*太磨霊園レイドアタック① 行動開始
報道陣の注目が集まる場所に女性メンバーが多い[
作戦行動開始前の状況に、俺はそんな風な
「そっちは太磨霊園なのか、こっちはCMBの人達と小金井緑地公園の残存モンスター掃討だよ」
とのこと。ちなみに、小金井緑地公園の方にも他の[受託業者]が集まっているらしい。ただ、[小金井メイズ]消滅に寄与したユニオン・PTの内、あちらの方には女っ気のない面々が集められたとのこと。それで、当然の如く、
「マスコミ? そんなの居ないぞ」
ということだった。小金井緑地公園の方は依然として報道陣のアクセスが制限されているらしい。因みに、[赤竜・群狼ユニオン]については、
「来ないらしい。その代わり下っ端を送り込んで来たぞ、[群狼第3PT]だってさ。なんでも小金井メイズに避難していた連中らしい」
ということだった。そういえば、救出作戦の場面では、助け出される面々の顔を見ている暇はなかったが、確かに避難者の中に[受託業者]が混じっていたと聞いた記憶がある。大方「クランの上位PTに迷惑を掛けた」とかの理由で無理矢理送り込まれたのだろう。
「ああ、そう言えば岡本さんは知らないかもしれないが、前に調布メイズで一緒になったヤンキーPTの連中もいるぞ『コータパイセンによろしく』だって」
う~ん、
「行きがかり上[群狼第3PT]とヤンキーPTの面倒みながら、ボチボチやることにするよ。じゃぁ」
電話はそんな感じで切れた。[脱サラ会]というよりもリーダーの加賀野さんはどうも面倒見が良い人物な気がする。そういえば調布メイズの時も、出しゃばったヤンキーPTにキッツいお説教をしていたのは加賀野さんだったからな……。若くて危なっかしい連中を放って置けない性分なのだろう。
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太磨霊園・レイドアタック
ネットの掲示板では、今回の作戦をそういう風に呼んでいるらしい。開始前に飯田に教えてもらった。既に関連するスレッドが幾つも立てられて、中には「里奈タソを守るPTの板」や「里奈様の武勇を語るスレ」などもあって、腐臭を放っている。中身を見たいような、見たくないような……でもやっぱり気になるから、終わったら見てみよう。
ちなみに「レイドアタック」という言葉の意味は(飯田曰く)どうもネットゲームで使われる用語のようだ。大勢が参加して目標を達成する、というような意味合いらしい。そういう意味では、まさに今回の作戦は「レイドアタック」なんだろう。というのも、今日の作戦参加人数は合計157人になっている。凄い人数だな、と思う。
その内、補給輸送部隊の直掩に回る俺達を除く、残りの140人は、ほぼ4等分に分かれて霊園内の東西南北を受け持つことになる。
作戦行動の順序は、まず北正門から霊園内に進入し、中央を通る園内巡回バス通りを南下する。そして、霊園のほぼ中央に位置するロータリーと慰霊塔に到達後、東西南北4つに分かれて、
一方、全体指揮(?)という名目で彼等に同行する里奈(と[管理機構]の男性職員3人)は、この中央ロータリー内にある慰霊塔に陣取る事になるらしい。モンスターが
一方、俺達が直接護衛する補給輸送部隊は、里奈達が園内に進入してから30分後にスタートする。同じ北正門から進入し、バス通りを通って南の管理事務所棟を目指す、というルートになるのだが、この経路は本作戦の開始当初から変わらないという。
補給輸送部隊の車列は2台のトラックと2台の軽装甲機動車で構成されているが、今日は俺達が乗る用のトラックが1台追加されて、全部で5台の車列になっている。一応自衛用の武装として、各軽装甲機動車のルーフには車載機関銃(飯田曰くMINIMI-LMGというらしい)が1丁ずつ有る。ただ、ご多分に漏れず実際に撃つことは出来ないらしい。というのも、
「この太磨霊園という場所は周囲に比べて少し小高くなっているから、見晴らしと見通しが良過ぎて――」
下手に発砲すると流れ弾がどこまで飛ぶか分からないから、射撃は原則不許可だそうだ。しかも現場での暴走を最小限に抑えるために弾薬は100発分しか搭載していないという念の入れようだ。ちなみに、この説明をしてくれた補給輸送部隊の責任者は、
「護衛が君達だと聞いて安心しているよ」
少し打ち解けた様子でそんな風に言う諸橋班長。まぁ、小金井メイズの中で3日間過ごし、最後の脱出行ではそれなりに連携して動いたから、気心が知れているのは確かだ。
そんな諸橋班長以下の自衛隊部隊だが、今回の任務では個人携行の小銃類は一切無しだという。なんでも、
「小金井での作戦中に隊員が車両内で小銃を発砲する事件が起きた。その車両は、その発砲で全滅だということで、私達も武器を取り上げられたんだ」
そんな情報はニュースやネットには出ていなかったが、恐らく外部に漏れないようにしているのだろう。それにしても……
「お互い色々と……こんな年末まで大変ですね」
色々思う所はあるが、諸橋班長に言っても仕方ない。なので、そういう事にしておいた。
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既に里奈と[受託業者]の大勢は霊園内に向けて出発している。しかし、補給輸送部隊の出発は、これから更に30分後。それまで時間があるので、情報交換をすることにした。主に昨日のモンスター集団との遭遇状況についてだ。
「こちらも伝聞になるけど――」
俺達の質問に諸橋班長はそう前置きして答えてくれた。
曰く、昨日の作戦では中央ロータリーを過ぎて霊園の東側外周道路に入った付近でモンスターの集団に鉢合わせしたという事。モンスター集団には例の
「先任の部隊長は『待ち伏せ』された気がすると言っていた。他の[受託業者]から距離が出来てしまう東側外周路の中ほどで、突然襲撃されたらしい」
という話が妙に気になった。
これまでの経験では、モンスター側が何かしらの作戦を立ててこちらに向かってくることは無かった。稀にメイズハウンドが曲がり角で待ち伏せをしたり、例のスカウトハウンドが【遠吠え】を前提とした巡回を行う程度だ。
何処か特定の、モンスター側が有利になるような地形(例えば交差路)で待ち伏せする、といった能動的な作戦は見られなかった。
ただ、モンスター側に知能の高い存在が居ることも確かだ。
(十分あるのだ!)
やっぱりそうか。
(リスポーンしたモンスターに経験や知識が受け継がれることは無いのだ。でも、存在し続けているモンスターには蓄積が生まれるのだ)
ってことは、今現在「太磨霊園」の中に居るモンスターで、一定以上の強さを持つ連中は[受託業者]との戦闘経験を積んで手強くなってるってことか。
(厄介なのだ)
そうだね……。と、厄介事に気が付いた時点で、補給輸送部隊の出発時刻になった。
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