*29話 3ユニオン合同「井之頭公園メイズ」攻略⑨ 14層の北区画
明けて5月10日朝。
10層のベースキャンプを9時に出発した3ユニオン合同は、11層、12層を足早に通過し、13層から本格的な行動に入った。予定では午前中に13層を制覇、その後14層に場所を移し15時前には14層を制覇。満を持して15層へ挑む、という事になっている。
グループ分けは昨日同様、[TM研+脱サラ会]、[CMBユニオン]、[チーム岡本+月下PT]となる。まぁ、これで昨日は上手く行っていたから今更変更する必要はない、ということだ。13層から厄介になるゴブリン
ということで、始まった13層での行動だが、流石に昨日と違いスムーズに進んだ。昨日との違いと言えば、[月下PT]側が中規模メイズに慣れた事。それと、俺が【能力値変換】の
(やはり昨日のコータ殿は随分と全員の足を引っ張っていたのだ)
それを言ってくれるなよ、ハム太さん。昨夜はその反省で眠れなかったんだから。反省しているよ、ホントだよ。
(……8時間もガッツリ寝ていたのだ?)
8時間
などと、(頭の中
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「井之頭公園中規模メイズ」の14層は[DOTユニオン]の活動でも1度だけ足を踏み入れた事がある程度の場所。昨日の目標には「14層を覗いて見る」というのがあったが、それは(俺のせいで)結局達成できなかった。そのため殆どの場所が「未踏破」区画になる。飯田達が持っている[Personal Location System](PLS)にもマップ情報は1部分しか入っていない。
推測するに、構造は階段降りて直ぐの大広間から東西と北に通路が伸びていることから「東区画」「西区画」「北区画」と分かれているのだろう。まぁ、13層の構造と大きく違うことはないと思う。
ということで、14層降りて直ぐの広間で各グループがくじ引きで行先を決める。(ちなみに【直感】スキル持ちの飯田は「くじ引き禁止」「じゃんけん禁止」の取り扱いだ)俺達のグループでくじを引いたのは岡本さん。結果は、
「北区画だな……行った事の無い場所だ、注意して進もう」
という事になった。
果たして14層の構造は、殆ど12,13層と変化が無かった。「北区画」をしばらく進むと大き目の広間に出る。広間からは4つの通路が方々へ伸び、それらの通路は樹形図状に枝分かれしながら奥へ続いているのだろう。そんな推測に疑問が浮かばないほど、似たような構造だった。だから、余り考えることは無く、手前の通路から順に奥を虱潰しにすることになった。
最初に入った通路での戦闘。
まぁ、これまでの経験から、こういう場合、最初に入った通路での戦闘がもっともボリュームが大きくなる。というのも、通路でモンスターと遭遇し戦闘を始めると、直ぐに奥や別の通路からゴブリンや
この時もそんな感じになった。
最初に選んだ通路を、先頭に立って進んでいた「チーム岡本」の前にコボルトリーダーを中心としたメイズハウンド集団20匹ほどが姿を現す。直ぐに戦闘状態に入った。まぁ、この戦闘は【眷属強化】と【統率】を持つコボルトリーダーを真っ先に朱音の矢が射抜いたので、残ったメイズハウンドの処理に難儀することは無かった。ただ、メイズハウンドの集団の中に紛れていたスカウトハウンドが、後方へ逃走。逃走しつつ、例の【遠吠え】を発する。
これが起点となって[チーム岡本]が受け持つ前方側は、ゴブリン集団やメイズハウンド集団が再三再四やって来てはダラダラと戦闘状態が継続することになった。
そして、この戦闘音が
「流石14層だ」と岡本さん。
「ったく、多いですね!」と言うのは俺。
岡本さんが通路の中央に仁王立ちになり、押し寄せるゴブリン
後方でも、[月下PT]が
とはいえ、モンスターの数が多いのは確か。しかも、中規模メイズのこの層では、例のアイツが居る。
「岡本さん! 後ろですっ!」
警告を発するのは朱音。タイミングよく【看破】スキルを発動させた結果、岡本さんの左後方へ忍び寄るゴブリン
「――オンケンバヤケンバヤソワカ、ウーンッ!」
その直後、飯田の【飯田ファイヤ:火球バージョン】がそのゴブリンHに炸裂。バスケットボール大の火の玉は直撃すると小さな爆発と共に燃え上がり、ゴブリンHは吹き飛ばされて壁に激突、確かめるまでも無く絶命している。ちょっとオーバーキル気味だけど、今のは朱音と飯田のナイスコンビネーションだろう。
戦闘は程なく峠を超えた。粗方のモンスターが出尽くしたのか、前後共に増援モンスターが出現する間隔が長くなり、やがて途切れる。こうなると、数の優位を失ったモンスター側の勢いは目に見えて衰え、遂に形勢逆転となる。ここまでくれば、戦いは掃討戦の様相を呈する。奥や別の通路に逃げようとするヤツも居るが、たいていは朱音(や僕っ娘三崎さん)の矢に背中を射抜かれることになる。そして、
「これで最後ですわ!」
「――フゴォ……」
[魔剣:フライズ]で
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「……う~ん……」
場所は「北区画」最後の通路。既に4つあった分岐の内、3つを踏破している。ここまで来ると、モンスターはこの通路の
「う~ん……」
ただ、この最後の分岐通路を前に、先頭を受け持った「チーム岡本」の飯田が立ち止まり唸り声を上げる。
「どうした、
「飯田先輩?」
「う~ん……」
岡本さんと朱音の声に飯田は唸り声を重ねるように答える。もしかして……
「腹痛か?」
「ちっち、ちが……」
どうやら違うようだ。
「なっなな……なんだか……う~ん」
飯田的にこの先に何かがありそうな気がするらしい。【直感】スキル、「何かありそう」なのは分かっても、「何が有るか」までは分からない。実に思わせ振りなスキルだ。
「やめとくか?」
「い、いい、いえ……」
ただ、飯田は岡本さんの言葉に首を振ると、歯切れ悪く言う。
「もしかしたら、15層への階段でもあるのではないですか?」
とは、こちらの異変に気付いた
「すっす、進みましょう」
結局、月成の言葉を飯田は肯定も否定もせず、そんな感じでこの通路を進むことになった。これが、いけなかった(結果論)。
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