*11話 合同パーティーでゴー! ⑦ 5層の結末と買取り制度変更
コボルトチーフとメイズハウンドのラッシュ(総勢25匹だった!)を退けた後、合同PTは5層を奥へ進んだ。移動開始前には、岡本さんや[脱サラ会]の加賀野さん辺りから、
「コータ、説明不足過ぎるぞ」
「遠藤君……見かけによらず大胆なんだね」
と呆れたような、小言のような、注意のような、微妙なニュアンスの言葉を掛けられた。岡本さんの方は、明らかに小言であって注意だった。これは、状況が状況だけに仕方ないと思って欲しいけど……後でしっかりゴメンナサイしておこう。一方、加賀野さん達[脱サラ会]の方は、呆れたような引き攣った笑いで、自分で言うのもなんだが、明らかに
そんな一幕を挟んで奥へ移動を開始した結果、アトハ吉祥メイズは5層で終わりでは無い、ということが分かった。ハム太の予想通りの結果だったが、心の何処かで「これで終わりだったらどうしよう、アトハ吉祥メイズまで潰したら機構からクビになる」と心配していたから、少しホッとした。
「岡本さん、どうします?」
「私らはどっちでもいいですよ」
「まぁ、6層以降は次回にしましょう」
6層へ降りる階段を前にした3PTのリーダー同士の会話。結局、この日はこれ以上進まないということに決まった。時間も15:30だし戻るには丁度いい。ドロップもそれなりに良かったから、順当な結論だと思う。
それなりに良かったドロップの内容は、メイズストーン8個、メイズハウンドの皮3枚、回復薬:中2個、強化薬:中1個、疾病耐性薬:小3個、スライム粘液2袋、スキルジェム3個というもの。武装ゴブリン9匹、メイズハウンド25匹、コボルトチーフ1匹、それにやっぱり居た大型スライム4匹を斃した結果だ。3PTで分け合うことになるが、十分労力に見合ったドロップだと思う。
因みに空気を読んだのか3個ドロップしたスキルジェムの内容はハム太の【鑑定(省)】によると、【戦技】が2つに【防御姿勢】が1つとのこと。チーム岡本の戦力アップという意味ではどれを取っても問題無いが、強いて挙げるなら朱音か飯田向けに【戦技】スキルを取りたいところ。ただ、どうしても、という訳ではない。そのため、くじ引き担当の俺はプレッシャーを感じる事無くくじを引く。結果、【戦技】スキルのスキルジェムを手に入れることになった。
(吾輩としては朱音嬢に【戦技】を取ってもらうのが良いと思うのだ)
というハム太。ちなみに朱音の修練値は今日の5層クリアの結果、習得に必要な50にギリギリ達している。後で全員と相談する必要があるが、まぁハム太が言うならそうなんだろう。ということで、合同PTは5層を後にし、出口を目指した。
全体的に全員の雰囲気が明るいのは、高額ドロップのスキルジェムやスライム粘液が出たからだろう。ちなみにTM研はスキルジェムのドロップを初めて自分達で取得したとの事で、結構喜んでいた。よかったよかった。
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認証ゲートを抜けた先にある買取りカウンターでトラブル(?)とまでは言わないが、ちょっとした問答があった。一括買取り制度の変更初日という事もあり、実際どんな変更になるのかしっかりと確認していなかったことが原因だ。ざっくりと「素材系ドロップ以外は[受託業者]の裁量に任せられる」と認識していたが、この認識は間違っていなかったが不十分だった。というのも、
「持ち出し品1点あたり持ち出し料10万円となります。[管理機構]に
との事だった。ここで金を取りに来るとは予想外だった。既に訳の分からない[メイズ特別税]一律税率20%を支払っているのに、まだ取るのか、と思う。また、[管理機構]が鑑定業務を開始するという話は田中社長から事前に聞いていたが、それにしても50万円っていう価格設定は……どうなんだろう?
(吾輩の【鑑定(省)】が商売になるのだ……ムフ、ムフフフ、これでコータ殿のクレジットカードが使えなくても……ムッフ、ムフフ)
腹黒い思考を垂れ流しているハム太、聖騎士の称号が泣くぞ……。とは言うものの、確かに商売になりそうな気配がする。ちょっと考えてみよう。
と、俺がそんな事を考えている内にも、各PTは渋々ならが言われた金額を支払う事を承知したようだ。ここでゴネても何も変わらない。買取りカウンターの係の人には何の権限も無いのだし、文句を言ったり
「じゃぁ、持ち出し料だけ払います」
結局、チーム岡本はそういうことにした。鑑定の必要は無いからだ。もしかしたら、[管理機構]が行う鑑定業務がその後のアフターマーケットでの
因みに田中社長の話をしたとき、岡本さんが「昔お世話になった人だ」と驚いていたのが、俺にとっても驚きだった。世の中って狭いね、という話。詳しくは訊かなかったけど、岡本さんがバリバリのヤンキーだった頃にお世話になったらしい。そんな田中社長が「良い値で買い取る」と話を持ち掛けた事に、結局俺以上に岡本さんが乗り気になった。
一方、他のPTはちょっと悩んでいる様子。スキルジェムを鑑定に出すのは決定事項のようだが、ポーション類をどうするか? といった点で結論が出ないようだ。確かにポーション類全部を鑑定に回すと、今日の収入は一転して赤字になる。それにポーションは鑑定しなくても、容器の形状や中身の色で何となく効果の傾向を知る事はできる。ただ、あくまでも
そこで、
「無鑑定のポーション類やアイテム類を買取るってところを紹介しますよ」
と話を振ってみたところ、「紹介してほしい」という事になった。これで田中社長への義理も果たした気分になる。よかったよかった。
ということで今日の収支は、5層ドロップを分け合って、それに3,4層の独自ドロップを加えるとこんな感じになる。
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[メイズストーン]7.8kg 546,000円
[スライム粘液]0.66kg 1,320,000円
[メイズハウンドの皮]2枚 100,000円
[ポーション]回復薬:中
〔ポーション]回復薬:中
〔ポーション]疾病耐性:小
スキルジェム戦技
持ち出し料 4点 -400,000円
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合計 1,466,000円
メ特税(源泉徴収20%)-293,200円
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税引後合計 1,172,800円
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持ち出し料の部分は微妙な感じがした。こういう事なら、メイズ内で朱音に使ってもらえば良かったと思うが仕方ない。次回以降は気を付けよう。
その一方でメイズストーンの買取り単価が1g40円から70円に、スライム粘液が1kg150万円から200万円に、メイズハウンドの皮が1枚3万円から5万円に引き上げられている。また、袋状になって分けられないスライム粘液は「PT間での共同取得処理」というのが出来るようになっており、端数切捨てだったものの、平等に分配することが出来た。
(海外のオークションサイトとほぼ同等の単価なのだ)
引き上げられた単価に対しては、海外情報通なハム太がそんな評価をした。これなら、全体的に制度は改善された、と言っても悪くない結果だ。後は「ポーションに幾らの値段が付くか」ということになるが、これは明日岡本さんと俺で下北沢の田中興業を訪ねて直接確認しよう、という事になった。
この後、合同PTは解散し、チーム岡本は恒例の反省会を行う。反省会は吉祥駅周辺の例の個室居酒屋。そこでの会話は主に5層での俺の行動が話題となった。ただし「
普段は何かとフォローしてくれる朱音さえも、
「あんな風に言われても、すぐに理解できません!」
と非難ごうごう。結局、俺と(首謀者)のハム太は、懇々と3人から説教されることになった。その間「悪いのはハム太なんだ! 俺は
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