*3話 現在の実力と緊急招集要請


 ハム太の【鑑定(省)】によると、現在のチーム岡本の実力は、


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遠藤公太(26歳)

種族  人間(男性)

耐久値 181/181

魔素力 170/170

力   11 (x1.36)

敏捷  12 (x1.35)

技巧  11 (x1.37)

理力  10 (x1.34)

抵抗  14 (x1.35)

修練値 403/703

習得スキル(常時有効型)

・戦技(刀剣)Lv3

・隠形行Lv1

習得スキル(使用型)

・能力値変換Lv3


武器:太刀[幻光:Lv2]

   カタナソード[陽炎]・木太刀

防具:試作乙式3型四肢防護具

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岡本忠司(32歳)

種族  人間(男性)

耐久値 231/231

魔素力 111/111

力   12 (x1.37)

敏捷  10 (x1.32)

技巧  11 (x1.32)

理力  10 (x1.31)

抵抗  12 (x1.36)

修練値 245/695

習得スキル(常時有効型)

・戦技(最前衛)Lv3

習得スキル(使用型)

・挑発Lv2


武器:飯田式フランジメイス2号

防具:試作甲式2型四肢防具

試作甲式1型体幹装甲

催涙ポリカ盾

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嶋川朱音(23歳)

種族  人間(女性)

耐久値 158/158

魔素力 184/184

力   9 (x1.31)

敏捷  11 (x1.33)

技巧  13 (x1.37)

理力  10 (x1.34)

抵抗  10 (x1.32)

修練値 333/683

習得スキル(常時有効型)

・戦技(弓)Lv3

習得スキル(使用型)

・強化魔法:中級Lv2


武器:リカーブボウ(40lb)

防具:試作乙式3型四肢防護具

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飯田翔(25歳)

種族  人間(男性)

耐久値 158/158

魔素力 201/201

力   9  (x1.32)

敏捷  10 (x1.30)

技巧  9 (x1.31)

理力  11 (x1.38)

抵抗  8 (x1.31)

修練値 169/719

習得スキル(常時有効型)

・直感

習得スキル(使用型)

・2属性元素魔法(火・風):中級Lv1

・生成:障害物Lv1


武器:ピストルクロスボウ

   飯田式組立槍

防具:MP-LL-Pro・Plus

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 ということだそうだ。驚いた事に、全員がいつの間にか[修練値]700前後に達していた。


 前回、ハム太の【鑑定(省)】を真剣に確認したのが……え~と……、そうそう霞台の地下駐輪場メイズで[脱サラ会]と[TM研]とユニオンを組んで8層に挑戦した時の事だ。随分前の事に感じるけど、まだ2週間も経っていない。その時が[修練値]500目前だったから、短期間で200程度一気に上がったことになる。


「昨日の一連の戦闘は、深層での[修行]と同じ効果になったのだ。不等実力戦闘を潜り抜けて一気に能力アップなのだ!」


 とはハム太の言葉。強力な敵との戦闘を潜り抜けることで実力が知らない間に上がっているなんて、なんだかバトル物の少年漫画みたいだ。ただ、ハム太の【鑑定(省)】を信じるならば、[修練値]だけでなくスキルレベルや魔坑外套による補正値も着実に上昇している。チーム岡本全体としてレベルアップした、ということなのだろう。


 また、各人のスキルや装備にも特筆するべき点もある。


 まず俺は、既存のスキルレベルは変わらないが、新しく【隠形行Lv1】と言うスキルを習得した。しかし、それよりも、豪志先生から譲られた太刀[幻光]を[刃喰鞘はぐろうそう]を使って、折れた[時雨]の刀身で強化した際、太刀[幻光]にLvの表記が出現した。これは、


「同格の武器を使って強化する時、こんな変化が起こるのだ。あのミッキー殿(?)が持ってきた[陽炎]という剣の方をガンガン強化していって今の[幻光Lv2]程度まで強化してから[刃喰鞘]に食わせればLv3も夢ではないのだ」


