*太磨霊園レイドアタック⑲ 初手、全力!
[太磨霊園メイズ]の15層は、降りて直ぐが大きな空間になっていた。その奥の壁に目を凝らすと、
(罠のようなものは……なさそうなのだ)
というのは【鑑定(省)】を用いたハム太からの【念話】。先日の小金井では、罠を見出す前にきっちりと引っ掛かってしまったから、今回は階段を降りて直ぐにスキルを使った、というところ。
ちなみに、
勿論、14層のリスポーンが始まり、階段前で踏ん張る事が難しくなったら、15層に降りて来てもらう事になっている。ただ、
(通路に結界を張ったニャン。リスポーンしても、階段付近にモンスターは来れないニャン)
とのこと(ハム美談)。結界の内側にモンスターが
そもそも[結界]ってなんだよ、と思うが……とりあえず、後ろの心配はここまでにしておこう。というのも、開けた空間の前方には、
「居るな!」
「でも、レッドメーンは居ませんね」
「豚鼻の集団ってところか」
というように、
「弓の威力はヤバイです」と俺。
「先に潰そう」と岡本さん。
「じゃぁ、打合せ通りで」と春奈ちゃん。
「初手から全力、行きますわよ!」と月成凛。
そして、朱音の【強化魔法】と、飯田、[月下PT]のサイドテール女子工藤さん、による【魔法スキル】が、15層の戦いの幕開けを告げるように炸裂した。
*********************
15層の第1広場、スペースは20mx40mほど。陣取っている
「強化魔法、行きます!」
「――オン、アギャナイエイソウワカ、アー!」
朱音がスキル発動を告げる声を上げ、それに飯田詠唱が被る。
そして、【飯田ファイヤー:火柱バージョン】がオーク集団の直ぐ前に出現。これによって、こちらへ向けて駆け出していたオークの集団が、火柱を避けるように左右に分断。その内左側の集団の先頭にサイドテール女子工藤さんの【水属性魔法:下級】による水滴弾が降り注ぐ。2つに分かれた集団に速度差が生まれた。
「弱化魔法、効いて!」
と、ここで[TM研]春奈ちゃんが【弱化魔法:下級】を発動。2つに分かれて向かってくるオーク集団の内、今度は右側の集団5匹に更に速度差が生まれる。
「えええんっきょっ距離は、ああ朱音ちゃんに!」
ついで、飯田の聞き取りにくい指示が出る。まぁ、事前に打ち合わせているから、ここら辺は大丈夫。ちなみに指示の内容は「遠距離組は攻撃対象を朱音の矢に合わせて」といったところ。朱音は
「弓持ちの豚鼻へ!」
役割を自任している朱音は、そう言いつつも、既に
「小銃手、遠慮なく斃すまで――てぇ!」
と諸橋班長の号令。それに応じてバンバンバンと立て続けに(長めに)銃声が響いた。
その結果、一連の遠距離攻撃を集中されたオーク
「来るぞ!」
と誰かの声。その狙いは……朱音か!
オークAの放つ矢は、ゴブリンAとは比較にならないほど鋭く速く飛ぶ。その恐ろしい鏃が狙うのは、ターゲットリーダー役の朱音。それだけとっても、奴らは馬鹿じゃないらしい。だが、感心している場合でもない。俺は「[力]の半分を[敏捷]へ」と念じつつ、床を蹴る。
「キャッ――」
短い悲鳴と、
――キ、キンッ
と2つの音が重なる。結果、太い矢2本は朱音に届く寸前に、俺の太刀[幻光]によって叩き落とされた。朱音は、
「無事、だな!」
「はい!」
無事ならヨシ。
「敵のアーチャーを頼むぞ!」
「はいっ!」
俺の声に、朱音は妙に興奮したような赤らんだ顔で答える。まぁ、大丈夫だろう。ということで、俺は飯田に次の行動をお願いする。
「飯田、火壁で分断を――」
「ハライウチカク、ムカイビノエン、オンマリシエイソウバカ、マー!」
は、反応早いね……。でも、ドヤ顔でコッチを見るな。褒めにくくなる。
「遠藤さん! お先に失礼しますわ!」
飯田の反応の早さとその後のドヤ顔に、反応に困っている俺に、月成凛の声がかかる。それで振り返ると、彼女は2つに分断されたオーク集団の内、右側5匹に肉迫していく所だ。申し合わせた通りの動きだが、単身突出はマズイと思うぞ。
「ちょっと待て月成、今行く!」
俺はそう応えると、
*********************
15層第1広間の戦いは、俯瞰すれば炎の壁によってオークの集団が分断され、
対して、俺達の方は、数が多い左側へは岡本さんと井田君、[月下PT]のフツメン地味男の五味君といった盾持ち3人(と自衛隊の至近戦闘手から盾持ち2人)が回り、それに上田君や神宮寺君、諸橋班長といった近接攻撃担当が続いている。
一方、数が少ない右側に対しては、俺と月成凛の2人で当たることになる。一見数が少なすぎる気がするが、いざとなれば右側に寄っている遠距離組の援護を受けられる配置。それに、数を少なくしているのは、俺と月成の攻撃方法を充分に発揮するためでもある。
「遠慮なく行くぞ!」
「よくってよ!」
俺の発した気合に月成が答える。いや、別のお前に言った訳では……と思いつつ、もう面倒なので、それは忘れて【能力値変換】「4分の1回し」に取り掛かる。
前方の視界はクリア。見事にモロ出しな豚顔5匹しか見えない。魔素力は十分。これまで温存してきたし、いざとなれば[魔素力回復薬]のストックも4本ほどある。ということで、俺は「飛ぶ斬撃」を発動。
「いやぁ!」
息を詰めてから発した気合に乗せて、太刀[幻光]を横薙ぎに一閃。ズバンッと空気を切り裂く破裂音と共に、不可視の斬撃が刃線から飛び出す。そして、
「フギュゥ!」
「フゴォッ!」
近づいて来たオークの先頭2匹の腹から胸に掛けて、真一文字に裂傷が走り、驚愕の声と血飛沫が飛び散る。
「わたくしも!」
とここで、月成凛も自慢の[魔剣:フライズ]が持つ【飛斬】を解放。こちらは単純に魔素力を消費するだけで「飛ぶ斬撃」を放つことが出来る剣だ。一発の威力は落ちるが、魔素力が続くだけ連続して斬撃を撃ち出すことが出来る。
その結果、たちまちのうちに、オーク集団の先頭2匹が血塗れになる。更に、後続の3匹も戸惑ったように前進する足を止める。この場合「立ち止まる」というのが最も悪い選択だが、流石に
ただ、オークの特徴はそのタフさにある。
【能力値変換】「4分の1回し」の2セット繰り返し、都合10発の飛ぶ斬撃を加える。その結果、目に見えてオークの動きは鈍くなっている。だが、まだ、完全に息の根を止めた訳ではない。トドメが必要になる連中だ。
「月成、俺に当てるなよ!」
「わ、わかってますわ!」
俺は一言月成に
――【隠形行Lv2】――
って、このタイミングでレベルアップかよ。と思いつつ、気配を消した俺は「どうか月成がコッチに撃ってきませんように」と願いつつ、血塗れになったオーク集団に近づく。
結果、今回ばかりは月成も誤射を控えたようで、一時的に魔剣フライズの【飛斬】が止んだ間に、俺は5匹の首を刈り取る事が出来た。しばらく、とんかつや豚骨ラーメンは食べたくない気持ち。
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