第46話 ホワイトデー
三月十一日。
つまりホワイトデーだ。
バレンタインデーというお菓子業界の戦略の第二弾のイベントだ。
きっとそうだ。
バレンタインデーの時は、義理チョコを二個もらった。
まあ義理チョコとはいえ、くれたからお返しの一つでもしておこうか。
そう思った俺は、ホワイトデー用に売ってるクッキーを二個購入した。
大谷さんと山口さんに渡そう。
サークルに行くと大谷さんがいたので早速話しかけた。
「大谷さん。今日ホワイトデーなんで、これお返しです」
「ありがとう」
後は山口さんに渡さないとな。
柔軟体操と発声練習をしていると、山口さんが遅れてサークルにきた。
「山口さん。今日ホワイトデーなんで、これお返しです」
「へぇ、何くれるの?」
「クッキーです」
「お酒じゃないのね」
ホワイトデーのお返しにお酒なんて聞いたことないぞ。
ってかあんたにお酒はダメだろう。
いつも加減知らずに飲みまくるじゃないか。
「山口さんは加減知らずに飲むから」
「そこにお酒があったら飲むしかないじゃない」
「いや、程々にしてくださいよ」
「大丈夫よ。大谷ちゃんが介抱してくれるもの」
そんな会話をして練習を終えてからスーパーで食材を買ってから帰ってきた。
「ただいま」
【おかえり。今日はホワイトデーね。ちゃんとお返し渡したかしら?】
「渡したよ。山口さんにはお酒がいいって言われたよ」
【相手の好みが分かってるなら、それをあげるのも気持ちの伝え方の方法のひとつよ】
「いや、お酒あげるのはまずいでしょ。あの人、その場ですぐに開けて飲みそうだし」
【本当に人間ってのは、お酒で酔うなんて変わってるわね】
「精霊は、お酒飲んだらどうなるんだ?」
【何も変わらないわ】
「どういうことだよ」
【だからアルコールが入ったところで、気持ちが高まったりとかそういうのが全然ないのよ。酔うって感覚が分からないわ】
「飲んだら男らしい口調になったりとかしたら面白かったのにな」
【あら、期待に添えられなくてごめんなさいね】
「ほんと残念だよ。さーて、飯でも作るかな」
【今日は何作るのかしら?】
「かぼちゃのとろみネギ塩炒めかな」
【ほんとレパートリーが増えてきたわね。人って変わるものね】
「うるせぇ」
【あら、褒めてるのよ。もうお惣菜も買わなくなったし、ちゃんとできるようになったんだなって改めて関心したのよ】
「へいへい、そりゃどうも」
【そうそう。あたしもあんたにホワイトデーのプレゼントあげるわ】
「えっ?」
【これよ】
突然、机の上が光り始めた。
「うわあああ、な、なんだ!?」
そして光が収まると、花束が現れた。
「花……?」
【そうよ、花よ。ドライフラワーだから世話しなくてもいいわ】
「へえ」
【この花はね、気持ちをリラックスさせる効果があるのよ】
「急なプレゼントだな。どういう風の吹き回しだよ」
【あら、ただの気まぐれよ。ありがたく受け取りなさい】
「まあもらっておくよ。部屋に花のひとつくらいあってもいいわな」
その日、なんだかいつもよりリラックスして快眠できた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます