*41話 「15層」の回想
直近の日曜・月曜2日間に掛けては、例の3ユニオン合同活動だった。前回お
結果から言えば、15層攻略は「成功」した。
ただ、その過程は結構
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第1区画はゴブリン系とコボルト系、それにサイズアップしたメイズハウンドが感覚的には100匹前後いたと思う。ただ、誰も正確な数を把握できていない。【隠蔽スキル】を使いまくるゴブリン
そんな第1区画での戦いは、飯田の【生成:障害物】を利用した[飯田式簡易要塞]によって数の脅威を防ぎつつ、防御を固めてモンスターをチマチマと削っていく戦闘内容になった。ちなみに、隠蔽を多用するゴブリンHだが、飯田の障害物のお陰で背後に回る事が出来ず、只「隠れているだけ」の存在となり、メインの戦闘には寄与していなかった。そんな、
第1区画から次の第2区画へ通じる通路は壁によって塞がれており、その壁が消える条件は「区画のモンスターの全滅」だった。戦闘中に第2区画から増援が来ないのはありがたかったが、壁が消える条件が分からずに俺達はしばらく第1区画で足止めを食うことになった。
ハム太は早い段階から「壁が消える条件はモンスターの全滅なのだ」と推測していた。その時点で目に見えるモンスターとして、第1区画には
こちらとしては、メインの戦闘終了後の「処理」だと思っていた。そのため、警戒は緩くなり、意識は壁際のスライムか、又は通路を塞ぐ壁に集中していた。そこを【隠蔽スキル】を使って潜伏状態だったゴブリンHに襲われることになった。
この不意打ちで、俺達は軽い混乱状態になってしまった。朱音が気付いて【看破】スキルを使ったが、18層相当のゴブリンHは時折朱音のスキルに
結果として、この第1区画で俺達は予想以上に手間取り、1時間半の時間を費やす事になった。こうなって来ると、第2層のモンスターと戦闘中に背後でモンスターがリスポーンしてしまう可能性がある。進むか、戻るか、難しい判断になったが、基本的に「安全重視で無理はしない」という大方針があるので、俺達は一度14層に退却することになった。
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15層への2度目のアタックは、元々ゴブリンHが隠れていることを知っているので、それなりの対応になった。既に「経験済み」という事は何よりも心強い助けになる。「飯田式簡易要塞」を維持しつつ、粗方のモンスターを斃した後は、朱音の【看破】スキルを丁寧に使い、発見次第火力を集中して斃す。この手順でゴブリンHを駆逐し、ようやく第1区画を突破した。ちなみに、この間、朱音の【看破】スキルはレベルが2つもアップした。
続く第2区画は
ただ、実際に戦闘が始まると、モンスター間の連携が全く取れていない事が分かった。
俺や飯田、小夏ちゃんや毛塚さん、あとは工藤杏の【魔法スキル】が炸裂し、そこに朱音を始めとした遠距離攻撃組が追い打ちを掛ける。それで地面に墜落した赤飛蟻は岡本さん達に近接組に次々に仕留められることになった。
ただ、赤飛蟻の排除は上手く行ったが、その後に続く
これまで(14層まで)でも
重装豚顔の硬い守備力の背後から、豚顔SHの発する魔法スキル(火属性や土属性)が飛び、それに豚顔Aの矢が加わる。そんな状況に、流石の岡本さんでも慌てて[回復薬:中]を使用する場面があった。
そんな豚顔集団との戦闘だが、突破口を開いのは……まぁ、俺だった。
戦闘開始後、前列が膠着した時点で【隠形行】を使用した俺は、集団戦から外れると第2区画の壁沿いに後ろへ回り、そこから豚顔SHと豚顔A目掛けて「飛ぶ斬撃」を放ち奇襲攻撃に打って出た。この時、試しに「飛ぶ斬撃」に[魔刀:幻光]の【切断】スキルを併用したのだが、その威力が凄まじかった。
SHでもAでも同じ豚顔なのでタフさは折り紙付き。そんな後衛モンスターを【切断】効果を持った「飛ぶ斬撃」は文字通り両断してしまった。俺の目論見としては、4発ほど「飛ぶ斬撃」を打ち込み、斃し切れない分は接近戦で討ち取ろうと考えていたのだが、結局最初の2発で事は
結果として、前線の膠着は続いたが、後衛モンスターからの攻撃の心配が無くなった俺達側の後衛が威力を発揮し、通常型の豚顔から順に数を減らす格好になる。そして、最後に残った重装豚顔5匹は、近接組が包囲して討ち取った。
思い返してみると、15層の敵は第2層のオーク集団が一番厄介だったかもしれない。
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第3層では、お馴染み(?)
そうなると、何度も対戦している相手なので、相手の手の内はお見通しになる。【幻覚スキル】が厄介なのは間違いないし、ここ一番の攻撃力は苛烈極まるが、その一方で、重装豚顔やゴブリン
しっかり守って、反撃をお見舞いする。この繰り返しで斃すことが出来た。
ということで、昨日17日月曜の17:30頃に3ユニオン合同は「井之頭公園中規模メイズ」の15層を討伐完了した、という訳だ。
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2021年5月18日 朝
「……眠い……」
翌日の朝の感想はこの一言に尽きる。
まぁ、昨日の17:30に15層を終えて、そこから足早に地上に戻ったのだが、自宅マンションに辿り着いたのは23:30だった。そこから、装備品の掃除や洗濯を後回しにして、シャワーだけ浴びて寝たのだけども、6時間も寝ていない事になる。
そりゃ、眠いよ……しかも流石に身体の節々に筋肉痛を感じる。ぬるめのお風呂にじっくり浸かって身体をほぐしたい気分だけど、この後の予定を考えるとそんな時間は無さそうだ。
「お兄ちゃん、はい、コーヒー」
「お、ありがとう」
時計を見ると朝8:00の少し前。何となく点けているテレビでは「お目覚めテレビ」のキャラクターが喧しく時刻を連呼している。ちなみに今日の俺の運勢(水瓶座)は11位で……里奈(天秤座)は12位だった。これだけでフツーに気分が悪い。
俺にコーヒーを淹れてくれた千尋はマンション1Fのコンビニの制服姿だ。最近は横着して自宅から制服で通っている(といってもエレベーターで1Fに降りるだけだけど)。まぁオーナー(コンビニのオーナーで且つマンションの所有者)のお爺さんが千尋に「やたらと甘い」のが理由だ。
そんな千尋は出勤前の会話として俺に話し掛けてきた。
「お兄ちゃんは、今日は?」
「ああ、この後ちょっと出る」
「へ~……里奈さんとデート?」
「ちが――」
と、俺が
「どうした?」
「うん……
戸惑った表情の千尋は、そのまま画面を俺に見せる。俺はそれを覗き込み、書いてある内容に「ん?」と思った。
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