*23話 3ユニオン合同「井之頭公園メイズ」攻略③ 12層「東区画」踏破
「アーチャー3匹、ナイトも3匹、後はファイターです!」と言うのは俺の声。それに、岡本さんが「アーチャーのターゲットを取るぞ!」と応じ、「直ぐに終わらせます!」と朱音が不敵な事を言う。
ちなみに飯田も調子を合わせて何か言おうとしたみたいだが、
「カケマクモ、アヤニカシコシアマツカゼ、シナドノカゼトフキハラウラム。オンハヤベイソワカ、バー!」
普段は噛み噛みのくせに、
「――ギョギョ――」
「ギャミャ?」
「ギョェ!」
渦風の中は真空の刃が乱舞する……言い方はアレだが、風のフードプロセッサーだ。中に飛び込んでしまったゴブリンFは全身を
――カンッ、カンカンッ
とここで、風の渦を避けるように射線を確保したゴブリン
「朱音、今の射線で撃ち返して!」
ここで、俺も行動に移る。直ぐ斜め後ろに居る朱音にそう声を掛けると、【隠形行Lv3】を発動。今ゴブリンAが撃ち込んで来た射線を避けつつ、ズタボロになったゴブリンFを無視して、一気に通路を駆ける。狙いは後方に留まっている3匹のゴブリン
「わかりました!」
背後からは朱音の声。ほぼ同時に2度、3度とリカーブボウの弦鳴り音が響く。それに、
「うらぁ!」
と、生き残ったゴブリンFに襲い掛かる岡本さんの怒声が重なる(どっちがモンスターか分からない、なんて口が裂けても言えない)。
それらを背中で聞きながら、3匹のゴブリンKに肉迫した俺は、既に鞘を払った太刀[幻光]を脇構えに付けると、それを一気に振り抜いた。狙いは右端の1匹。
「ギョ――」
初太刀が首をザックリと断ち割る。上手い具合に鎧と兜の隙間を狙う事が出来た一撃は確かめるまでも無く致命傷。残りは後2匹。
「ギョギョ!」
「ギャンギョッ!」
派手に動いた結果として俺の【隠形行】は効果が切れるが、それでも残り2匹の側面を取った優位は変わらない。ということで、続いて俺は左手を突き出し、
「ギョッ!」
【水属性魔法】による牽制を受けたのは左端の1匹。水流をまとも顔面に受けて、兜が吹き飛び3歩4歩と後退する。一方、孤立した中央の1匹へは、右手一本で保持した[幻光]で
ねじり動作が加わった刀身は、これを咄嗟に打ち払おうとしたゴブリンKの剣を
「グギョ――」
仰け反る時には既に絶命したゴブリンKは、首から噴水のように血を吹き上げる。血飛沫は中規模メイズの高い天井に届くことなく陰惨な
「鋭ッ!」
ここで初めて気合を発しつつ、最後のゴブリンKの兜を失った頭部へ大八相から一気に刀身を叩きつける。
「……」
ザックリと額を断ち割った太刀[幻光]は[Lv2]という謎表記(?)の実力を遺憾なく発揮して、ゴブリンの醜い顔面を両断すると下顎の骨すら断ち割って外へ抜ける。断末魔すら許さない唐竹割りだ。これで3匹居たゴブリンKは残らず討ち取った。
それとほぼ同時に、朱音の矢が最後のゴブリンAを、岡本さんのメイスが最後のゴブリンFを、
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一連の戦闘が終わると、その後は床に散らばったドロップを回収する時間になる。[
「[メイズストーン]って結構出ている筈なのに、買取り価格は下がりませんね」と朱音。
「ありがたい話じゃないか」と岡本さん。
「なんだか、使用用途は増える一方らしいよ」と俺。
「うううっちも、すす少ししし仕入れていましゅ」と飯田。
そんな感じの会話を挟みつつドロップの回収を終える。その後は全員で通路の奥を目指すことになったが、この先、同じ通路でモンスターとの戦闘は発生しなかった。ということで、全員で今度は来た道を引き返し、分岐地点まで戻る。そして、残り1つとなった通路を踏破。最後の通路では2度ほど戦闘になったが、既に背後を突かれる心配は無かったので、[月下PT]と[チーム岡本]で交代しながら交互に戦闘を受け持った。
結果として12層「東区画」を踏破した[チーム岡本+月下PT]の一団は12層スタート地点へ戻る。戻ってみるとスタート地点は無人。この時点では他のグループはどれもスタート地点へ戻っていなかった。
時刻は15時過ぎで、12層攻略を開始してからの経過時間は2時間ちょっとだ。体感的にどの通路もモンスターのリスポーンまで30分くらい時間があるだろう。後30分して、その時点で戻らないのなら「ちょっと様子を見に行こう」となるが、今は未だそのタイミングじゃない。
ということで、
「ちょっと休憩ですわね!」
と月成凛が言うように、休憩を取る事になった。
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