*5話 お祭り会場なのか?
2020年12月30日
昨晩中は主にテレビとネットで情報収集をしていた。25日から28日に掛けて、4日間もメイズ内に籠っていたため世間の動きを取り戻すことに専念した、という訳だ。
それで分かった事と言えば、まず、かなりの数の犠牲者が出ているということ。小金井周辺で確認できている犠牲者は死者78人、重軽傷者182人、行方不明者219人。府中太磨霊園周辺では死者と行方不明者を合わせて400人に迫る数だという。
ただ、「スタンピード事件」が発生した当日24日に約80人、翌日の25日には約100人前後の人々が小金井公園周辺から救助されており、更に、続く27日には府中太磨霊園周辺から100人前後の人々が自衛隊の手によって救出されている。28日には小金井メイズが[受託業者]の手によって消滅させられたという政府発表もあり、国内世論は「大混乱」の一歩手前で踏みとどまっている印象だ。
一方、テレビや新聞などの報道は、トーンを押さえているが、やはり自衛隊の武器使用に対する否定的な論調が見え隠れしていた。今は視聴者の関心が「この事態がいつ終わるか?」に集中しているため、その論調を前面に出していないが、何かの契機を得れば一気に「武器使用反対」へ傾く可能性があると感じた。どうして
そんな状況下、少し不思議に感じたのは、「魔物の氾濫」又はスタンピード事件が起こるに至った理由への追求が手薄な事だ。これは里奈から聞いていた話だが、少なくとも小金井緑地公園におけるスタンピード事件は、直前まで行われていた入園禁止や五日市街道の通行止めが、連絡ミスにより解除されてしまったため被害が拡大した側面がある。
更に言うなら、そもそも突然未発見(未報告というほうが正しいか)なメイズが次々と発見された経緯からして、行政に責められるべき問題があったと思う。その方面にメスが入れられるのは、時間の問題かもしれないが、少なくとも今の時点では追求の機運は感じられない。
寧ろ、マスコミの関心は避難者救助やメイズ消滅を成し遂げた[
もしかしたら、日本政府はマスコミや国民の注目関心が自分達の失態へ向かないように、[
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年の瀬押し迫る12月30日の朝。師走の実感が全く沸かない俺達は、西国分寺駅で合流すると岡本さんが運転するレンタカーで指定の集合場所へ向かう。集合場所に指定されたのは、府中市にある運転免許センターだ。
丁度「魔物の氾濫」が発生している太磨霊園の真北に位置しており、その場所に[太磨霊園前衛拠点]が設営されている。その前衛拠点が指定の集合場所ということは、つまり、昨日岡本さんが電話してきた「お誘い」とは、
途中の車内では、岡本さんがこの仕事を受ける事になった経緯を(少し言い訳がましく)説明していた。なんでも、昨日帰宅後直ぐに[管理機構]の佐原課長から電話があり、今日の仕事の依頼があったとのこと。岡本さん的には断ろうとしたが、相手がしつこいため、
「だったら、これまで管理機構が買い取ったスキルジェムやアイテムの中から、好きな物を報酬としてくれよ」
と、吹っ掛けた。勿論「相手から断らせる」ための無茶な要求のつもりだったらしい。しかし、それで一旦切れた電話も、5分後には再び佐原課長から岡本さんに着信が入り、「その条件で構わない、但し特別な条件なので口外無用」という返事になったとのこと。
結局、相手の(予想外な)妥協に、逆に返事を持て余した岡本さんが、俺や朱音、飯田に電話を掛けて来たということだった。まぁ「依頼するほうもする方だけど、受ける方も
とまぁ、そこまでなら、一部から「金の亡者」と
俺を含めて多分全員が、花小金井駅前に出来ていたような
「テレビ局か……」
と、岡本さんが呟くように、「報道関係者」の腕章を付けた報道関係者だった。
「やだぁ、インタビューとかされたらどうしよう。ちゃんとお化粧してないのに」
「こっここ、こまりま(困ります)」
とは、朱音と飯田。飯田が困るのは、多分まともに喋れないから。一方朱音は……別に困る事も無いだろう。お化粧はちゃんとしているように見える……まぁ、見た目が良いのだし、女性の[
(コータ殿は地味だから、その点大丈夫なのだ)
(【隠形行】も必要ないニャン)
うるせぇ!
「ああ、受託業者の方はこちらへ来てください!」
とここで俺達は迷彩服の自衛官に声を掛けられ、免許センターの建物へ誘導された。そして、通常は免許試験や安全講習を行う大きな講義室に案内される。そこには、この時点で70人ほどの、同業者と思われる受託業者が待機していた。
これだけの[
「あら……ごきげんよう、皆さん」
と、妙に上品な声色で挨拶の言葉を投げ掛けてくる
「……こんな所に顔を出すなんて物好きだな……」
思わずボソっと漏れた俺の声だが、月成は聞き逃さなかった。まぁ、この場合は自分達を棚に上げての発言だから、
「お互い様ではなくって、遠藤さん?」
という事になる。それで、このやり取りが切っ掛けになって[チーム岡本]は今回、[月下PT]と殆ど共同して行動することになってしまった。口は災いの元、とはよく言ったものだ。
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