 とのハム太鑑定士の話だ。ちなみにハム太は武器に付いたLvは4までしか見た事ないらしい。聖剣ナンタラカンタラ(?)を入手するまでの大輝の武器がLv4の剣だったとのことだ。


 その他には岡本さんが【戦技(前衛職)】と【挑発】のスキルレベルが上がり、朱音の【戦技(弓)】もレベルアップしている。そんな中でも、特筆すべきは飯田のスキルだろう。【2属性元素魔法(中級)】で火と風の属性魔法を獲得しており、それとは別に今朝になって「ままま、前に言ってたせせせ【生成:障害物】も、とととれたら取りたい」と言い出したのだ。


 その結果、飯田は【2属性元素魔法(中級)】の他に【生成:障害物】というスキルも習得している。この【生成:障害物】と言うスキルは、一定時間(レベル相応)の間、或る程度の強度(レベル相応)の障害物を文字通り生成するというもの。有効に活用すれば、開けた場所での多対少数戦闘でも数の不利を緩和することが出来そうだ。使い方については……飯田の【直感】に任せようと思う。


 ちなみに、チーム岡本という訳ではないが、里奈も[修練値]539となっていた。また、里奈についてはハム美の主導で習得した【操魔素】というスキルが特殊なものだった。というのも、


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五十嵐里奈(26歳)

種族  人間(女性)

耐久値 121/121

魔素力 111/111

力   10 (x1.23)

敏捷  12 (x1.25)

技巧  13 (x1.28)

理力  12 (x1.24)

抵抗  11 (x1.24)

修練値 39/539

習得スキル(常時有効型)

・―――

習得スキル(使用型)

・―――

特殊能力

・操魔素

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 魔坑外套による能力補正は別に変な所はないが、習得スキルの部分に見慣れないものが現れている。ハム太の見立てでは【操魔素】というスキルは使用型アクティブスキルという事だったが、実際に習得した【操魔素】スキルは使用型や常時有効型パッシブの分類ではなく、特殊能力という表示になっているとのこと。


 ハム太とハム美の2人(匹?)に頼らざるを得ないが、2人とも口を揃えて「特殊能力という事になっている・・・・・・・、こんなものは見た事ない」とのこと。この2人(匹?)が分からないなら、俺にも分かる筈がない。ということで、「特殊能力っていうのがあるんだね~」という程度の認識に留まっている。


 これが【鑑定(省)】という省エネバージョンスキルではなく、本式の【鑑定】ならばもうちょっと違うことが分かるかもしれない。ただ、その【鑑定】スキルを持っているだろう人物は現時点では詳細不明だ。30代半ばの男性ということと、愛想が悪く空気が読めない人物、ということが分かっている程度。ただ、第一印象は余り良くなかった。


 ちなみに、その【鑑定】スキル持ちの男性が「戦闘能力Lv」と表現したものは[修練値]の百の位の値だということが分かった。スキルの持ち主によって受け取る表現が異なる、ということだという。


*********************


「まぁ、強くなったってことだから、ありがたいですね」

「昨日は結構大変でしたから~」

「全くだ」


 【鑑定(省)】の結果を念話で聞き取りタブレットのノートに書き写したものを皆に見せる。それを見ながらの会話は俺、朱音、岡本さんの順。場所は相変わらず自衛隊のテントの中。結構広いが、今のところはチーム岡本の4人しかいない。


「それにしても、いつまで待たせるんだ」


 現在の時刻は9:30。既に1時間は待たされている。待つこと自体が苦痛というよりも、待つ時間にもメイズ内の子供たちが消耗していくと思うと気が気でない。ただ、それを口に出しても仕方がないので、黙るしかない。テントの中は沈黙に戻った。


