第2話


「あ、神社」

 新しい道を歩くのが好き。いつもの街なのに、新鮮な発見があるから。


 今日も路地を伝って、学校までの道を行く。玄関先にかわいい置物があったり、猫がのんびり寝ていたり。ちちち、と舌を鳴らして猫の気を引いていると、あの、何か御用ですか? と目いっぱい不審げな顔をされることもあるけれど…。


 小さな祠や神社、お寺に行き当たることもしばしばだ。

 個人の家に祭られているのはまずいけれど、そうじゃないものは、見かけたら必ずお祈りすることにしている。この国の神様はとても寛大で、何ヵ所でお祈りしてもOKらしいから。


        ***


 この国に来てまず驚いたのが、コンビニの多さだった(数メートル歩くとまた同じチェーン店がある。よく潰れないなあと思う。本当に不思議)。だけど、それよりも神社のほうが俄然多いんだそうだ。みんな、信心深いのかな。そう思って、ある日、クラスメイトのみんなに聞いてみた。

「どの宗教の人が多いのかな? 皆さんは?」

 そしたら、口々に、別に、特にこれといってない、信じてない、と言われて、またびっくりした。それなのに、コンビニよりたくさん、お祈りの対象があるの?

 じゃあ、お祈りとかしないの? と聞くと、たまにする、気が向いたときに、あとお正月? って。気が向いたときに。信じられない、だって、相手は神様だよ?


「まあ、宗教のクロスオーバー、半端ないからね」

「そうそう。生まれたときや成長を祝うときは神社にお参り、結婚式は教会で、で、死んだらお寺でお葬式(笑)」

「お正月に神社やお寺に行って、ハロウィンで騒いでクリスマスを祝って(笑)」

「うーん…」

 自分も、正直そう信心深いほうじゃない。だけど、世界のかなりの人は、唯一神を信仰していると思う。そういう人たちに、この状況はどう映るかな? そもそも―。

「神様同士、喧嘩しないですかな?」

 これが一番気になった。

「さあ? しないんじゃない?」

「昔から、“八百万やおよろずの神”を信仰してきたからね」

「外国から来た新しい宗教の神様ですら、たくさんの神様のワンオブゼムにしちゃう大雑把さ、いや、おおらかさ?(笑)」

 いつも御守りをたくさん付けているみやこさんに訊いてみたら、この国の神様は、みんな心が広い、だから喧嘩なんてしないって言っていた。喧嘩しないで、お互いに助け合ってその人を守るからたくさん御守りがあってもいい、むしろ、たくさんあるほうがいいと私は思う、だって。ほんと、寛容な神様たちだね。


 じゃあ、そのたくさんの神様のうちの1人(じゃなかった、1はしらだね、みやこさんが教えてくれた)くらい、僕の願いを叶えてくれる神様がいるかも? そんなことを期待して、僕はお祈りを始めたんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る