*太磨霊園レイドアタック㉒ 変化
[太磨霊園メイズ]15層の戦いは、諸橋班の手榴弾投擲が決め手になって、その後間もなく終息した。最後の手榴弾10発の投擲は
その後は、手負いで後ろに下がっていた残りの
まぁ、手負いの
ちなみに、手榴弾の攻撃を受けた
その後はドロップ品を回収しつつ、体勢を整える。怪我人が出なかった事は
「ドロップ品が思ったよりも少ない」
という点が気になった。
原因は良く分からない。アレだけの数が居たのだし、15層という場所を踏まえて考えればドロップ率は50%を超えてもおかしくない気がする。しかし、実際のドロップは手負いだった
先の
「もしかして、斃した武器が関係するのか?」
という発想になる。これには諸橋班長が少し申し訳なさそうな
「まぁ、これまでの道中で十分に拾っている訳だから――」
「文句を言える筋合いじゃないですよ」
と、岡本さんと春奈ちゃんがフォローする感じになる。一方、月成凛はというと、
「無事に切り抜けただけでも上出来ですわ」
クイッと上げた顎に手をやって、そんな風に言う。その言い方、どうにかならんかね? とも思うが、反面、俺も含めて全員が「もう慣れた」感じなので、彼女の発言は誰にも引っ掛からない。いちいち反応するのに疲れた、とも言うかもしれない。
「皆さんのお陰です、ご協力感謝します」
「いや、まだですよ。メイズを消滅させなくては」
諸橋班長の言葉に俺が提案する格好で、月成の「上から目線発言」は完全に無かった事に。(よく分からんけど)ざまぁ。その後は、残存モンスターを警戒しつつ、15層を先へ進む。その間、ふと見ると、ノーリアクションで発言を流された月成は悔しそうな寂しそうな、変な表情をしていた。
もしかして……「隠れ構ってちゃん」なのか……?
*********************
15層は3つの広間が通路で繋がっている構造だった。これは[小金井メイズ]の10層とほぼ同じ構造だ。隅っこに大型スライムが居るのも同じ感じ。それで、主に魔法スキルを持った面々が、見つける度に攻撃を仕掛けて斃していく。どうもスライムは物理には強いが魔法スキルにはかなり脆弱な感じだった。
ちなみに「ドロップ少ない問題」は一連の大型スライム処理で一応解決することになった。幾つか「レア」と呼べるアイテム類もドロップしたことだし、今後に向けた戦力強化も叶いそうな状況だ。ただ、飯田が持つ【直感】スキルは既にバレているので、これからの「くじ引き」や「じゃんけん」は
そんなこんなで先へ進み、一番奥の広間に到達する。広間の奥の壁には、燭台とも台座とも呼べるような構造物があり、その上には淡い燐光を発した大きなクリスタルが浮いている。これが3度目のご対面になる[
「小金井の時とおんなじですね」と朱音。
「写メで撮ったヤツは消えたんだよね」と小夏ちゃん。
「なんか、書き写してくれって……誰だったかが言ってたな」と岡本さん。
「吉池さんでしょ、国家ナントカ保障局の」と俺。
一方、諸橋班長は、
「これを撮れって事だったのか――」
と言いつつ、ポラロイドカメラを取り出して構える。その後、「記念写真でも撮ります?」という(多分冗談)を言った後に、余り拘りも無い感じでパシャパシャとシャッターを押し始めた。他の面々では、飯田と井田君が律儀にも画用紙を取り出して壁の文字列を書き写そうとしている。
一方、俺の脳内には、
(殆ど同じ物なのだ?)
(いいえお兄様、全く同じではないニャン)
という2人(匹)の【念話】が響く。その内ハム美の言葉に「へ~、バリエーションがあるのかな?」と疑問を持つが、それについては、
(バリエーションの違いじゃなくて、最後の文章が違うニャン)
とのこと。ただ、俺にはサッパリ読めないので何処がどう違うのかも分からない。
(説明するより、コレを
ここでハム美は「コレを見ろ」と言いつつイメージを投射してくる。お陰で俺の脳裏には、例の一部翻訳済みの壁の文字列が浮かび上がるが、その内一か所、最後の方の文章が強調されている。
*********************
――[■不明な文章群■]。
[■不明な文節■]をここに開示する。[■名称か?■]は敵対者ではない。[■不明な文節■]を通して、この地の[■名称か?■]の共存と共栄を求める。
12の太幹、この地は壱の幹。[■不明な文節■]の第一の開示。[■…不明な文章…■]。
・[■名称か?■]播く法は、[■不明な文章群■]。
・魔坑石は、[■不明な文章群■]。
・[■不明な文章群■]。
・[■不明な文章群■]。
次なる開示は[■名称か?■]を
*********************
(前は「後3つ」となっていたニャン。それが今は「後2つ」に減っているニャン)
(もしかすると、その前部分の意味不明な部分は「メイズ」を指した言葉、なのだ?)
(お兄様鋭いニャン! ハム美もそう思うニャン!)
(フフフ、この程度の推測、造作もないのだ!)
(凄いニャン、さすがお兄様ニャン!)
この後、2人(匹)は俺の頭の中で「のだのだ、ニャンニャン」と推論を展開し始める。まぁ煩いが、最近はもう慣れてきたので、
「後2つ」と数が減っている。その前の更に前の部分には「次なる開示」とあるから、あと2つメイズの最奥に到達した時点で、この文章が別の内容に変わるという事だろうか? しかし、変わったとしても、中身が読めなければ意味が……ん? もしかして……
(どうしたのだ?)
いや、ハム太、あの[
(ん~……違うのだ。そもそも
(あのメイズコアから習得できるスキルは【生成:罠】ニャン。レアなスキルだけど、これで解読は無理ニャン)
そうか……思い過ごしだったか。なんだか肩透かしを食らった気分だ。
「よし、写真も撮ったし、仕上げに掛かろう」
少し離れたところで、諸橋班長が区切りを付けるような言葉を発する。
この後、少し紆余曲折したが、結局[
その結果、諸橋班長は[
その後は、お決まりのパターンでメイズが崩壊。視界が暗転し、それが正常に戻った時、俺達は[太磨霊園]の管理事務所棟1Fの物置スペースに居た。時刻は夕暮れ前の17:00過ぎ。外には(何故か)自衛隊の補給輸送部隊の車列が待機していた。
「皆さん、ご無事で!」
という里奈の声が、妙に懐かしく感じられた。
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