 沈黙が破られたのはその後直ぐだ。外から大人数が立てる話し声や気配が伝わって来た。そして、


「おっ、いたいた。岡本さん、みなさんおはよう」

「おはよ~ございます!」


 中に入って来たのは[脱サラ会]の加賀野さんと[TM研]の春奈ちゃん。2人の後ろには各PTの面々が続いている。


「お、おはよう……もしかして[管理機構]から呼ばれた?」


 正直言って驚いたが、推論としては岡本さんの疑問と同じ。対して加賀野さんは、


「ご名答ですよ。昨日の夜中に電話が掛かってきて――」


 そう言うと春奈ちゃんの方を見る、その視線を受けて続きは春奈ちゃんが続ける。


「緊急招集要請だって、それで要請に応じれば1年間買取り価格に特典を付けるって、それに今に限っては例の一律10万円の持ち出し料がタダになったり鑑定が半額になったりするそうです!」


 え? 特典? タダ? 半額? そんなの聞いてないよ? と思う。多分チーム岡本全員が同じような表情になったのだろう。そのため、加賀野さんが追加説明のように言葉を付け足した。


「もしかして、岡本さん達は聞いてないのかな? まぁ、そんな特典付きの協力要請をランキング上位PTに片っ端から声を掛けたらしい」


 加賀野さんが言うには昨晩遅めの時間にそんな要請があったらしい。それで、要請を発した[管理機構]の職員はチーム岡本が既に協力することを(勝手に決めて)脱サラ会とTM研に伝えたようだ。3PTユニオンを組んでいる事を知っているからか、応じやすいように「水を向けた」といったところだろう。


「集合時間が10:00っていう事だったから、そろそろ集まって来るとおもうよ」


 加賀野さんはそう言うと近くのパイプ椅子に腰かける。結果、加賀野さんが言った通り、その後30分をかけて、同じ[受託業者]の面々が結構集まって来た。これだけ同業者が一堂に揃うのは初めてかもしれない。勿論、大半が面識のない人達だが、中には見覚えのある人達も居る。


 やがて、賑やかになったテントの中に厳つい迷彩服の集団が入って来る。その集団に気付いた[受託業者]達はお喋りの声を落とすと「何を言うのか?」と言った風に聴く態勢になる。


 入って来た面々は高橋陸将補を始めとした昨晩のメンバー。それに、もっと若い士官(?)を加えた8人の集団。ただ、彼等は一様に、顔色が悪い。高橋陸将補なんかは明らかに土気色で目の下には大きなクマが出来ている。多分、寝てないのだろう。たしか、48歳位だったはずだけど、その歳で徹夜ってのは辛そうだ。


「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」


 と切り出したのは高橋陸将補。その印象に俺が良く知る道場での「打たせ上手な高橋さん」の印象は微塵もない。疲れた表情を厳しい仮面のように硬くしている。そして、挨拶の後を受け持ったのは、


「陸上自衛隊、陸上総隊の中央情報隊の森岡です」


 森岡副隊長。昨日はうっかり口を滑らせてツッコミを受けていたが、今は流石に厳しい表情。そして、


「今日の作戦について説明を始める前に、これからお配りする書類にサインをお願いします。書類は作戦行動中に見聞きした情報に関する守秘と、作戦行動中の受傷に関する国家賠償請求権の放棄を皆さんにお願いするものです」


 と言う。そして、A4用紙1枚のプリントが集まった[受託業者]に配られる。


「サイン出来ない方は申し訳ありませんが、駅の北口へ移動願います。余り時間を掛けられませんので、判断をお急ぎください」


 その後10分ほど時間が要したが、結局集合した面々は全員がサインして書類を提出した。こう言っては何だが[受託業者]なんて、多少の危険は織り込み済みの職業だ。それに、集まった面々は[管理機構]が提示した特典・・目当て(中には救助という正義感に燃えた人もいるかもしれないけど)だ。サインを要求されて、それを理由に辞退するくらいなら、最初から来ない連中だろう。


「ご理解ありがとうございます。それでは作戦内容を説明します。通信障害域内に入ると作戦の再確認は難しくなりますから、皆さん、この場でしっかりと理解するようお願いします」


 その後、森岡副隊長はそんな前置きから、今日の作戦の説明を始めた。ただ、その内容は「え?」と思うようなものだった。そのため、テントの中にはどよめきが起こる。

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