練値]の伸びに関して少し疑問があるのだった。今は未だ時間があるから、この際だし、ハム太に疑問をぶつけてみる事にしよう。教えてハムへも~ん!


(「へ」じゃなくて「え」なのだ……で、何なのだ?)


 疑問というのは「[修練値]の伸びと最大値」について。これまでの踏破階層と数値の推移を考えると、[修練値]の最大値はおよ


「基本値100+(踏破階層x50)」


 になっていると思う。


 現状で言えば、[井之頭公園中規模メイズ][小金井緑地公園メイズ][太磨霊園メイズ]の3か所で15層を経験しているので最大値は、


「基本値100+(15x50)=850」


 になる筈だ。しかし、実際には「チーム岡本」全員が860を少し超えている数字になる。数字としては少ないから「誤差かな?」とも思うが、疑問に感じるのは確か。これって、どうなってるの、ハム衛門?


(だ・か・ら! 吾輩、ハム衛門ではないのだ……まぁいいのだ、説明しよう!)


 頭の中では、ハム太が黒板を背にビシっとポーズを決めている光景が浮かぶ。


(つまり、「魔坑渡り」なのだ! 前にも説明した気がするのだ?)


 はぁ? なにそれ? 全然記憶に無いけど……


(まぁいいのだ。ザックリ説明すると、色々な魔坑に入ることで、その階層の最大修練値を超えることができるのだ。例えば、19層相当だった者が20層に挑み、どうにも歯が立たないとする。そんな時、幾つかの魔坑の19層を渡り歩きおのれを磨くのだ。そうすると、修練値の数字が自然と20層相当にまで上昇し、嘗て挑んで歯が立たなかった20層にも挑むことができるのだ)


 ……なんだか都合が良い話? まるで救済措置のような……


(そんな事はないのだ、こちらの世界・・・・・・はまだのんびりとしているが、あちらの世界では魔坑を潰すことが至上命題だったのだ。だから、戦士たちはこぞって魔坑を渡り歩き、力を蓄え、中規模魔坑や大規模魔坑の深層へ挑んだものなのだ)


 ふ~ん……


(まぁ「魔坑渡り」で伸ばす事の出来る[修練値]は1階層分なのだ、だからコータ殿たちの場合は900位が上限になるのだ)


 なるほど……だったら、ギリギリ次のスキルが行けそうだな。


(吾輩としては是非「戦技Lv5」の壁を超えて欲しいと思うのだが……まぁコータ殿次第なのだ)


 う~ん、いずれにしても、一足飛びには出来なさそうな気がするな。


(弛まぬ1歩が明日に繋がるのだ)


 お、意外と良い事言うねぇ。


(今思い付いたのだ)


 だろうね。


*********************


「そろそろ出発しようか」


 と加賀野さんの声が聞こえる。


 いつの間にか30分ほど経過していたようだ。



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