*幕間話 チーム岡本の休日②
嶋川朱音の場合
言動とか挙動がオカシイ訳ではない。でも、自意識というかプライド的なモノが妙に低い。そのため、店舗で
「だって、ああやったら直ぐ帰るし、いいじゃん別に」
とは、そんなコータ先輩がクレーム対応にドン引きした私に掛けた言葉だ。情けない人だと思った半面、「いいじゃん別に」で済ませられる精神構造に妙な興味を抱いたものだ。
同期入社の女子社員達は大抵が「どこそこの部署の誰それがイケメン」とか「ウチの所は外れ部署だ」とか「誰それに飲みに誘われた」とか、そんな話で盛り上がる。それで大体の場合は「でも朱音の所が一番ハズレだね」という事になる。言いたい事は良く分かる。岡本さんはまぁカッコイイけど妻子持ちだし、飯田先輩はそもそもコミュ力が破綻していて対人スキルが壊滅的だ。そしてコータ先輩は、外見はちょっとイイ感じに見えないことも無いが、中身が
自分で言うのもアレだけど、私はモテる。日本に帰国してから高校大学通算で20回以上告白されている。それ以外にも大学時代はコンパの後のドサクサでどうこうしよう、と迫って来る男性も多かった。どうも「押せば落ちそう」だったり「色々
そんな経緯でちょっと男性関係に
その後、紆余曲折を経て[
コータ先輩が変わった事情についても何となく把握できた。情報源はコータ先輩の妹、
ちなみにこの千尋ちゃん、中々良い子だ。コータ先輩は多分私と千尋ちゃんに仕事以上の交流が出来ていることを知らないだろうけど、千尋ちゃんは会って直ぐに私の意図を見抜いた模様。出来る子でもある。その上、妙に協力的だ。
「お兄ちゃんって、女の人とお付き合いしたことないから……早く素敵な彼女を作って欲しいな」
とのこと。素晴らしい子だ。という訳で、色々情報を回してもらっているけど、やっぱり一番の障害はあの女、[管理機構]の
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「……ねちゃん、朱音ちゃん!」
「はっ、何?」
「何じゃないでしょ、ニヤニヤしたり難しい顔したり気色悪いわね」
「マスターに言われたくないです!」
ミッキーさんの声で現実に引き戻された私。実はミリタリーショッププラトーンに来店中だったりする。勿論用事があっての来店だ。
「ドローウェイト38ポンド、調整オッケーよ。あとはブロードヘッドの矢が2ダースだったわね?」
「あ、ありがとう」
「それで、例の彼氏、何処まで行ったのよ?」
「う~ん……ちょっと苦戦中?」
オーナーのミッキーさんは私のリカーブボウをケースに収めながら、興味津々といった感じで訊いてくる。その言葉に思わず答えてしまった結果、40過ぎのM字禿げ小太りお化粧おじさんとガールズトークになってしまう。まぁ、この人中身は乙女だから良いか……。
「私が思うに、あの手の
「け……経験あるの?」
「有るわよ……って、なによその目は」
「いや、犯罪かな? って」
「失礼ね! でもきっと鈍感で朱音ちゃんの想いに気が付かない、ってやつでしょ?」
妙に恋愛経験豊富なミッキーさん。発言は過激だが、多分当たってそうでコワイ。
「押したり引いたりが恋愛の妙って言うけど、それは中級者以上の場合よ。ド素人初心者は押しまくる、これが落とす鉄則ね……」
とドヤ顔で自説を披露するミッキーさんに圧倒されて「そうですね」と相槌を打つ。
「あと2週間ちょっとでクリスマスでしょ、一気にいっちゃえやっちゃえ、よ。朗報を期待してるわ!」
結局、そんな言葉と共にお店を追い出されるように後にした。まぁ、確かにクリスマスに誘えば、流石のコータ先輩もそれなりに勘付くかもしれない。……よし、そうしよう。しかし、気付かれた途端に避けられるという恐れもある……自然に誘わないとだめだな。う~ん、こりゃちょっと面倒な……千尋ちゃんヘルプを頼むか……。
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